子どもの行動に、つい「なんでそんなことするの!?」と言いたくなること、ありますよね。読者アンケートで聞いてみると、たくさんのナゾ行動が寄せられました!その理由と親の関わり方について、専門家の先生に聞きました。

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教えてくれたのは

宮里暁美さん

お茶大アカデミック・プロダクション特任教授。文京区立お茶の水女子大学こども園前園長。30年以上にわたり保育現場や保育者養成に従事。近著「耳をすまして目をこらす」(赤ちゃんとママ社)は、悩みながら子育てする親を勇気付けるアドバイスの詰まった一冊。

ナゾ1:縁石を歩く・水たまりに入るなど

なぜそんなところが好き…?

  • 息子は水たまりを見つけると長靴じゃなくても必ず入ります[3歳]
  • 娘は縁石があると平均台のように歩いたり、ちょっとした段差を見つけるとわざわざ上がってから飛び降りたりします[4歳]
  • ダンボール箱があると、いつも猫のように入ります[2歳]
  • 登れそうな場所があると、兄と弟がそろって登ろうとします[2歳、4歳]

なんでそうする?親はどうする?

これは「場が子どもを呼んでいる」のでしょう。大人が居心地のよいカフェに惹きつけられるように、子どもは「変化が起こりそうな場所」に惹きつけられるもの。親は子どもの中にムクムクと湧き上がる「◯◯したい」という意欲を理解して、できるだけ見守ってください。

ただし「何をしてもOK」ではなく、人に迷惑をかけることや記念碑などに登るのはダメ、これ以上の高さは危険など、TPOや加減も学ばせましょう。

ナゾ2:ひたすらものを出す

あぁ…片付けが…

  • おむつを袋から全部出してしまいます[1歳]
  • 娘は私のカバンの中のものをすべて出してしまいます[1歳]

なんでそうする?親はどうする?

ものを出したり入れたり、転がしたり落としたりすることは、保育では「探索行動」と呼ばれ、発達にはとても大切なものとされています。ティッシュや日用品などをたくさん出してしまうと、親はつい叱りたくなりますが、「あら〜! こんなに出しちゃって」と大げさに驚いてあげると、子どもは「やりきった」と満足感を得られるはず。

年齢にもよりますが、片付けは時間や心の余裕がなければ親だけでササッとやってしまいましょう。

ナゾ3:見えない誰かと戦う・話す

誰かいるの…?

  • 息子は常に見えない敵と戦い、私にもその敵の弱点と倒す方法を伝授してきます[5歳]
  • 娘はおもちゃを携帯に見立ててナゾの友達に電話しています[3歳]

なんでそうする?親はどうする?

大人から見ると不思議な光景ですが、見えない誰かと戦ったり、話したりするのは高度な力が身に付いてきた証拠です。この「豊かなイメージの世界で遊ぶ力」は、先々いろいろな物語や文学作品に親しんでいく素地になります。

保育園では自分のイメージだけで遊ぶのは難しいもの。家では自分だけで構築したイメージの世界を存分に楽しませてあげましょう。ときには親が見える敵や友達の役を演じてあげても楽しいですよ。

ナゾ4:とにかく走る・踊る

体力ハンパない!

  • 息子は2歳後半あたりからとにかく走る! 外でも家でも、短い距離でも構わず走ります[3歳]
  • 息子はダンスが大好き! 少し激しい音楽が流れるとすぐに創作ダンスが始まります[4歳]

なんでそうする?親はどうする?

走ったり踊ったりするのは心身の発達にとても大切。自分から心のままに動く運動は、習い事のようなルールに沿って行う運動よりも運動量が豊富。自分が動きたいだけ動いて、休みたければ休み、やめたければやめると、その子にとってちょうどいい運動量になるでしょう。

親は「楽しいね」と共感しつつ、危ないときは「公園に着いたらいっぱい走れるから、道路では走らないでね」などと伝えるようにしましょう。

ナゾ5:石などを拾って持ち帰る

親にはわからないこだわり

  • 息子は石が大好きで、石が敷き詰められている駐車場があれば寄って拾います。何でもいいわけではなく、厳選しているみたい。お気に入りの石を見つけたときの笑顔がかわいいです[2歳]
  • 娘は松ぼっくりを見つけると必ず拾います。旅先で松林を通ったときはエコバッグ2つがいっぱいになりました[3歳]

なんでそうする?親はどうする?

