皆さんにとって”息抜き“とはどんな時間ですか?一人で過ごす時間をイメージする人も多いでしょう。子どもが小さい今はまとまった時間をとるのは難しいかもしれませんが、 毎日意識して息抜きすることはとても大切。メンタルヘルスの専門家・佐々木那津さんに聞きました。

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教えてくれたのは

佐々木那津さん

産業医。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野医学博士課程所属。研究テーマは小さな子どもを育てながら働く女性のメンタルヘルス。東京大学医学部卒。2児のママ

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ほんの少しの息抜きでも意識してとることが大切

息抜きは、心の元気を回復させるために必要な時間です。仕事や子育てで、疲れた心を癒やし、ホッと落ち着ける、楽しめる、そのような時間が息抜きの時間です。仕事のストレスがあるときや、家庭にストレスがあるときは、特に意識して息抜きが必要です。

息抜きをせずに毎日走り続けてしまうと、次第に脳が疲れ、仕事でもミスが増えたり、パフォーマンスが上がらないなど、うまくいかないことが増えてくるかもしれません。

子育てでも、ささいなことでイライラしたり、思い通りにいかないことを「まぁ、いいか」と思えなくなってくるなどの影響が。そのような状態で「なんとかしないと!」とがむしゃらに頑張ると、さらにうまくいかないことが増え、負のスパイラルに入ってしまうことがあります。そうならないために、日々の息抜きを大切にしましょう。

息抜きで得られるもの

  • 心のエネルギーを充電
  • 仕事や子育てへのモチベーションを高める
  • 人生に喜びと新たな挑戦の機会を与える

こんなときは要注意!

仕事のストレスがあるとき

忙しい、プレッシャーがかかっている、上司が厳しい、人間関係にトラブルがある

家庭にストレスがあるとき

ワンオペが続く、子どもの病気、夫婦関係など

心に余裕がなくなっているサイン

  • 普段の自分と比べてイライラしやすい
  • 批判的なコメントやダメ出しがあると大きく自信をなくす、または逆に攻撃的になる
  • 相手の気持ちを考えたり手助けすることができず、ぶっきらぼうな対応に

カラダのサインも

  • 眠り・食欲に変化
  • 頭痛、腰痛などの痛み
  • だるさ・疲れがとれない

上記のようなときは息抜きが必要。それでもあまり変化がない場合は専門家に相談してみましょう。

行動が制限される今は何気ない日常に目を向けて

息抜きはポジティブな感情になれることが大切です。

一人時間になんとなくSNSやアプリ、動画、スマホニュースを見てしまうという人もいるかもしれません。その瞬間「やっとスマホ時間!」という気持ちが持てるのであればそれでOK。しかし、手持ち無沙汰になるとつい、スマホを見て逆にネガティブな気持ちになることがあるのであれば、スマホとの付き合い方を見直してみてください。処理しなければならない情報量が多いので、リフレッシュになっていない、ということもあるでしょう。

また、コロナ禍で今まで息抜きになっていたことができなくなっている人もいるかもしれませんね。そんなときこそ、新しい刺激を探して楽しんだり、今までやったことのないことにチャレンジしたり、成長できる・視野が広がる体験をするのもいいかもしれません。

上手に息抜きをする3か条

ポイント1:自分にとっての息抜きは何かを考えてみる

息抜きには大きく「リラックス系」「楽しい系」「達成感系」の過ごし方があります。これをヒントに自分にとっての息抜きを考えてみましょう。また、それをやっている時間に「今、とても楽しい」「今とてもリラックスしている」など、自分の状態に自覚的になることで息抜きの効果を高めることができます。

ポイント2:罪悪感を持つ必要なし

少しの息抜きでも罪悪感や抵抗感を感じていませんか? それは自分に必要な時間であると認識し、気持ちを緩めて思い切りその時間を楽しみましょう。

ポイント3:「息抜きの予定」を作る

行き当たりばったりではなく、「今日のご褒美」「今週のご褒美」のように、“息抜きを予定”しておくと頑張るエネルギーにもなりますし、しっかり息抜き時間を確保することにもつながります。

時間がとれない場合も立ち止まって考えてみよう

息抜きに時間の長さは関係ありませんが、その時間を作るのが難しいですよね。下記を参考に、少し立ち止まって考えてみませんか?

「時間がない」と感じている人は…

普段行っている行動に小さな幸せ=Daily Happinessに気付きを向けてみましょう。コーヒーの香りがいい、料理をしてい
るときの音、切るなどの作業を楽しんでいる自分、シャワーを浴びているときの気持ち良さなども、息抜きにつながります。五感を意識して気付きを向け、心地良い感覚を積極的に味わってみましょう。

「本当はやりたいことがあるけど時間がない」という人は…

時間を作ることに罪悪感を感じていたり、「人の手助けやお金をかけてまで時間を作る価値はない」と思っていませんか?
まずは柔軟な気持ちでトライしてみて、楽しくなかったらやめてもいいですし、楽しかったら月に一度続けてみよう、と考えてみましょう。

「 時間が作れない」ほど忙しい人は…

そんな人こそ息抜きが必要です。1つ目のように、まずは日常生活の中で既にある幸せ体験に気付き、目を向けてみましょう。

自分には息抜きが必要ない!という人は…

本当は息抜きが必要なほど脳が疲れているのに「自分は必要ない」と思っている人は注意が必要。「100%頑張る」「弱音を吐かない」「極限まで我慢」という気持ちでやっていると、やがて疲れてしまいます。脳を休め、体の緊張感をほぐすためにも、息抜きを探してみましょう。

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※この記事は、2021年9月発行の「ぎゅって10月号首都圏版」に掲載した記事を再編集したものです

イラスト/床山すずり