/ 2021.10.12

乳児湿疹というものがあるのはわかっていても、赤ちゃんの肌にポツポツっと湿疹が出ると気になりますよね。乳児湿疹の代表的な症状や原因、おうちでの適切なケアなどを東京医療保健大学の米山先生に教えてもらいました。

お話を聞いたのは

米山 万里枝先生東京医療保健大学 教授

大学・大学院での研究や学生教育とともに、日本における児童虐待の増加や妊産婦の自殺を防ぐ活動を行っている。2018年には、品川区との連携による 「品川区産後ケア事業」 の一環で、「産後ケア研究センター」を設置。産後の母子支援に取り組んでいる。

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乳児湿疹の症状

乳児湿疹(しっしん)とは肌トラブルの病名ではなく、乳幼児によくできる湿疹の総称のことを言います。主な乳児湿疹の種類には、新生児ニキビ・乳児脂漏性湿疹・汗疹(あせも)の3つがあります。

新生児ニキビ

生後1週間~1カ月頃にみられます。顔の毛穴部分に炎症が起きてニキビのようなポツポツができる症状です。ひどい場合には、顔全体に赤いポツポツが広がることもあります。

乳児脂漏性湿疹

生後3~4週ごろにみられます。顔と頭にフケや黄色みがかったうろこ状のかさぶたができる症状です。首から上、顔、頭皮と症状が現れます。

新生児ニキビと乳児脂漏性湿疹は、母親の女性ホルモンの影響で皮脂の分泌量が増えて、毛穴に皮脂が詰まることで起こります。生後2~4カ月までは、母親の女性ホルモンが乳児の体の中に残っているため、女性ホルモンの影響を受けます。どちらも、生後2~4カ月ほどでホルモンバランスが落ち着いてくると湿疹は治まってきます。

汗疹(あせも)

汗をかきやすい暑い季節に起こりやすい症状です。尿酸やアンモニア成分が含まれる汗が、肌に刺激を与えて炎症を引き起こします。首のしわの間、わきの下、ひじの裏、足の付け根、ひざの裏など皮膚が重なりあう部分は汗をかきやすく、同時に汗が蒸発しにくいためあせもができやすくなります。

いつごろからみられることが多い?

新生児期から生後3カ月頃までの期間、乳児の皮脂分泌が盛んになるのは母体から受けていたホルモンの影響と言われており、この頃に湿疹が出ます。児自身に皮脂分泌が盛んとなる原因があるわけではないので、乳児の皮脂が多いからといって心配する必要はありません。

治るまでにどのくらいかかる?

皮脂分泌が落ち着いていくとされる期間も一般的に約3カ月間といわれていますが、個人差があります。2カ月くらいで落ち着く乳児もいれば、4カ月以上続く乳児もいるので、治まらないからといって不安に思う必要はなく、あくまでも目安です。

新生児ニキビや乳児脂漏性湿疹といった乳児湿疹の原因として過剰な皮脂が挙げられますが、特に過剰な皮脂自体を抑える方法はありません。皮脂分泌は時間が経つにつれて次第に落ち着いていきます。

乳児湿疹の受診の目安は

症状が現れたら専門の医療機関を受診するようにしましょう。乳児湿疹は、生後2~3カ月頃までは皮脂分泌が多いため、皮脂が原因となる乳児湿疹ができやすいです。しかし、別の湿疹の可能性もあるので、自分で決めつけず、皮膚科や小児科といった医療機関を受診し、薬を処方してもらいましょう。症状がひどい場合は、小児科ではなく皮膚科をおすすめします。

家庭でできる乳児湿疹の予防と対策

肌をいつも清潔にして保湿を行うと、乳児湿疹を予防ができ、できても症状を緩和し悪化を防ぐことができます。そのために大切なのはもく浴スキンケアです。

もく浴でできること

乳児湿疹がみられているということは皮脂の分泌量が多いため、ぬるま湯で洗い流すだけでなく、せっけんをよく泡立てて、たっぷりの泡でこすらず手で優しくなでるように洗います。汗や汚れが溜まりやすい首のしわの間、わきの下、ひじの裏、足の付け根、ひざの裏など皮膚が重なりあうところは丁寧に洗います。

