2019.08.09
夏休みは海や山へレジャーに行く人も多いのではないでしょうか。子どもは自然なものと交流する特別な才能を持っていますが、大人は意外と忘れてしまっていることも多いもの。今回は子どもと一緒に自然を楽しむポイントを考えてみます。
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子どもに備わっている特別な感性
夏は家族で海や山のレジャーを楽しんだ人、これから楽しむ予定のある人も多いのではないでしょうか。普段の生活を離れて、自然の中で過ごすことは心と体にとても良いことですね。そんなとき、自然の中でどのような遊びをしていますか?
フリスビーやバドミントンなどを親子でしますか?あえて、本を持って行って親子でじっくり読書という人もいらっしゃるかもしれません。一方で、いざ自然の中でどう遊んだらいいのかわからなくなっているという人も多いのではないでしょうか。
子どもは生まれながらに“自然界を探検するための素晴らしい能力”が備わっている、とモンテッソーリは言っています。
雨が降れば、子どもたちは外へ走り出し、水たまりを見れば靴を脱ぎ、草原の草が霜で覆われていれば裸足で走り、その上を踏みまわるし、木陰が眠るように彼らを誘うなら、平和に横たわります。
1日を眠りと目覚めとに分けて暮らす他の生き物が皆そうするように、朝の日の出が子どもを起こす時、彼らは叫び笑うでしょう。
出典:マリア・モンテッソーリ著、「子どもの発見」
このように、子どもは本来自然に惹(ひ)きつけられる感性を持っています。
また、モンテッソーリは子どもに備わっている数々の敏感期の中に(敏感期という言葉を初めて聞いた、という人は私の過去の記事をご覧になってください)、「小さなものに対する敏感期」というものがあることを発見しました。
小さなものに対する敏感期とは、多くは2歳ごろの子どもが環境の中の小さな物体に不思議に惹きつけられるという特徴です。時にはその対象が小さすぎて大人の目には入らないようなものであったりもします。
今しがたまで絵本に夢中になっていた子どもが急に床を見つめているかと思えば、そこにごく小さな虫がはっていたという経験は誰しもあるでしょう。絵本に集中しているときでさえも、子どもの視界には小さな虫の往来がきちんと写っているのです。

自然を楽しむことに関しては、大人よりもむしろ子どもの方が得意ということですよね。それならば、楽しみ方を子どもに教えてもらうくらいの気持ちで徹底的に子どもの視点を意識してみてはいかがでしょうか。
不思議さを発見する、おもしろいものを探してみる
こちらから積極的に関わろうとさえすれば、自然の中にはたくさんの不思議を発見する楽しみがあります。しかし反対を言えば、自然は楽しみ方を教えてくれるわけではありません。
自然は遊園地や映画館のような、エンターテインメントの世界とは違った場所です。エンターテインメントの場合は黙っていてもおもしろさが向こうからやってくるものですから、それをどう受け取るかが子どもの仕事になります。
子どもにとってはどちらの方法も楽しいものですが、なるべくならエンターテインメントばかりに偏らず、自主的な遊びをたくさん取り入れて欲しいと思います。
楽しみ方、遊び方を自分で見つけることは子どもの自主性を伸ばします。自らの体を動かして、自然の中に不思議さやおもしろさを発見して心を動かされる体験をすると、その対象についてもっとよく知りたいという気持ちが芽生えます。
自分の中で芽生えた興味に従えば、子どもは飽きることなく観察したり、調べたりするでしょう。そうして獲得した知識は後になっても忘れずに残ります。
与えられた環境から何かを見つけ出す、事象を面白がるというのは才能のように思われるかもしれませんが、常に五感を使って感じる習慣があれば誰でもできることです。
子どもが10人いれば、10人それぞれの感じ方があります。画一的な楽しみではなく、子どもの発想で可能性は無限大に広がります。
しかし、遊び方がエンターテインメントに偏っている場合には、何もない自然の中で遊ぶために少しのきっかけが必要な場合もあります。いくつかヒントを紹介しておきます。
親子で自然を楽しむヒント
- 子どものペースに合わせてゆっくりと歩く
- 子どもの目の高さに何があるか体験する
- 感覚器官をフルに使う
- 音を聴く、耳を澄ます 風、雨、虫の声、遠くで鳴っている音
- 見る 花、タネ、実、小さな虫
- 探す さまざまな形、色の葉を探す どんぐりを拾う セミの抜け殻を見つける
- 嗅ぐ ローズマリーなどのハーブ類、キンモクセイの香り、雨の香り
- 触る 水、土、草花、樹木
- 感じたことを子どもと伝え合う
「なんだろうね」「不思議だね」「ツルツルしているね」「あったかいね」「いい匂いだね」
無理に子どもの疑問に答えようとする必要はありません。ゆったりと時間を使って自然を感じてみましょう。

大人にとっては苦手なものでも…。
大人の反応は子どもに大きな影響を与えます。大人の不用意な言動や、良かれと思って発する言葉がまだ何も知らない子どもの視野を狭めてしまうことがあります。
子どもが自分の判断で物事に触れ合えるようにするには、大人が苦手と思っていることでも少し黙っている努力が必要です。
例えば水たまりに飛び込んで新しい服を汚して欲しくないとか、草むらを飛び回ってけがをして欲しくないとか、そういった類のことです。
大人が「泥は汚いからすぐ手を洗いましょう」と言えば、子どもは泥を汚いもの、触ってはいけないものととらえてしまいます。極端に虫を嫌って子どもに「触っちゃダメ!」と言えば、子どもは虫を怖いもの、あるいは危険なものととらえるかもしれません。
大人にも苦手なものがあって当然ですから、虫嫌いは仕方ありません。しかし、本当に危険でない限りは子どもにはそのまま伝えないように努力をしてみましょう。
センス・オブ・ワンダー
誰に教えられたわけでもないのに、子どもは美しいものや未知なもの、神秘的なものに目を瞠る感性を持っています。飽きることなく虫を眺めたり、風の音を聞いたり、土や砂の感触を確かめたり。まるで自然と対話をしているようです。
1960年代に環境問題を告発したアメリカ人科学者のレイチェル・カーソンは子どものこの能力を「センス・オブ・ワンダー」と名付けました。
彼女によれば、子どもが美しいものを美しいと感じる感覚、新しいものや未知なものに触れたときの感激、思いやり、憐れみなどの感情が一度でも呼び起こされる経験をすると、それをもっと知りたいと思うようになります。そのようにして見つけた知識というのは忘れずにしっかりと身に付くものです。
大人がすべきことは子どもに様々な知識を教え込むことよりも、子どもが自分から知りたがるような道を示してあげることなのです。
美しいものに出合ったら、子どもと一緒にじっくりと感じることから始めてみましょう。
子どものときのみずみずしい感性を思い出させてくれる、とても美しい本です。ぜひ、この本を読んでから公園へ出かけてみてください。今までとは違った発見ができると思いますよ!
この記事を書いたライター
ライター一覧- 堀田はるなさん
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モンテッソーリ原宿子供の家・モンテッソーリすみれが丘子供の家教員、保育士。アパレル業界、eコマース、金融など様々な業種でのマーケティング業務を経験後、教育の道へ転身。日本モンテッソーリ協会承認モンテッソーリ教員免許取得。著作「子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド」。