/ 2020.02.19

出典:あんふぁんWeb

子どもの可能性を作るのは、子ども自身の「楽しい!」という感覚で、子どもの人生は子ども自身が形作っていくもの。

今だからこそ、心底そう思います。

現在小学4年生の息子。今は大好きなサッカーに楽しんで取り組んでいますが、幼稚園年長の1年間は、体操競技で選手になることを期待され、日々厳しい練習を重ねていました。

そのころ、息子の思いややりたいことを尊重せず、私の思いを押しつけてしまっていたことで、思わぬ弊害が…。

今回は、息子のひとことで気づいたこと、私の反省、そこから息子がわが道を歩めるようになるまでをお話しします。

体操好きの母は、息子の才能に夢を見た

そもそも、私は体操競技を見るのが大好きで、小学生のときは、NHK教育で夕方に放送されるNHK杯体操選手権がとても楽しみでした。

ある日のこと、幼い息子を見ていて、体の使い方がうまい!と感じました。

公園のブランコから落ちても、笑いながらまたよじ登って漕ごうとします。重い頭の重心をとれるようになるのが早く、自分の握力の程度を把握しながら、ブランコをうまく動かすので、すぐに落ちなくなりました。

そういえば、伝い歩きのころから、転んで自分の歯で口内を切り流血しても、どこまでもスタスタ突き進んでいっていました。

その姿や無謀なまでの好奇心が、私の目にはスポーツ向きに映りました。親バカだとは思いますが、器械体操に向いている気がして、満3歳で体操教室に入会したのです。

すると、週3回の体操教室で先生方に認められ、年長で推薦者のみ進める選手育成コースへ。

私の体操への思いはエスカレートし、ますます体操送迎にも熱が入るようになりました。

途中でサッカーがやりたいと言い出したけれど

実は、選手育成コースに通う前の年中の中頃、息子が「サッカーをやりたい」と言ったことがあります。

私は、「やりたい強い気持ちが続くならいいよ。半年待ってみよう」と伝えました。その後、その気持ちは持続し、あまりの熱意に年中の3月に幼稚園のサッカー教室へ入会しました。

ただ、私はサッカーに対しては思い入れはなく、体力強化程度にしか受け止めていませんでした。

サッカーに通い始めて、コーチから個別に「息子さんはサッカーのセンスがある。環境が許すならクラブチームに入ったほうがよい」「体幹がある」と言われたことがありました。

ちなみに、コーチは元Jリーガーで、地元の人は知る人ぞ知る有名な方。ですが私は、「本当は体操向き!」と、その言葉を聞き流してサッカーに力を入れることはしませんでした。

そのとき、息子は体操をやめたかったのかもしれません。でも当時の私は、そのことに気づいてあげることができませんでした。

息子の思いより、私の価値観やプライドを優先

ある休日の夕方。息子が私の顔を真剣な眼差しで射るように見てきて、ひとこと。

「お母さんは、僕が体操をやるから好きなの?」

背筋が凍る…とはこういうこと?

「何をやっていても好きだよ」「小学校になったら、サッカーのクラブチームに入ってもいいよ」と内心動揺しながらも話しました。

でも、今まで体操で積み上げてきた時間と実績が惜しい私。

サッカーに専念させる決断はできず、「体幹があるとサッカーに役立つよ。小学校になったら、選手育成コースではなく普通クラスの体操でよいから」と体操教室にも通わせることにしたのです。

「どうせオレはダメなんだよ」が口グセに

その後、1年生の時に夫の転勤に伴い転校することに。

体操とサッカーを続けることにして、体操教室に近い住まいを選び、小学校のサッカークラブにも入部。これで息子の気持ちに最大限譲歩したつもりでした。

しかし、年長時、やりたくない懸垂の練習で叱咤激励を受け続ける環境が息子にとっては長かったし、引っ越しストレスも加わったのでしょうか。

入学後から態度も悪く、少しでも失敗や行動を指摘されると、「どうせオレはダメなんだよ」と、否定的な発言を連発。

教室では、どんなときでもお構いなしで、椅子をのけぞらせて机に足をかけて座ります。

体操教室の体育会系のしつけによる行儀の良さ、「挨拶」「上下を重んじる」「自分を律する」はどこ吹く風。

行儀のよい女子やそのママからお小言をいただくことも少なくない状況でした。

息子の大好きなサッカーをママも大切に

さすがに「ヤバい」と私も目覚め、完全な方向転換を迫られたのは1年生の冬。

「オレ、こんなはずじゃなかったんだけど…何でだろう」と学校で呟いていたと担任の先生から聞かされたとき。

冷やかしてきたお友だちを蹴って、注意を受けたときだったようです。

1、2年時の担任のK先生は、学校で態度が悪かろうと息子を邪険に扱わず、いつも様子を気にかけてくれる人でした。K先生の気づき、連絡に救われました。

ここでようやく、私は決心しました。

今からでも遅くない!彼の自尊心を取り戻そう!

息子にとって、「強制する人」でなく「支えてくれる人」になろう! 息子が「僕の意思を尊重してくれている」と実感するまで諦めないで働きかけようと決めたのです。

まず、体操教室を辞め、2年生からはサッカーのみに。サッカー塾にも通い始めました。すると本人の様子が少しずつイキイキしてきました。

とはいえ、学校での態度の悪さは急には変わりません。

そこで、私は息子が2年生の時は学校で役員を引き受け、いつでも教室がのぞけるようにしました。ガミガミ言うためではなく、彼を知るためでした。

そして、息子に話しかけるときはひと呼吸おき言葉を確認し話すようにし、その時々の気持ちも聴くよう心掛けました。

息子の変化と私が得た教訓は

出典:あんふぁんWeb

現在、4年生の息子はまだまだやんちゃです。それでも、いろいろなお友達と公園で一緒に遊んだり、仲良くできる場面がどんどん増えてきました。

体操で培った軸をいかし、サッカーではぶれない体幹を武器に楽しんでいます。

3年生から本人の意思で入会した地元のサッカースクールでも、「年下の子の面倒を見たり、年上の子の話を熱心に聞き、自分のサッカーに生かすようにしている」とまわりの保護者から聞かされることも出てきました。

厳しいと評判のコーチとも相性が合い、居心地がよいようです。

昨秋、「体操の練習の時の帰りの車さあ、いつも楽しかったね」「あの時のほうがムキムキだよね」と突然話しかけてきました。

「そうだね~」とさらっと笑いましたが、心の中で泣きました。

私の夢の押しつけが、息子につらい時期を作ってしまいました。

この反省から、習い事は子どもの「楽しい!」が一番! そしてママは一歩引きながらもプラスの関心を持つこと。

それが「子どもの自己肯定感をはぐくみ、逆境にも強い豊かな情操を作りあげる」と感じています。

<文・写真:ライター みち>