インフルエンザの予防接種は済みましたか。保育園や職場で流行すると親としては不安になりますよね。理想の接種時期や、集団生活の中で気を付けること、もしも家族がり患したら?東京医療保健大学大学院感染制御学教授の菅原えりさ先生に教えてもらいます。

教えてくれたのは

菅原えりさ先生

東京医療保健大学大学院感染制御学教授。日本環境感染学会理事
日本赤十字社医療センターにて感染管理認定看護師として感染制御業務に従事し、院内の感染制御を専従で担当し、病院感染リスクのモニタリングやその低減活動を実施した。2013年より現職。

2019年のインフルエンザの傾向

毎年12月~3月流行期を迎えるのが季節性インフルエンザですが、今年は9月に沖縄県、そして東京都でも9月26日の報道発表で定点医療機関当たりの患者報告数が1.06(定点当たり1.0以上が流行の目安)となり、例年より早い流行シーズンのスタートとなりました。

2009年の新型インフルエンザ流行時は今年のように早く流行がスタートしましたが、今年流行の兆しをみせているインフルエンザウイルスは、2009年以降毎年流行している季節性インフルエンザウイルスです。

予防接種はいつまでに終わらせた方がいい?

流行が早く始まったとはいえ、まだ大きな流行にはなっていませんので、遅くても12月上旬までに接種を終わらせられるのが理想です。

12月以降の接種では間に合わない?

インフルエンザは、例年12月下旬ごろからり患患者が急激に増え始め、1月2月でピークを迎えその後徐々に減り始めるのがパターンです。

よってり患患者が最も多い時期にワクチン効果が発揮できることを期待し、12月上旬までの接種を推奨していますが、インフルエンザの流行は例年3月ころまで続き、時には5月のゴールデンウイークごろまで尾を引くこともあります。

したがって、12月上旬を過ぎたらもう遅い!ということはありません。ただし、できるだけ速やかに接種をすませるようにしましょう。

なぜ乳幼児は2回接種なの?

インフルエンザワクチンは6カ月以上の乳幼児から接種できます。乳幼児から学童期にかけては、1回接種より2回接種の方が抗体価が上昇することがわかっているため、厚生労働省は13歳未満の方は2回接種が必要としています。

2回接種の場合の接種間隔は2~4週(日本小児科学会推奨)です。

2回目までの期間が4週以上空いても大丈夫?

2回目の接種が4週間以上空いてしまっても大丈夫です。かえって2回目の接種が早すぎる方が抗体価がつきにくいとする報告もあります。2週~4週はひとつの目安としてください。

前述したように2回目の接種終了時期を12月上旬と定めた場合、1回目は11月上旬くらいに実施する、などスケジュールを立てて忘れないようにしてください。

予防接種以外に集団生活の中で予防できること

言うまでもなく、外出から帰ったらまず手洗いうがい(水道水でのうがいで十分です)を励行しましょう。

咳をする場合は必ず口元をハンカチやテッシュなどで覆い、口から飛び出す飛沫物をまき散らさないようにしましょう。(「咳エチケット」と言います)

ご自身、そしてお子さんが少しでも体調不良があった場合、無理に仕事や保育園、幼稚園、学校には行かず(行かせず)、積極的に休ませるようにしましょう。ご自身のインフルエンザを他に伝播させないようにすることも重要な対策です。

もしも家族がり患してしまったら

まずは、できればインフルエンザにかかってしまった家族がしばらく他の家族と接触しないように、または接触を最低限にするよう工夫するといいでしょう。特に高齢者と同居している場合は要注意です。

また、かかってしまった家族と接触する場合は、マスクを着用し、接触した手は常にアルコール消毒できるよう準備しましょう。もちろん、タオルや衣類の共有は避け、かかってしまった家族専用にしてください。

子どものインフルエンザの初期症状は

小児の場合は特に通常の「かぜ症状」と見分けがつきにくい点があります。

インフルエンザは1~3日の潜伏期間後、40度前後の高熱が2~4日続き、咳、鼻水がみられ、ほぼ一週間で軽快します。

しかし、肺炎や中耳炎を合併することや、熱性けいれん(ひきつけ)をおこすこともあります。また、まれに「脳症」を引き起こすこともありますので、意識障害や言動に十分注意する必要があります。

いずれにしても、様子をみるのではなく、早期に医療機関にかかることをおすすめします。