読者アンケートで多かった上位5つのお悩みに太田先生が解決方法をアドバイス。楽しく食べられるように、食事の環境作りや関わり方を工夫していきましょう。

※2021/9/14~10/8ぎゅって読者アンケート。有効回答数585

教えてくれたのは

太田百合子さん

管理栄養士。東洋大学などの非常勤講師、指導者や保護者向け講習会講師、Eテレ「すくすく子育て」出演など多方面で活躍中。日本小児保健協会栄養委員や日本食育学会代議員も務める。「子どもの食と栄養 保育現場で活かせる食の基本」(羊土社)他、著書多数。

1位:食事に集中できない

困ったことがある人…46.9%

  • 集中しやすい環境を整える
  • 子どもの興味は移りやすいので、食事だけに集中できる環境を整えて。おもちゃは片付け、テレビを消して、親のスマホいじりも控えましょう。

  • 食事前のルーティーンを決める
  • 「ごはんだよ」と言われたら、おもちゃを片付け、手を洗って、席に着いて…と一連の流れを決めると、食事に向けて集中力が高まります。

  • 集中力が切れたら切り上げてOK
  • 子どもの集中力は15分から長くて30分程度。それ以上粘ると親子とも疲れるので切り上げて。おなかがすけば次の食事でたくさん食べますよ。

  • 「遊び食べ」は少しは必要
  • 1~2歳に多い遊び食べは、集中力がないのではなく、食への好奇心の現れです。発達にはとても大切なので、少し見守ってあげて。

    2位:食べるのが遅い

    困ったことがある人…43.1%

    • そしゃく力に合わせた調理に
    • ある程度食事ができるようになると忘れてしまいがちですが、子どもの奥歯が生えそろうのは2歳半~3歳半。それまでは奥歯でしっかり噛むことができません。その後、少しずつそしゃく力がついて、小学校に上がるころに、大人とほぼ同じ調理で食べられるようになります。乳幼児期はその子にとって食べやすい硬さや食感にしましょう。

    • 「かむとどんな音がする?」など、楽しく促す
    • 3歳くらいからはおしゃべりに夢中になって、食べるのが遅くなることも。「よくかんで」ではおもしろくないので、「これ、かむとどんな音がする?」とクイズを出すなどして、楽しくそしゃくを促しましょう。

      3位:好き嫌いが激しい

      困ったことがある人…37.4%

      • ポジティブに受け止める
      • 子どもが好き嫌いを言えるということは、親子の信頼関係ができている証。「味覚が発達してきて、自分の好みや意見が言えるようになったのね」とポジティブに受け止めましょう。栄養はほかの食材で補えばOK。

      • 苦手なものの“経験値”を増やす
      • 苦手なものでも、お手伝いで触れたり、絵本で見たり、野菜なら家庭で育てたりしてみましょう。子どもが苦手なものでも食卓に出して、親がおいしそうに食べて見せることも大切です。そうした経験値が増えると、いずれ食べられるようになる可能性大。長い目で見守りましょう。

        4位:メニューのレパートリーが少ない

        困ったことがある人…36.5%

        • 味変で料理のバリエーションを増やす
        • 子どもが好き嫌いを言えるということは、親子の信頼関係ができている証。「味覚が発達してきて、自分の好みや意見が言えるようになったのね」とポジティブに受け止めましょう。栄養はほかの食材で補えばOK。

        • 基本は一汁二菜で考える
        • 献立は主食・主菜・副菜・汁物を基本に。夕食は、朝や昼に食べていない食材や調理法にすると栄養バランスが整います。焼きそばやラーメンなど一品料理のときは具を多めにして、ヨーグルトや果物を添えてみて。

          5位:よくこぼす

          困ったことがある人…30.4%

          • こぼしてもいいように準備する
          • 手づかみ食べの時期は、こぼしてもいいようにシートを敷くなどして。こぼさないようにと親が食べさせていると手や口の機能が発達しません。

          • 正しい姿勢で座れるように環境を整える
          • テーブルやイスの高さが合っていないと、姿勢が崩れてこぼす原因に。テーブルは胸の下、足はブラブラせず足裏がついた状態にしましょう。

          • 幼児用の食器を使う
          • 自分で食べるようになったら幼児用の食器を使って。ふちが立ち上がっていない平皿や、握りにくいスプーンだとこぼしやすくなります。

            太田先生からメッセージ

            「家庭の食事は楽しく」を心がけて。食への興味や意欲を育てましょう

            保護者の方は「食事は残してもいいから楽しい時間にしましょう」と言われても、栄養不足を心配するかもしれません。しかし、栄養が大切だからと苦手なものも無理強いしては、子どもの食べたい意欲が損なわれてしまうかもしれません。子どもにとって一番大切なのは、毎日を楽しく過ごすこと。そのためには日中に思い切り遊ぶためのエネルギーが必要ですから、朝食を一緒にとることを大切にしてほしいと思います。

            朝食は最初から理想的な食事を求めず、バナナやおにぎりなどの簡単なものから始めて大丈夫。根気よく進めて習慣付けていきましょう。 現代の給食で大切にしているのは、食に興味や意欲を持たせること。残さず食べさせることよりも、自分の食欲に合わせて食べられる量を判断し、取り分けができることを目指しています。年齢と共に食のバランスのとり方も覚えていくでしょう。
             
            保育園では一人ひとりの発達に合わせた食事の提供や食育を行っているので、家庭でも参考にしてくださいね。

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            食べきれなくても、好き嫌いが多くても…。食事は”楽しい”が一番大事!

            ※この記事は、2021年12月発行の「ぎゅって12月号首都圏版」に掲載した記事を再編集したものです

            イラスト/上路ナオ子