通える場所に良さそうな園がない、せっかく見つけても空きがない、仕事のスケジュールと合わない…など、さまざまな理由でモンテッソーリ園への入園を断念する人も多いことと思います。そんな皆さんのために、家でできることをまとめてみました。

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近くにモンテッソーリ教育を実践している園がありません。家でもできることはありますか?

「近くにモンテッソーリ教育を実践している園がありません。家でもできることはありますか?」
モンテッソーリ教師として、トークイベントや勉強会に参加すると参加者の方から様々な質問を頂きますが、頻度でいえばおそらく最もよく聞かれる質問がこれです。

モンテッソーリに興味を持って調べたものの通える場所に良さそうな園がない、せっかく見つけても空きがない、仕事のスケジュールと合わない…などの理由で断念する人も多いことと思います。残念ながら、モンテッソーリ教育を受けられる施設はまだそう多くはないのが現実です。

しかし園に通えないからと諦めてしまう前に、家庭でできることはたくさんありますよ。今回はこの場をお借りして、この質問にお答えしてみたいと思います。

幼児は「日常生活」から学ぶ

子どもは日常生活の全てから学びます

「学ぶ」と言うと、言葉を覚えたり(日本語も外国語も)、計算をしたりといった「知育」が思い浮かびそうですね。しかしそれよりも先にやっておくべきことは、上着を着たり、ズボンを履くなど身の回りのことを自分でできるようになることです。

「自分のことを自分で」と言うマインドは自律した心を育てる第一歩です。なんでも大人がやってあげる、というのは赤ちゃんのうちは良いですが、2歳ごろからは自分でできることを少しずつ増やしていきましょう。

現にモンテッソーリ・メソッドを実践している園で2歳児が行うこと(お仕事と呼ぶこともあります)のほとんどは「日常生活の練習」と呼ばれる領域に属す活動です。立つ、歩く、座るなどの体の使い方から始まり、指先を細かく使うことを習慣づけていきます。ハサミ、のり、鉛筆、太めの針などの道具も使い始めます。

刺繍用の針を使って、糸にストローや紙を通しています

モンテッソーリといえば「はめこみ円柱」や「ピンクタワー」などの感覚教具が有名なので自宅用に買い求める方もおられますが、私はそれも必要ないと思います。

教具は適切な提供方法があってこそのものですし(モンテッソーリ教師は専門的に提供の仕方を学んでいます)、子どもの発達段階に合ったものでなければ意味がありません。それに、小さな子どもは目覚ましいスピードで成長しますから、ひとつの教具に夢中になるのはほんのひとときです。

モンテッソーリの代表的な感覚教具、「ピンクタワー」と「茶色の階段」を組み合わせて活動しています

2〜3歳の子どもにとって、教具は触って学ぶだけの物ではなく、運び方や片付け方を覚えたり、次に使う人のためにきれいに戻すなどのマナーを覚える機会でもあります。そうであれば、家庭にあるおもちゃを大切にして、整理整頓をすることからも学べることがあるのではないでしょうか。

大人が子どもの学びを支える方法を知っていれば、(モンテッソーリ園に通っていなくても)家庭でできることはたくさんあります。

家では何を意識したら良いのか?

2〜3歳の子どもの場合、家で気をつけておくことは「少しずつ、身支度を自分でする習慣をつける」こと、そして「指先をたくさん使う」ことです。

家庭では、「無理なく、少しずつ、自分で」できるようしましょう。特別なことではなく、日常生活で子供にやってもらう機会を増やすよう意識するのがポイントです。

身支度を自分ですることの意味とは

2歳児がひとりでできる身支度といえば、初めのうちは上着を着てボタンを留めるくらいの小さなことです。大人がやってしまえばものの数秒ですむことも、子どもが自分でやろうとすると長い時間がかかります。

しかし毎日の小さなの積み重ねが、やがては大きな違いを生みます。大きくなって自分でやりたいことを見つけたり、判断力を身につけたり、問題の解決法を考えたり…といずれは自分の力でなんとかやっていく力が身につきます(最近はそういう力を総称して「非認知能力」と呼んでいます)。

ですから、小さなうちから少しずつ自分でする習慣をつけていきましょう。

具体的には、靴の脱ぎ履きや上着の着脱、脱いだ服を畳む、汚れた服を洗濯カゴに入れるなど。お料理や片付けなどのお手伝いなど、子どもにできそうなものがあれば「これお願いね」と頼んでみるのもいいですね。子どもが次のお手伝いを楽しみにできるように、「手伝ってくれてありがとう!助かったよ!」と声をかけてあげてください。

以前掲載したこちらの記事をぜひ参考にしてみてください!

参考記事▶︎モンテッソーリ流2〜3歳児に任せることリスト「自分でできる」がどんどん増える!

指先をたくさん使うのがなぜ良いのか?

指先にはたくさんの細かい神経が通っています。これをよく使って刺激することで、脳の発達を促すと言われています。また、2〜4歳ごろは感覚器官が最も成長する時期ですから、いろんな物を触って感触や質感、形や温度などによく触れて体験すると良いですね。

さらに細かく手を動かす習慣をつけることで、器用さも養われます。鉛筆で書いたり、箸を使うなどの下準備としても良いでしょう。ハサミやのりを使った工作や、折り紙なども楽しいですね。

参考までに、以前掲載したこちらの記事もどうぞ。

参考記事▶︎「切る・貼る・編む」モンテッソーリ教師が教えるおうち遊びのアイデア

そんな、単純なことなのか〜と思われるかもしれませんが、幼児の学びにさほど特別な知育は必要ありません。気長に、楽しみながらやってみてください。応援しています!

この記事を書いたライター

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堀田はるなさん

モンテッソーリ原宿子供の家・モンテッソーリすみれが丘子供の家教員、保育士。アパレル業界、eコマース、金融など様々な業種でのマーケティング業務を経験後、教育の道へ転身。日本モンテッソーリ協会承認モンテッソーリ教員免許取得。著作「子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド」。

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