大人にはただの石ころや松ぼっくりでも、子どもにはそれらが「宝物」に見えているのでしょう。自分の価値観で「お気に入り」を見つけることは、自我の芽ばえにつながります。

また、自分が発見した価値を大好きな人が認めてくれるのは大きな喜びなので、「これいいね」「ちょっと触らせて」などと言えば、きっと誇らしげに触らせてくれるでしょう。会話ができる年齢なら「どこが好きなの?」と聞いてみてもいいですね。

ナゾ6:なんでも舐める

それ、おいしいの…?

  • 娘が小さい頃はガラスや鏡、テレビの液晶などをすぐ舐めるので、いつも掃除が大変でした[5歳]
  • 父親の靴だけ靴箱からすべて引っ張り出して、舐め回します[1歳]

なんでそうする?親はどうする?

赤ちゃんがものを舐めるのは本能的な行動。ものを確かめるために舐めるのです。「ばっちいよ」などと教えても、「汚いからダメなんだ」とは理解できません。「今はなんでも舐めて確認する時期なんだ」と受け止めておおらかに付き合いましょう。

汚いものや危ないものを舐めようとする場合は、言葉で止めるよりも、抱っこして場を変えたり、別の遊びに誘ったりして気分を変えてあげるといいでしょう。

ナゾ7:ボタンを押す・穴にものを詰める

目的不明なミッション

  • 娘は散歩中に自動販売機を見つけると、すべてのボタンを押すまで気が済みません[1歳]
  • 娘は隙間や穴があれば必ず埋めます。おままごとの小瓶にグミがぎっしり詰まっていたり、おもちゃのネジの凹みにエアガンの弾を詰めてみたり…[4歳]

なんでそうする?親はどうする?

縁石を歩きたくなるのと同じで、「ボタンがあれば押したくなる」「穴があったら入れたくなる」といった欲求が湧く子もいるようです。欲求があるのに禁止すると親に隠れてやるようになるので、危険でない限りは見守って、これ以上はダメとなったら、制止したり触れないようにしたりするといいでしょう。

耳や鼻の穴、コンセントなどにものを突っ込む事故は乳幼児期に多いので特に注意してください。

ナゾ8:同じことを繰り返す

飽きないのがスゴイ!

  • 砂遊びでプリンの型抜きにハマったわが子。100個以上作っていました[3歳]
  • 自転車のペダルをぐるぐる永遠に回します[1歳]

なんでそうする?親はどうする?

大人には単調な繰り返しに見えますが、これはとても素晴らしい行動。興味があることを何度も繰り返す中でいろいろなことに気付き、学んでいるのです。同じことを繰り返して「同じだ」と納得したり、少し違うことが起こると「違う」と気付いたり。

何かを理解したり獲得したりしている大切な時間なので、ぜひやりたいようにやらせてあげてください。親が飽きたからと中断させるのは、もったいないですよ。

宮里先生からメッセージ

ナゾ行動は大事な学び。笑ったり驚いたりしながら見守って

子どものナゾ行動は、誰かに命令されたり教わったりして始まるものではありません。自分から自然にやり始めるということは、成長過程として何らかの意義があるということ。ほとんどのナゾ行動は、大事な学びや成長につながるものなのです。

だからナゾ行動は危険でない限り、肩の力を抜いて、笑ったり驚いたりしながら見守るのがおすすめ。毎日忙しいとついイラッとしてしまうこともありますが、子どもがナゾ行動をする期間はとても短いので、「今はこれがマイブームなのね」とおもしろがれるといいですね。

※この記事は、2021年10月発行の「ぎゅって11月号首都圏版」に掲載した記事を再編集したものです

イラスト/なかきはらあきこ