/ 2020.03.23

海外で暮らす日本人は約135万人。企業の駐在員や留学による長期滞在者はそ64%の86万人いるとのこと。

わが家のようにいきなり海外赴任になることはもちろん、まわりに海外赴任や留学をされているお知り合いがいる方も少なくないでしょう。

羨ましがられることも多いけれど、子連れで海外赴任になった人にしかわからない苦労、そして自分のまわりの人には言えない本音もあるのです。

赴任前からワンオペ育児とワンオペ海外引っ越し準備

わが家は、2019年の9月から夫の赴任でオーストラリアで暮らしています。

海外への辞令を受けた後、赴任する本人は、研修、引継ぎ、送別会…と国内外を飛び回って、自宅にはほとんどいないというのはよくあること。実際、わが家の夫も赴任前からほとんど家にいませんでした。

家族そろって赴任地へ赴く場合もあるようですが、会社の規約や引き継ぎの事情で、夫だけが先に現地入りし、「家族は後から」という場合も多いのです。

そうなると、「国内でのワンオペ育児」からの、ほぼ「ワンオペの海外引っ越し」となります。まさにわが家もそうでした。

出典:あんふぁんWeb

わが家は国内での転勤を何度も経験してきましたが、今回実感しているのは、海外の引っ越しは、国内の引っ越しの3倍は大変だということ。

まず海外への輸送の都合で、荷物の仕分けが厳しく、船便で持っていくもの、航空便で送るもの、手荷物にするもの、廃棄や実家や倉庫に預けるものと分けなければいけません。

手続きも、銀行から保険、運転免許、カードの整理から郵便物の受け取り先まで、国内の引っ越しでは簡単に済むものも、プラスひと手間ずつかかり、ビザにかかる申請一式や無犯罪証明書の取得、車の処分と無事故証明書の申請、国際免許の取得、さらには、予防接種や渡航健診、学校に成績証明を依頼したり、事前に渡航先の学校とのやり取りをしたり、合間には語学レッスンを入れてと多岐にわたりました。

夫不在のため、それらの手続きは、すべて私一人で進めました。

パスポートをはじめ、子どもの予防接種や渡航健診も含めて、子どもを連れて手続きに回る日々が続いたのです。

異国でのワンオペ手探り育児

一方、海外に来てからゆっくりできるかと言えばそうでもありませんでした。

住宅や最低限のインフラは、夫が協力してそろえてくれていましたが、慣れない海外の学校に通う子どもの世話をしつつ、まったく何がどこに売っているかさえ見当もつかない海外で、生活基盤を整えなければなりませんでした。

小学生の子どもは送迎が必要ですし、留守番は基本NGです。渡航したばかりで銀行やカードも私の分はすぐに作れませんでした。ガスや電気の請求は当然夫名義ですが、本人でないと問い合わせも受けつけてもらえません。

そして、宅配物は、日本のように時間指定ではないどころか、届かないなどのトラブルが相次ぎました。

また、学校への書類や、住宅の契約、現地の免許への切り替えや車検、インターネットの接続に携帯電話の契約なども、日本でもやや面倒なのに、言葉が通じない分、余計に負担は倍増でした。

 

夫に頼もうにも、夫だって新しい土地での仕事に必死で忙しい日々。日本の時間に合わせて仕事をし、かといって日本の休みが休みというわけではなかったのです。

海外のワンオペが続き、海外で家出をしたという話も

シンガポール、香港を経て、オーストラリアに赴任してきたママは、同じような海外のワンオペが続き、海外で家出をしたのよと話をしてくれました。

この話を聞いた時、私だけじゃなかった!と逆にホッとしたのを覚えています。

土地勘もなく、言葉だって不自由な上の海外で家出って、相当の度胸と覚悟です。「今思うとウツになっていたのね」と話していましたが、鬼気迫るものがあるほどに追い詰められる心理状態は私も体験しました。

「夫が忙しすぎて、赴任前に前任の方に話を聞きたかったのに、取り次いでさえもらえなかった」という私が感じていたのと同じ文句を、ほかの駐在ママさんも言っていたことで、この大変さは一般的なんだなぁと感じました。

そして、「そうか、この思いがいつかただのグチになるんだ」となんとか乗り切れたという部分もあります。

頼る身内もまったくいない海外って本当にサバイバルです。

海外赴任というと優雅なイメージだけれど…

出典:あんふぁんWeb

私も海外赴任の話が来るまでは、「海外に赴任なんて高給取りで優雅な生活なんだろうな~」という勝手なイメージを持っていました。

けれど、準備に始まり、赴任時も帰国してからも出費がかなりの額になることに驚きました。

電化製品は電圧の関係で海外で使えず、けれど数年も倉庫に入れておくと使えなくなることが多いため、すべて捨てて買い直さなければなりません。

また、荷物の量なども制限があるので、家具一式、生活用品、学用品、それぞれ海外に行くときに買い替え、帰国する時にまた買い直す必要があるものが意外と多いです。

ちなみに、オーストラリアは物価が2.2倍以上と言われます。スーパーの鮭1切れも1パック12個入りの卵も、日本円にして800円以上です。駐在の手当で給与が倍にはなったわが家ですが、物価からいうとあまりお得に感じません。

 

それにもまして、渡航前から生活がかなり壮絶です。その渡航準備にかかる労力に対しては、当然ながらなんの補助もありません。準備に明け暮れた数か月、妻である私の無償労働の上にわが家の赴任準備は成り立っていました。

赴任の手当は「日本国内と海外での妻の労働に対してだ!」と夫に豪語したくらい、今回の子ども連れの海外赴任は妻であり母である私にとって負担の大きい体験でした。

<文・写真:ライター 結生>