/ 2020.04.10

出典:あんふぁんWeb

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入園・進級おめでとうございます! 

今年は小学校で新学習指導要領が施行される年。

小学校なんてまだまだ先の話…と思いきや、今回の指導要領の改訂は、実は幼稚園の教育にとっても関わりの深い話なのです。

幼稚園教育の専門家と文部科学省に、新時代の子どもの学びについて聞きました。

今回の改訂のキモ!幼稚園から高校までの教育を貫く「3つの柱」

1 実際の社会や生活で生きて働く知識および技能

2 未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力など

3 学んだことを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性など

※文部科学省「平成29・30年改訂学習指導要領」から

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幼稚園の学び幼稚園では遊びを通じて「3つの柱」の土台となる力を身に付けていきます

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お話を聞いたのは:兵頭恵子さん

横浜の幼稚園に主任教諭として長年勤務し、現在は幼少年教育研究所顧問。保育雑誌や講演で幅広く活躍中。

主な著書に「教えてほしい!男の子の育て方」(PHP 研究所)、「先生とママの子育てサプリ」(共著、鈴木出版)など。

幼稚園では2年前から「3つの柱」に基づく教育がされています

小学校では2020年から新学習指導要領がスタートしますが、幼稚園では2018年4月から、改訂された幼稚園教育要領が施行されています。これは「知識および技能の基礎、思考力・判断力・表現力などの基礎、学びに向かう力・人間性」を「幼児期に特に育みたい力」としたもの。つまり幼稚園ではすでに、「3つの柱」に基づく教育が行われているのです。

「3つの柱」が重要とされた背景には、出された問いに多く正解することではなく、自分の頭で考えることがこれからの時代を生き抜く上で大切だとする方針があります。そこであらためて注目されたのが、毎日の園生活にあふれている「遊び」の経験です。

遊びで身に付けた力が、自ら学びに向かう姿勢を支えます

下のイラストで紹介しているように、身体能力、思考力、想像力、協調性といった「3つの柱」で求められている能力を育むきっかけが、遊びの中にはたくさんあります。これまでは小学校で困らないよう、ひらがなや数を幼児期から教えるべきといった考え方もありました。

しかし、遊びの経験=思考力や協調性を幼児期に育む経験がおろそかになったことで、小学校に上がってから先生の話を集中して聞けない、友達とうまく関われない、自分で工夫して考えることができないといった問題が起こってきました。

そこで、幼児期は遊びの経験こそ重要であること、遊びで身に付けた力がやがて自ら学びに向かう姿勢を支えることが見直され、幼児期に特に育みたい力を「3つの柱」とした教育要領が定められたのです。

こうした力を3年間で育むために、園の先生たちは子どもたちが遊ぶ姿から今何に興味があるのかを読み取り、より豊かに遊びを広げています。幼稚園の毎日の遊びの経験が小学校以降の学びの土台となっていくのです。

幼稚園の遊びの中にはこんな学びが隠れています

● 思考力

遊びを面白くするために、どうすればうまくいくか粘り強く考える経験を積みます。年長さんになると遊びを発展させるために自分たちで道具を作り出すことも。

表現力

自分が遊んだ経験やイメージしたものを言葉で伝えたり、絵や工作で表現します。そこで培った表現力がまた遊びへと生かされていきます。

協調性

初めはお友達との関わり方が分からずけんかが起きることもありますが、徐々に自分たちだけで折り合いをつけたり、気持ちを言葉で表現できるようになります。

● 身体能力

遊ぶために工夫して、体を使いこなしていきます。「この高さからなら飛び降りられそう」と自分の身体能力を測ったり、体をコントロールしたり、調整したりする力を養います。

● 想像力

泥団子を食べ物に見立てたり、ごっこ遊びで役割を分担したり。イメージを膨らませて遊びを発展させていく想像力は、小学校で文章題を読み解く力にもつながります。

小学校の学び文部科学省・平千枝さん、荒川瑞穂さんより変動する社会を生き抜く力を育てることが新学習指導要領のテーマです

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お話を聞いたのは:平千枝さん

文部科学省 初等中等教育局教育課程課専門官。小2の子、4歳児のママ。

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お話を聞いたのは:荒川瑞穂さん

文部科学省 初等中等教育局 情報教育・外国語教育課。1歳児のママ。

何を学ぶかだけではなく新どんな力が必要かに視点をおいた改訂です

学習指導要領とは、文部科学省が定めている教育課程の基準のこと。子どもたちの教科書や時間割はこれを元に作られていて、およそ10年に一度のサイクルで改訂しています。

これまでの指導要領は「小学校1年生ではこの漢字・計算を学ぶ」というように、「何を学ぶか」という視点で作られていました。しかし今回の改訂においては、その視点だけでは子どもたちに必要な力が身に付かないのではという課題が挙がりました。

