2019.09.13
2020年から大学入試や学習指導要領が変わり、これからは単に知識をつけるだけではなく、創造につなげることができる力を育む「主体的で深い学び」が求められていきます。変わる学習環境、親世代はどう考え方をシフトして行ったらいいでしょうか。
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時代の変化に伴い、変わる教育環境
“「創る」から学ぶ”をテーマに、未来の教育を考えるイベント「Learn X Creation 2019 (ラーン・バイ・クリエイション2019)」が8月3~4日に行われました。
2020年から大学入試や学習指導要領が変わり、これからは単に知識をつけるだけではなく、創造につなげることができる力を育む「主体的で深い学び」が求められていきます。
イベントは子どもたち一人一人の可能性を引き出す教育とはどんなものなのか、家庭や教育現場で踏み出せることは何なのかを講演やワークショップを通じて共に考える場となりました。
私は「好きを探せる力」と題した2日目のシンポジウムに登壇し、子どもの学びを支える大人の関わり方について話しました。「どう変化に対応すべきか」「どう子どもと向き合うべきなのか」という不安を持っている人が多いことに気がつきました。
変わりつつある教育環境を知り、わが家なりのブレない軸を持つにはどうしたらいいのでしょうか。
「主体的で深い学び」ってどういうこと?学び方はどう変わる?
ライフスタイルや働き方が変化してきています。人生100年時代とか、AI時代とか言われていますが、いい大学に入っていい就職ができれば、あとはエスカレーター式に給与が伸びて、マイホームを建てて…。という従来型の人生モデルがもう存在しないということは誰もが知っています。
教育のあり方も時代に合わせて見直す時期にきています。これからは、それぞれ個人が変化に柔軟に対応する力をつける必要があります。
私たち親世代が受けた教育をそのまま子どもたちに当てはめることに無理が生じてきているのですから、まずは親の考え方をシフトしていく必要があると思います。学習スタイルの変化を私なりにまとめてみました。
親世代の学び方
「学ぶ=机に向かって勉強する」スタイル。みんなで同じことを同じように学ぶ。学歴は良い学校や就職先へのパスポートのようなもので、努力して試験でいい点を取ることが目的。
だから、学習効果は一時的なもの。情報源は先生や教科書など限定的であり「受動的」とも言える。
これからの教育
自分の興味・関心に従って学ぶ対象を選び、自分なりに探求していくスタイル。学ぶ内容はそれぞれが違って良い。学んだことが、自分の考え方や生き方の指針となっていく。
自分の専門性やスキルを使って働き方やライフスタイルを創造する、あるいは他の専門性を持つ人と協働することが目的なので、生涯学習し続ける。情報は人的、物的なものを問わず、自分から「能動的(主体的)」に取りにいくもの。
これからの学びを一言で言えば「自分のやりたいこと・好きなことを突き詰めていく」ための手段と言えます。
もう机にかじりついているだけが学びになる時代ではありませんし、親世代にしてみれば遊びに見えるようなことからも子どもは学びます。
こう言うと、「自分の学びスタイルが通用しないのであれば、どう子どもにアドバイスしたらいいのか」と余計に不安になってしまう人もいるかもしれません。
でも、必要以上に不安にならないでください。何をどう学ぶかは親世代が決めるのではありませんから、子どもが好きなことを見つけられるように伴走していけばいいのです。本来、子どもには自分で育つ力があります。信じて、寄り添っていきましょう。
一番大切なことは、いつの時代も変わらない
時代の変化はともかく、大事なことは子どもに「こんな人になってほしい」と大人の希望を当てはめるのではなく、ありのままを受け入れることです。
子どもがどんなものを楽しいと思うのか、何に興味があるのかをよく観察してみることです。大人が介入しない、ただの遊びの時間にどんなことをしているかよく見てみるといいと思います。
子どもが自由に遊べる時間を大事に、ということは習い事や用事を詰め込みすぎない方がいいですね。
英語学習やプログラミングは学びを深めるための手段であって目的ではありませんから、本当に子どもがやりたいことなのか振り返ってみてください。
もしかしたら、親が思う「大事そうなこと」ではないでしょうか?それをしているときの子どもの目は、キラキラと好奇心に輝いているでしょうか?
空想に心を羽ばたかせたり、思いつきを実行してみることこそが学びの種なんです。シンポジウムでは参加者からたくさんの質問があったので、いくつか紹介したいと思います。
自分で「好き」を見つけるにはどうしたらいいのでしょうか
Q1.
