子育てをしていれば、誰もが直面する、子どもの「イヤイヤ」。「これっていつまで続くの?」「イヤって言われたらどうすればいい?」そんなママの声に応えて、子どもの発達から見た「イヤ」の意味や具体的な対処法を紹介します。

お話を聞いたのは

秦野悦子さん

白百合女子大学教授。専門は発達心理学(言語発達、障害児のコンサルテーション、子育て支援)。臨床発達心理士。現在はわかふじ幼稚園園長も務める。三児の母。主な著書に「最新しつけ大百科」(ベネッセコーポレーション)などがある。

※この記事は、2015年11月発行の「あんふぁんぷらす 12月号」に掲載した記事を再編集したものです

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成長している証!?成長とともに変化していく「イヤ」

「イヤ」が始まるのは、早い子だと1歳過ぎくらい。1歳半ごろからだんだん「イヤ」が激しくなり、2歳ごろになると、何を言っても「イヤ」と返ってくる…という子も少なくありません。

ママにとってはとても扱いづらい時期なので、「ついに来たか」と憂鬱になってしまうママもいるかもしれません。でも、ママが困ったり迷ったりする時期というのは、子どもが大きく成長しているとき。

そもそも「イヤ」が出てくるのは、子どもの心の中に「これをしたい」「あれはしたくない」という気持ちが生まれるから。「イヤ」が始まった=「自己主張ができるようになった」ということ。

さらに、自己主張をすれば当然ママや周囲の人とぶつかります。子どもは、そのやりとりを通して、どうすれば自分の気持ちや要望を相手に受け入れてもらえるのか、ということも学んでいくのです。

6つのシーン別イヤイヤ対処法

1.食べるのがイヤ!

特定の食べ物を嫌がる場合は、いったん子どものお皿に盛り付けてから、目の前で量を減らし、「これぐらいだけ食べてみよう」と促してみて。食べたら褒めてあげましょう。

2.ママと離れたくない!

ママと別れるときはハイタッチをする、握手をして握った手を振るなど、「バイバイの儀式」を決めましょう。「これが終わったらバイバイ」という流れができると、気分を切り替えやすくなります。

また、登園時に必ずぐずると分かっているなら、家を出る時間を5分早めて。時間に余裕があれば、ママもゆとりを持って対応できます。

3.保育園から帰りたくない!

ママが迎えに来たとき、遊びの途中だったり、ちょうど絵本を読み始めたところだったりすると、「今はイヤ」「帰りたくない」となりがち。

急かしたい気持ちは分かりますが、保育園に着いたら、まずは「今、何をしているのかな」と様子を見て。何かに熱中しているようなら、それがひと区切り付いたところで声を掛けましょう。

4.弟や妹に物を貸すのがイヤ!

上の子がどうしたいのか聞いてあげることが大切です。貸したくないのなら、無理強いは禁物。下の子には「これはお兄ちゃんのだよ」「お姉ちゃんが使い終わってからね」などと言い聞かせ、上の子の立場を守りましょう。

5.片付けイヤ!

子どもは片付けも遊びのうち。「遊んでないで片付けなさい」ではなく、遊びながら片付けられるような働き掛けを。

「ミニカーはこの入れ物ね」「お人形はおうちに帰してあげよう」と、具体的に指示してあげるのがコツ。「ママと競争ね」と持ち掛けてもいいでしょう。途中で別の遊びが始まることもあるので、片付けにはある程度の時間が掛かるということも頭に入れておいて。

6.お風呂イヤ!

お風呂や食事、歯磨きなどの生活習慣は、「夕食→お風呂→歯磨き→絵本を持ってベッドへ」というように流れを作って習慣化してしまえば、「イヤ」の出る余地はなくなります。

それでも嫌がるときは、「アヒルちゃんと一緒に行こう」というようにお気に入りのおもちゃなどを持たせて促すとすんなり行けることが多いです。

もしかしてやってない?さらにイヤイヤが悪化するNG対応

怒る・怒鳴る

「イヤ」に対して怒りをぶつけるのは、解決までの時間を長引かせるだけです。子どもにとっても「怒鳴られた」という恐怖の感情しか残らないので、できれば避けて。

放置する・受け流す

子どもが泣きわめいて手が付けられない場合は少し放っておくのもいいですが、落ち着いたらきちんと対応を。そうしないと子どもは「感情の出し方」を学べず、いつも同じ状態に。

無理やりやめさせる

状況によりますが、道路に飛び出すなど危急の場合は体ごと抱いて止めるのがベスト。人前で泣きわめいたときなどは、無理にやめさせるのではなく、気分を変えさせるためにも、場所を移して落ち着かせて。

モノで釣る

「お菓子を買ってあげるから静かにしなさい」といった「取り引き」は×。「お片付けしたらおやつだよ」というように、先の見通しを持たせるために「楽しいこと」を提示するのはOK。

子どもの成長は、親にとっても成長のチャンス。自分の思うままにならない子どもと向き合い、試行錯誤してこの時期を乗り越えていくことで、ママもパパも「親になって」いくんです。がんばりましょう!