さまざまな分野でグローバル化が進み、「子どもをバイリンガルに育てたい」「バイリンガルとまではいかなくても英語が話せるようになってほしい」と、子どもが小さいうちから英語に触れる機会を意識して作るなど、バイリンガル育児を行う家庭も増えています。

「子どもは英語の環境にいれば自然にすぐ英語は身につく」は本当?

夫の海外赴任に伴い、引っ越した先はアメリカの田舎町。ある日突然バイリンガル育児環境に放りこまれました。

「子どもだから英語の環境にいれば自然に英語はすぐ身につく」とはよく聞く話。でもそれは、本当のようで、本当ではないと思っています。その環境に入ったのはいつからか、子どもの年齢も大きく影響しますし、子どもの性格も大きく影響します。

英語のハードルを越えるまで

平日アメリカの公立小学校(いわゆる“現地校”と呼ばれる学校)に通うわが家の子どもたち。比較的低年齢で英語環境に放り込まれたものの、大なり小なり、何かと苦労はありました。そして1年がたち、2年がたち、子どもたちの学校の成績も現地の子ども並みになり、今では英語のハードルはすっかりなくなりました。

アメリカの公立小学校では英語で学んで理解しているので、日本語でわからない言葉も英語の単語を言えばすっと理解できたり、また、子どもたちが何かを考えているときに、英語で考えているなー、と思うことも多くなりました。

娘の場合は、大好きだと心から思える友達に恵まれたのが大きかったと思います。息子は、あたって砕け、あたって砕け、で乗り越えてきた感があります。

子育てしているときの感覚そのものできっかけとか瞬間とかと言うよりも、不安や焦りを抱えながら、日々無我夢中で駆け抜けてきて、ある日、ふと振り返ってみると「あっこの子たち、ちゃんとできるようになってたよ」と気づく。いつの間にか、子どもたちは英語のハードルを越えていました。

アメリカの公立小学校の一日

さて、そんな子どもたち、アメリカの公立小学校ではアメリカ人の同級生たちと(とは言え、通っている子どもたちは多国籍!)どんな一日を過ごしているのでしょうか。日本の小学生の一日と似ているかな? 違っているかな? さあ、のぞいてみましょう!

スクールバスに乗って登校です

7:15

学校の玄関が開きます。でもまだ教室には入れません。
子どもたちはメインホールに座って学年ごとに待機するか、カフェテリアに行って朝食を食べます(時間は7:15~7:50、無料)。

7:25

学年の先生がメインホールに子どもたちを迎えに来るので、子どもたちは先生に連れられ自分たちの教室前の廊下に移動します。再びそこで座って待機します。

7:45

教室の扉が開き、子どもたちは先生に挨拶をして教室の中に入ります。

クラス内のお約束

8:00

各教室内に設置されているスクリーンに朝のテレビ放送が映し出されます。放送委員より、今日の連絡事項、カフェテリアのランチメニュー紹介、誕生日を迎える先生の紹介などがあります。

この時間に遅れると、遅刻扱いとなります。遅刻した生徒はフロントオフィスで手続きをしてから教室に入ります。

授業時間

国語、算数、理科、社会、それから、体育、美術、音楽の授業も毎週あります。

ランチタイム

10:20~13:10までカフェテリアがランチで再びオープンします。学年ごと、クラスごとに決められた時間になると、子どもたちは一列になってカフェテリアへ移動、昼食を食べます。

家からお弁当を持参した子どもたちは、お弁当入れを持ってカフェテリアに行き食べます。カフェテリアでランチを買う子どもたちは、トレーを持ち列に並んで、欲しいものを言ってよそってもらい、最後にレジで支払いをします(料金2.40ドル)。

