/ 2019.11.06

私は保育士として働いていた時代、たくさんの子どもたちと接してきました。その中で、日々子どもの気持ちを読みとり、寄り添う経験をしてきました。

しかし、わが子を育てていて感じるのは、子どもは大人が考えている以上に複雑で、いろいろなこと考えているのだということ。

今回は、毎日ルンルンでこども園に通い始めた娘が、登園拒否で大泣きをするようになったときの思いもよらない理由についてお話しします。

出典:あんふぁんWeb

しっかり者でママと離れても平気

入園前から娘は「しっかりしてるね」と言われることが多いタイプでした。

3歳年上のお兄ちゃんの影響もあって、「ママと離れて遊ぶ」ことにあこがれがあり、お兄ちゃんと一緒に友達の家や実家に、ママなしでいくことも平気。むしろ「お兄ちゃんと同じ」がうれしいようでした。

入園前にこども園のプレに通っていたのですが、その時も先生と一緒に何かをすることがうれしくて、「ママ、バイバイ!」と笑顔で私から離れて活動を楽しんでいました。

他の子が戸惑ったり、泣いてしまうことがある中、娘は1度も泣かずに園の活動に参加しました。

入園式の日は、緊張しながらも先生の話を一生懸命に聞き、まわりの泣いている子を心配するほどの余裕があり、頼もしさを感じるほど。

入園してからしばらくは慣らし保育で降園時間が早く、迎えに行くと「もっと遊びたかったのに!」と私に怒るくらいに、こども園が大好きになりました。

ある日、登園を嫌がり泣くように

入園から1か月過ぎた頃、娘が登園をイヤがり泣くようになりました。

わが家では、寝る前やお風呂の時間「今日はこども園どうだった?」と聞いています。帰ってすぐは園のことを話してくれなくても、ゆったりした時間に、ふと園での出来事を思い出して話してくれることが多いためです。

ある日の寝かしつけの時間、娘といつものように話をしていると、「男の子に叩かれたの」と言いだしました。

私は「それはイヤだったね、それでどうしたの?」と聞きました。すると「やめてって言ったけどやめてくれなかった」とのこと。

先生には伝えていないとのことだったので、「そっか、園でイヤなことがあったら先生に言ったり、泣いていいんだよ」と伝えました。娘は「泣いてもいいの?」と聞き返してきたので、「うん、泣いたっていいんだよ」と念をおして伝えました。

その翌日、娘は登園を少しイヤがり、さらにその翌日からは、毎日のように保育室の入口で私にしがみついて大泣きするようになりました。

男の子に叩かれたことが影響しているのかと思い、先生に聞いてみましたが、ケンカになっていることはほとんどないとのこと。娘が叩かれたという男の子は、先生から見ても私から見ても、とても穏やかな子で、1度ケンカになったことはあるとしても、登園をイヤがる原因には思えませんでした。

娘が泣くようになった理由

それでも、相変わらず園の支度は進んで自分でして、機嫌よく園に向かうのですが、保育室の入口に着くとスイッチが入ったように表情を曇らせ泣く娘。

不思議に思っていたある日、娘が1番仲良しの友達と登園時間が一緒になりました。すると娘が友達に「今日も泣く?」と小さな声で聞いていたのです。

そこで気づいたのですが、泣くようになった理由はなんと「友達のマネ」だったのです。

その友達は娘と同じくお兄ちゃんがいて活発な女の子で、入園後すぐに仲良くなりました。似ているようで違う所は、娘は「しっかり者でいたい」という思いが強くいつも背伸びしてしまうタイプ。それに対し友達は、素直で子どもらしい面がありました。入園当初から朝はママと離れたくないと泣き、先生にだっこ、日中はケロッとして笑顔いっぱいに遊んでいました。

そんな友達が朝泣く姿を、娘はうらやましく感じていたのかもしれません。そんな時私が「園で泣いてもいい」と言ったので、「マネしてみよう」と思ったのだと思います。

「泣いてしまう」というよりは「泣くと決めた」娘。大粒の涙で泣けるところにわが娘ながら女優魂を感じます(笑)。遠足などの行事の前日は友達と二人で「明日の朝は泣かないようにしようね」と約束をしていました。

私は娘のその状況を先生にも相談して、あたたかく見守ることにしたのです。

朝の大泣きは大切な成長過程

朝、大泣きしてスムーズに登園できなくなり、大変になった反面、うれしい変化がありました。

それは、娘が「ママやって」と素直に言えるようになったこと。

それまではお兄ちゃんやその友達のように、なんでも自分でしなきゃという思いが強すぎて、難しいことでも私が手を貸すと怒っていました。結局1人ではうまくいかずいつもイライラしていて、それを見るたび、もどかしさを感じていました。

しかしそれが減り、困った時には素直に助けを求めるように。がんばりやの娘だからこそ、これからの園生活でも、「一人でできる」ことだけがいいことではなく、友達と協力したり、時には頼ったりする事ができるようになってほしいと思います。

また、「ママと離れたくないな」と言葉にするようになり、帰ってきたらヒザに乗ったり、なんでも「見て見て」と言ったり、甘えることが増えました。そのおかげか以前より、穏やかになり、癇癪(かんしゃく)を起すことがなくなりました。小さなうちに思いっきり甘えることは、どの子にも必要な経験だと思います。

一見、友達のマネをして大泣きするようになったことは、よくないことに感じますが、娘にとっては「素直に気持ちを表す」ことを身につけるきっかけになり、大切な成長過程だったのだと感じています。

子どもが成長していくときの過程や変化は千差万別。これからもそのときどきの子どもの様子をしっかり見守りながら、受けとめていきたいと思います。

<文・写真:ライターnicoai>