2019.01.18
3歳といえば、そろそろ「数」に興味を持ち始める年齢です。エレベーターの○階の表示や車のナンバープレート、カレンダーの日付など、身の周りのあらゆる「数」に関心を持つようになります。子どもの興味を損なわず、遊びながら定着するコツをご紹介します。
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3歳児は数に興味と持ち始めるお年頃
「うちの子はこのごろ数字に興味が出てきたようなのですが、どんなふうに教えたらいいのでしょうか?それとも、特に教える必要はないものでしょうか?」
3歳頃の子どもをもつ保護者から、時々こんな質問をいただきます。
私の勤務している「原宿子供の家」では、子どもの関心に合わせてちょうど良い頃合いに数の活動を取り入れていますので、特に家庭で教えなくても大丈夫です、とお答えしています。
家庭ではいきなり数字を「教えよう」とするよりは、子どもの自然な興味に従って一緒に数に親しむ方がいいと思います。
そこで、1.家庭で親子で楽しく数に親しむ方法と2.数と量の一致についてご紹介します。
1.数に親しむ(数の活動の下準備)
子どもが数に興味を持ち始めたからといって、最初から体系立てて教えようとする必要はありません。3歳児ならば、まずは「1から10まで」の数字と順序に慣れることから始めてみましょう。
1の次は2で、2の次は3。これは大人にとってごくあたりまえのことですが、「全てが初めて」の子どもにとっては全くあたりまえのことではありません。
子どもが順序を正しく覚えるには反復が必要ですので、日々の生活の中でたくさん聞いて、自分で繰り返し声に出して言うということうまく遊びに取り入れてしまえばいいのです。
ごく初めのうちは1から5までで十分です。歌の歌詞のように、リズムにのって口ずさむように、声に出して繰り返すうちに数字の順序に慣れて行きます。楽しく繰り返すためには、例えばこんな遊びはどうでしょうか。
お風呂に浸かりながら数える
お風呂の定番「○○まで数えてからあがろうね」です。初めはゆっくり1から3まで、もしくは5まで数えるのを繰り返すといいでしょう。
慣れてきたら少しずつ数を増やしていきますが、11以降は少し難しくなるので、しばらくは10までにしておきましょう。
階段をのぼりながら数える
公園を散歩するときに階段があれば、段を数えながらのぼってみましょう。
初めのうちは「1、2」「1、2」「1、2」と繰り返すだけでも体操の掛け声のようで楽しいものです。だんだん慣れてきたら数を増やしていきましょう。
段の数が10以下であれば「○○段だったね」と子どもと確認してもいいですし、10段以上の長い階段ならば、10以降はまた1から始めてもかまいません。「10がたくさんあったね」と声をかけあってもいいと思います。
おやつの数をかぞえる
おやつを食べるときにビスケットの数を数えてみるのもいいアイディアです。「ビスケットが1、2、3枚」と子どもと一緒に数えてみるといいでしょう。
大人が気を付けたいこと
否定や訂正はしないで
なんでも数えることを遊びにしてしまいましょう。「数字の1はなぁーに?」で始まる「数字の歌」を歌うのもいいと思います。
数字を歌のように口に出すことで自然と耳慣れて覚えていくものなので、たとえ子どもが数字の順番を間違ったとしても直接的に否定や訂正をしないでおきましょう。
間違えを指摘する代わりに、もう一度1から正しい順で数えてみるのが良い方法です。
数への興味を伸ばすコツはとにかく「お勉強にしないこと」です。子どもが数字に興味を持ったとみるや否や「算数」を教え込もうとするのは逆効果なのであまりおすすめしません。
序数詞は正しく使って
それから、大人が気をつけたいことがもう一つ。
細かな点ではありますが、序数詞(~段、~枚、~本など)をなるべく正しく使うことをに心がけておきましょう。
2.数字と量を一致させる
1から10まで(もしくは1から5まででも構いません)の数字と順序によく慣れたら、次のステップに進みます。
次は「数字と量と一致させる」段階です。これまでの活動で子どもは1の次は2、2の次は3という決まりごとを覚えましたが、今のところ数字を単なる記号として記憶しただけにすぎません。
数字を実際の数として理解するには、それぞれが示している「量」と結びつけて理解する必要があります。それでは1とはどのくらいの量で、2とはどのくらいの量なのでしょうか?