モンテッソーリでは子どもが自分で活動を選ぶことを大切にしているようですが、親はどうしても「この時期にはこれをやらせた方が良いのでは」とか「同じ年齢の子どもはこれができるのだから、うちの子にもできるはず」などといろいろとやらせてみたり、できないと焦ったりしがちです。
子どもが自分で「好き」を見つけるにはどうしたらいいのでしょうか?親や先生はどのように関わればいいですか。
A1.
なかなか広くて難しい質問ですが、私はこんなふうに考えています。子どもには自ら育つ力があるということに立ち返って、主体性を大切に考えてみましょう。
他の誰かと比べて不安になったり、焦ったりするのは、大人が子どもを自分の評価軸で捉えているからだと思います。または子どもの出来を自分の評価として捉えてしまっていることもあるかもしれませんね。
しかし、本来は子ども自身が自分をどのように評価しているかが重要です。物事を自分で判断し、自分で決め、自信を持ち、満足している子は自ずと自分で「好き」を見つけられます。
そういう子どもを育てるには、何歳であれ無駄に「子ども扱い」せずに個人として認めること、そして「自分のことは自分でする」という態度で付き合うことが大切な一歩だと思います。
自宅でモンテッソーリ・メソッドを取り入れられますか
Q2.
モンテッソーリ・メソッドを取り入れてみたいのですが、近くに実践している保育園・幼稚園がありません。自宅でできることはありますか?モンテッソーリ教具を買ったらいいのでしょうか?
A2.
一番大事なことは子どもの主体性を育むということです。モンテッソーリ・メソッドでは、子ども学ぶ環境を整えることが大人の役割と考えています。
教師や親を含めて、子どもに関わるすべての大人が子どもの環境に関わっているわけです。幼児にとっては、学校よりもむしろ家庭にいる時間の方が長いわけですから、家庭の役割はとても大きいと思います。
家庭では、まず子どもが身の回りのことを自分でできるようにするところから始めると良いと思います。「自分でできることは自分でする」ことが基本です。
靴を履く、脱ぐ、そろえる、洋服を着る、脱ぐ、たたむなど少しずつできることを増やしていったらいいと思います。上手にできなくても、自分でやりたい・できた!という喜びを親子で共有できたら最高です。
それから、ホームモンテッソーリを実践するために自宅に教具をそろえるひともいますが、個人的にはあまりおすすめしません。
モンテッソーリ教具にはひとつひとつに狙いと目的があり、それを理解して子どもに使い方を示すためには専門的なトレーニングが必要です(モンテッソーリ教師は専門的に学び、資格を取得しています。本格的に学びたいという方にはおすすめですが)。
また、教具は子どもの発達過程の興味に合わせて、系統立てて作られています。ひとつのことができるようになれば、次の教具というように順序が決まっているものもあります。
子どもの興味に合っていれば、ひとつでももちろん楽しめるのですが、それだと既成のおもちゃとあまり変わらないかもしれません。
また、モンテッソーリの活動は子どもが自由に選択するという点を大切にしていますので、大人がいくつか選んで買ってきた時点で子どもの楽しさが半減しているとも言えますよね。
食べ物の好き嫌いにはどう対応したらよいでしょうか
Q3.
子どもの好き嫌いが多くて困っているのですが、どうアプローチすべきでしょうか
A3.
私も子どもの頃、好き嫌いが多かったのでなんとも言えませんが、子どもが食べたくないものを無理に食べさせるというのはお互いにアンハッピーかもしれません。
それよりも、まずは食べ物に親しむ・楽しむということをしてみてはどうでしょうか。
ベランダでミニトマトやバジルなど野菜を育ててみるとか、一緒に料理してみるのもいいと思います。私の勤務している保育園「モンテッソーリ原宿子供の家」では秋に収穫体験をして採ってきた野菜を、みんなで調理しています。
そうすると、普段あまり好んで野菜を食べない子も進んで食べたりすることがあります。自分で育てたとか、収穫したとか、料理したことをきっかけに食べ物の見方が変わるのかもしれません。
小さい子ならトウモロコシの皮をむくのを手伝ってもらうとか、きゅうりを塩でもんでもらうとか、パンに野菜やハムを挟んでサンドイッチを作るなど、いろいろとできそうですよね。
これからの学習スタイルは子どもによって違って良いのです。ぜひわが家らしい学びを考えてみてください!
この記事を書いたライター
ライター一覧- 堀田はるなさん
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モンテッソーリ原宿子供の家・モンテッソーリすみれが丘子供の家教員、保育士。アパレル業界、eコマース、金融など様々な業種でのマーケティング業務を経験後、教育の道へ転身。日本モンテッソーリ協会承認モンテッソーリ教員免許取得。著作「子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド」。