支払いは現金でもチェックでもOK。またオンラインで事前に入金してある子は、レジで暗唱番号を入力して支払い完了です。

金曜日は子どもたちに大人気のチーズピザの日

昼食の時間は20分と決められています。食事をしながらおしゃべりをしていい時間、静かに黙って食事をしなければいけない時間が決まっています。

ある日のお弁当1
ある日のお弁当2

授業時間

途中、中休みがあり、天気がいい日はグラウンドに出て遊びます。

14:00

早退時間終了。これ以降の時間に早退することはできません。ちなみに早退する場合は事前に書類を提出して、当日、オフィスで子どもを呼び出してもらいます。身分証明書と書類にサインが必要です。

14:25

子どもたちは荷物を自分のリュックにまとめ、帰り支度完了。帰りの放送が流れます。

14:30

下校開始。子どもたちは、スクールバスやお迎えの車、放課後学校のバスなどに乗って下校します。この時間になると学校の周りはお迎えの車の列で毎日大渋滞になります。(学校周辺は登下校の時間帯は“スクールアワー”と呼ばれる特別な速度制限があります)

日本とアメリカの小学校生活の違い

  • 子どもたちは教室の掃除をしない(掃除をする人を雇っている)
  • お昼ご飯は教室ではなくカフェテリアで食べる
  • ランドセルではなくバックパックか手で引っ張るキャリーバッグ
  • 学校で必要な文具類は学年初めに1年分持参するし、教科書も持ち帰らないので、持ち物が軽い
  • 教科書は個人に支給されるのではなく、1年間レンタルされる(だから持ち帰らせない?)
  • 中休みは全学年一斉ではなくクラスごと移動、時間も違う。学年ごとにプレイグランドが別になっている(置いてある遊具も違う)
  • 先生へ商品券などといったギフトを渡す習慣がある(先生の誕生日プレゼント、クリスマスプレゼント、学年末のお礼など)
  • 義務教育だけど留年する子もときどきいる
  • 寄付集めが本当に盛ん
  • PTAや先生の授業の手伝いなど親のボランティアも盛ん

などなど。こうして比べてみるとなかなか興味深いですね。

シーズンギフトはいつもお世話になっているバスドライバーさんたちにも

バイリンガル育児に思うこと

海外で暮らす家庭だけでなく、国際結婚をされた家庭でも同じだと思うのですが、バイリンガル育児=どちらの言語も母国語レベルで使えるようにしていく育児は、そうそう簡単ではないなと心底実感しています。

子どもたちは英語の環境にある程度慣れてくると、今度は日本語で考えたり話したりするより英語の方がずっと楽になってくるんです。

平日学校では完全に英語なので、家では日本語と決めているのですが、それでもやっぱり子どもたちの日本語の語彙力が年齢相応ではないなと感じることが多いです。そのため、通信教育のほか、土曜日には日本語補習校に通い、年齢相応の日本語へと伸ばしていくために毎日の努力は欠かせません。

私は「親同士のお付き合い」がとっても苦手なタイプなので、かなりさぼり気味です(苦笑)。でも、日本語補習校に関して言えば、保護者の手で作り上げている学校でもあるので、クラス委員をしたり、ボランティア活動にも積極的に参加しています。

自分と同じように外国人としてアメリカで子育てしている友達と気持ちを分かち合ったり、アメリカ人の先輩ママから、アメリカではこんな感じなのよと教えてもらったり、少し先を見据えた貴重なアドバイスをもらうことも。本当にありがたい存在です。

私はバイリンガル教育やバイリンガル育児に賛成です。言葉は「道具」であり、英語という道具をもう一つ持つことで、ぐっと子どもの世界が大きく広がると思うからです。

だけど、子どもたちが今こうして英語が身についたからといって、バイリンガルだというわけではないとも思っています。母国語の日本語もしっかり維持し、年齢相応のレベルにしていくこと、それができて初めてバイリンガル育児と言えるのではないでしょうか。

この記事を書いたライター

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大河内えりなさん

夫・娘9歳・息子7歳。小さい頃からずーっと転勤族。高知、千葉、札幌、神奈川、イギリス、再び神奈川。名古屋、タイ、東京、千葉、次はアメリカへ!

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