モンテッソーリの活動では、数を紹介する際におはじきや棒などの「実物」を使います。
数とは手に触れて確かめることのできない抽象的な概念ですが、子どもが抽象的なものを聞いてそのまま理解するのはとても難しいので、実物の助けを借りるのです。
たとえばを「1」を紹介するには、おはじきをひとつ、「2」はおはじきをふたつ、「3」はおはじきをみっつ…。というふうに「数字」と「量」とを一致させることによって、本来は目に見えない「数」を子ども自身で体験することができるのです。
家庭で用意するならば、手っ取り早いところでおはじき、オセロの駒、碁石などがいいと思います。
子どもがつかみやすい素材で、扱いやすい大きさのものが適しています。1~5までの活動ならば同じものを15個、1~10までなら55個必要です。それから、1~10までの数字を書いたカードを用意します。
おうちでできる!「数字と量」の遊び方
準備するもの(1~10までの活動の場合)
- 1~10までの数字を書いたカード
- おはじき55個
遊び方
- 数字のカードを並べる
- 数字の下に同じ量のおはじきを並べる
最初はあまり欲張らずに1~5だけやってみましょう。1~5のカードとおはじきを15個用意します。
1~5のカードを机の上にランダムに置き、子どもに順番に並べてもらいます。
数を言いながら、横1列に並べるように誘導しましょう。なるべく大人が正解を言わずに子どもに活動させるようにします。
カードの数字を読み、その下に同じ量のおはじきを並べて行きます。
カードを指先して「1」と読んだら、おはじきを一つとってその下に置きます。おはじきを指差して「1」と数えます。
次のカード「2」を読みます。カードの下におはじきをふたつ置きます。おはじきを置きながら「1」、もう一つ置きながら「2」と数えます。
二つ置いたら、もう一度おはじきを「1」「2」と数えます。最後にカードの数字を指して「2」と確認します。
次のカード「3」を読みます。カードの下におはじきを三つ置きます。おはじきを置きながら「1」、もう一つ置きながら「2」と数えます。
三つめを置きながら「3」と数えます。三つ置いたら、もう一度おはじきを指しながら「1」、「2」、「3」と数えます。
最後にもう一度カードの数字を指差して「3」と確認します。
これを5まで繰り返します。
正しい量のおはじきを並べると15個のおはじきが全てなくなります。
おはじきがちょうどなくなったことで正しく置けたことを子ども自身で判断できますので、「なくなったということは、正しく置けたということだね。できたね!」と声をかけるのもいいと思います。
何度か繰り返して慣れてきたら、カードだけを集めてバラバラにして子どもに正しく置いてもらう活動もできます。
「1のカードはどこに置いたらいいかな?」と子どもに誘いかけて置いてもらいましょう。他のカードも同様です。とても単純な遊びですが子どもは何度でも繰り返して楽しみます。
単におはじきを「いーち、にい」と数えていくだけでも楽しいですよ。ぜひお試しください。
モンテッソーリ教具「数と玉」
今回の遊びの基になっているのは、モンテッソーリの数の教具「数と玉」です。
活動の仕方は前述の内容通りですが、実際の教具では「数字のカード」と「玉」の他にカードの数字と同じ立体も用意されています。
立体はカードの数字の上に載せて使いますが、これをすることで子どもがぼんやりと知っている数字の形に注目するようになります。立体を裏返しに載せると正しい数字にならない、ということによって数字の形を意識するようになるのです。
「原宿子供の家」ではある程度数字に関心を持っている子どもを誘ってこの活動をしますので、子どもはすでに1、2、3ぐらいは聞いたことがあったり、あるいはもっと知っている場合もあります。
「これやってみようか?」と声をかけると「うん、やりたい!」と目をキラキラさせてやってきます。
この活動を行うと今まで「なんとなく」知っていた順序や量との関係がすっかり整理されていきますから、子ども達も気持ちいいのでしょうか。
大人からすれば、単純すぎるように見える活動を何度も何度も繰り返します。自分の中に数の秩序を形作って行くのに熱中している姿は、まさに「数の敏感期」なのだなあと感心してしまいます。
ぜひ家庭で子どものさまざまな行動に注目して、敏感期を大事にしてあげてくださいね。
※子どもの「敏感期」については、拙著「子供の才能を伸ばす最高の方法モンテッソーリ・メソッド」でも詳しくご紹介していますので、参考になさってください
この記事を書いたライター
ライター一覧- 堀田はるなさん
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モンテッソーリ原宿子供の家・モンテッソーリすみれが丘子供の家教員、保育士。アパレル業界、eコマース、金融など様々な業種でのマーケティング業務を経験後、教育の道へ転身。日本モンテッソーリ協会承認モンテッソーリ教員免許取得。著作「子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド」。