例えばスマートフォン一つ取っても、10年前まではこれほど社会に普及するとは思われていませんでした。それぐらい急速に変動する21世紀を生きる子どもたちのためには、「何を学ぶか」だけではなく、「変動する時代を生き抜く上でどのような力が必要か」を指導要領で示す必要があると考えたのです。

そこで示されたのが4ページの「3つの柱」です。幼稚園から高校までの教育内容を「3つの柱」に基づいて整理し、教育のタテのつながりを意識したことが今回の改訂の大きなポイントです。

園や学校での学びを家庭で「話す」機会を大切に

お子さんがやがて経験する、新時代の小学校教育。ママたちの時代とは大きく変わっていることもあり、「今から何か準備しておかなければならないの?」と心配になるかもしれません。ですが、学習内容についてはこれまで通り、学校の先生が一人一人をフォローしながら教えてくれますから、その必要はありません。私たちが家庭にぜひお願いしたいのは、「園で体験したことや学校で学んだ内容を家で話すこと」。学校で学んだことを家庭で話す子どもの学力は高いというデータが、学力テストの結果からも分かっています。

例えば、小学校2年生では「ℓ」「㎖」などのかさの単位を学びますが、「牛乳パックは1ℓだね」「料理に使う計量カップは200㎖が量れるんだよ」とママやパパと話すことで、学校の勉強が自分たちの生活とつながっていることを実感できます。

また、学んだことを誰かに話す経験を通じて、子どもたちの理解も深まっていきます。プログラミングや外国語学習など、ママたちが経験してこなかった学習内容については、お子さんから教えてもらうつもりで家庭で話題にすることで、今の時代を知るきっかけにしてもらえたらと思います。

幼児期に遊びを通じて育んだ力を土台として、学びに向かう姿勢や基盤となる知識を身に付けることが小学校の役割です。小学校での学びを楽しみに、幼稚園での経験を積み重ねてくださいね。

ママたちの時代と大きく変わった!
小学校教育の気になるトピック

「外国語学習」「アクティブ・ラーニング」などママたちの時代はなかった教育についてその具体的な内容や、目的を聞きました。

<小学生ママアンケートから>

Q自分が小学生のころと今の小学校教育で大きく違うと思う点は何ですか?(複数回答)

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その他では「昔に比べて褒める教育を重視していると感じる」「高学年は6時間授業の日がほとんど」などが挙がりました。

※2020年1/8~2/5あんふぁんWebで実施。有効回答数231人

● 外国語教育が小3から開始

昨年までは、小5から外国語活動に取り組んでいましたが、新学習指導要領では小3から外国語の音声に慣れ親しみ、小5から読むこと・書くことも段階的に学んでいくことになりました。自分の考えや気持ちを伝え合うという実践を通じてコミュニケーション能力の基礎を育むことで、中学以降の外国語学習にもスムーズに進んでいけることを期待しています。

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● プログラミング教育

新学習指導要領の代名詞として注目されがちな「プログラミング教育」ですが、子どもたち全員にプログラマーを目指してもらおうということではありません。現代の子どもたちは生まれたときからスイッチ一つで動く電化製品に囲まれていますが、それらは「魔法の箱」ではなく人間が作った命令によって動いていることを理解すること、また、プログラミングに必要な論理的思考に触れることが目的です。

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● アクティブ・ラーニング

授業を通じて学んだことを友達とディスカッションする、みんなの前で発表する、学んだことがどんな場面で役に立つのか地域に出て活動する、などの学びを「アクティブ・ラーニング」と呼んでいます。自分の考えや立場を明らかにし、異なる考えや立場を通じて視野を広げること、いろいろな教科で学んだ知識を関連づけて自分なりの考えを深めていけることを重視しています。

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● 完全週5日制

改訂後の総授業時間数は小1で850時間、小6で1015時間。年間でみるとあんふぁんママ世代(昭和60年生まれ)と変わりませんが、週6日制(月1~2回の土曜日休み)と同じ時間数を平日5日に収めているので「平日が忙しい」と感じる人も多いようです。小1・2では理科と社会を統合した「生活」という科目がある、小3からは「総合的な学習の時間」があるなど、教科なども変化しています。

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こちらも要チェック!小学校の授業を動画でのぞき見

政府インターネットテレビ「よくわかる”新学習指導要領”」

文科省公式チャンネル「外国語教育はこう変わる!」