難しいテーマをわかりやすく学べるのが漫画のいいところ。耳が聞こえない少女、自閉症の子、「IS(インターセクシュアル)」という医学的に性別が判別できない子が登場する漫画を紹介します。様々な存在を知り、子どもへの親の思いも同じと知ることが大切!

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「耳が聞こえない」子へのいじめと、新たな関係づくり

「聲の形」大今良時(講談社・全7巻)

退屈が嫌いな小学6年生の男子、石田将也のクラスに転入してきた西宮硝子。耳が聞こえない硝子を、珍しい「遊び相手」としてからかう将也の悪乗りは、いつしかクラス全体のいじめとなり、ついに硝子は転校することになってしまいます。

硝子の転校後、いじめのターゲットは将也に。友達にも裏切られ、孤立した将也は心を閉ざします。硝子をいじめたことを後悔し続けて、高校3年生になった将也は、手話を覚えて硝子に会いに行きます。

硝子との和解や、当時のクラスメイトとの関係の変化が丁寧に描かれています。差別だけではなく、「友達って?」「親子って?」などについても、改めて考えさせられます。

耳が聞こえる、聞こえないに関わらず、相手の「こえ」が聞こえるように、お互いが努力すること。人間関係にとって、大切なことを教えてくれる漫画です。

全7巻と読みやすい長さなのもポイント。アニメ映画も素晴らしい作品ですので、興味のある人は観てみてください。

昔いじめたことを謝る将也に、硝子の母親の厳しいひとこと

あなたがどれだけあがこうと、幸せだったはずの硝子の小学生時代は戻ってこないから

こんなママにおすすめ

  • いじめ問題に関心がある、または子どもが巻き込まれないか心配だ
  • 人間関係について、子どもにどう教えていけばいいか悩む
  • 東京パラリンピックを前に、手話やボランティアに興味がある

「うちの子はこれでいい」自閉症児を育てる母の強さ

「光とともに…~自閉症児を抱えて~」戸部けいこ(秋田書店・全15巻)

憧れの雅人と結婚して、幸せいっぱいの東幸子。ところが、息子の光は「自閉症」だと診断されて…。

自閉症が「脳機能に生まれつき問題のある発達障がいである」ことが、まだまだ認識されていなかった2000年頃の作品で、「親の育て方や接し方のせい」という周囲の誤解に幸子は苦しみます。

保育園や小学校の健常児の母親たちや、地域の住民の心ない言動に悩みながらも、自閉症について理解してもらおうと奮闘する幸子。光とともに少しずつ成長していく幸子を、思わず応援したくなります。

最初は、仕事ばかりで非協力的だった夫や無理解で厳しかった義母が、次第に理解し協力していく様子には、ある種の爽快感を覚えます。

現在は、発達障がいなどはかなり知られてきていますが、私自身、自閉症のことをよく知らなかったため、この漫画を読んで良かった、と心から思いました。

光を保育園に通わせるようになった幸子が、他の母親を見て悟ること

自分だけつらいと思うのはよそう、形は違っても「大変」は人の数だけあるんだもの

こんなママにおすすめ

  • 子どもの成長について、つい人と比べてしまう
  • 自閉症について、詳しく知りたい
  • 学校や保育園など、子どもに関わる職業に就いている

「男」でも「女」でもない性別を持つ子の悩みと希望

「IS 男でも女でもない性」六花チヨ(講談社・全17巻)

「IS(インターセクシュアル)」という言葉を知っていますか?医学的に男女の判別がつかない性、つまり男でも女でもない、と言われる性のことです。

確率的には、2000人に1人でありながらあまり知られていないのは、親が子どもを偏見から守るために、生後すぐに性別を決めて幼児期に手術を済ませ、成長ホルモンで調節して必死で隠すからとのことです。

1巻はそんな「IS」の人が主人公のショートストーリーで、2巻からは「IS」として生まれてきた星野春が主人公の物語です。春を「IS」のまま育てようと決意したタロウ・陽子夫妻、そして春の双子の妹である夏と秋、弟の冬の6人家族が、みんなで困難を乗り越えながら、強く楽しく暮らす様子が描かれます。

時が経つにつれて、自分の性別や心と体の不調について悩む春は、同級生に恋心を抱いたり、同じ「IS」の仲間を見つけたり、パティシエの夢を叶えたり、とたくましく成長していきます。

子どもに「生まれてきてくれてうれしかった」「あなたがいるだけで幸せ」「みんなあなたが大好き」「傷つけられたら帰ってきていい」と伝え続けることがどれほど大切なのか、気づかされる作品です。

春が母の陽子に伝える、自分の子どもにも言われたいひとこと

俺…自分の体をずっと認められなくて、でも母さんが胸張っててくれたから、つらいことがあったとき、それでも折れずにいられたんだと思う。

すべてを受け入れてくれたから笑っていられたし、だから友達もできたんだ。

隠さずにいてくれたから、好きな相手に正直に自分のこと言えたんだと思う。

だからありがとう。自分のことなかなかすばらしいとは思えない…。でも大切にしようって思えるようになった

こんなママにおすすめ

  • 家族がテーマの漫画で泣いたり笑ったりしたい
  • この先、成長して悩みを抱える子どもにどう接していいか、不安だ
  • ISのことを知っていた、または興味がある

この記事を書いたライター

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ふみきさん

福岡出身、大阪在住のまあまあフリーなライターです。夫と娘2人の4人暮らし。趣味は本屋巡り&図書館通い。忙しいママにおすすめの本や漫画をご紹介します♪

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