泡を洗い流すときには、ぬるま湯を使って洗い流しましょう。体を洗い終わったら、上がり湯を最後にかけます。乳児をバスタオルの上に寝かせて、タオルを優しく当てて水分を拭き取りましょう。

スキンケアの仕方

もく浴後は、肌が乾燥して皮脂の分泌量が増えてしまい、乳児湿疹がなかなか治らないので、すぐに保湿剤を塗ってスキンケアをします。保湿のためにワセリンやベビーローションなどを使ったり、処方された保湿剤を使ったりします。スキンケアは1日2回、もく浴や着替え後、顔から足の先までの全身に、保湿剤を塗布します。もく浴のときもスキンケアのときも力を入れないようにしましょう。

母乳や母親の食事が乳児湿疹の原因になる?

母乳が乳児湿疹に与える影響は医学的な根拠はなく、母乳との関連性はないと考えています。ただし、母乳は母親の血液をもとに乳腺でつくられ、その飲食物の物質は母乳中に微量に移行します。

厚生労働省では、授乳中のアルコールは母乳に入り乳児の発達を阻害するためアルコールを控えることや授乳中のカフェインも過剰摂取に注意(カナダ保健省1日300mgまで)するよう勧めています。しかしながら、母乳を通して乳児湿疹に影響を及ぼすという明らかなデータはないため、あまり神経質になる必要はありません。

乳児湿疹が出たら母乳は断乳した方がいい?

母乳が乳児湿疹に与える直接的な影響はないため、母乳育児をやめる必要はありません。母乳には乳幼児に必要な免疫物質や栄養がたくさん含まれており、母乳はあげた方がいいです。

乳児湿疹とアトピー皮膚炎は見分けられる?

生後間もなくから2カ月くらいまでに見られる頭部・顔面・頚部の湿疹を乳児湿疹と言います。母体由来の性ホルモン(女性ホルモン)や男児自身のテストステロン(男性ホルモン)が皮脂腺からの分泌を促してできると言われており、ほとんどの場合、生後2カ月月頃には自然消褪します。

しかし、アトピー性皮膚炎の初期症状はその後も湿疹を繰り返し、掻痒感を伴います。そしてアトピー性皮膚炎は、徐々に顔面から四肢体幹に湿疹が広がります。

乳児期のアトピー性皮膚炎は最初、頭、顔、首、耳に痒みの強い湿疹から発症しますが、大半が軽く、乳幼児は痒みを訴えません。ただし寝具や母親の胸に顔をこすりつけたり、耳や顔を手でこすったり、髪を引っ張ったりすることがあります。特徴的なのは、耳介部の湿疹や亀裂です。

近年、顔面に湿疹があると母乳や離乳食に含まれる食物の成分が皮膚から吸収されて、その食べ物に対する食物アレルギーが誘発されると言われています。早期の適切な治療で湿疹を改善することは、その後のアトピー性皮膚炎の悪化やダニ・ハウスダストによるアレルギー性鼻炎、乳幼児喘息への移行を防ぐことができること、新生児期からの保湿がアトピー性皮膚炎の発症を防ぐという乳幼児のスキンケアの重要性が言われているので、長引く様子がある場合は自己判断をせずに専門の医療機関を受診するようにしましょう。

乳幼児のアトピー性皮膚炎では多くが食物アレルギーを伴う

アトピー性皮膚炎によって皮膚表面のバリアが弱くなることで、食物アレルギーの原因物質が皮膚から体内へ移行し、食物アレルギーが発症するという考えが提唱されており、母親の摂取した母乳中の食べ物が原因で特定の食物アレルギーを発症するわけではないことは解明されてきています。しかし、自己判断をせずに専門の医療機関を受診し医師の指示に従うようにしてください。

乳児湿疹の予防・改善は、毎日のスキンケアが大切です。肌をできるだけ清潔に保つようにして、肌のバリア機能を高めるために、ベビーローションなどで保湿ケアをしてあげましょう。それでも乳児湿疹がひどいときは、小児科や皮膚科で相談してみてくださいね。

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