家事に子育て、仕事…。目が回るほど忙しい毎日も、労いや気遣いの一言で報われたり、ちょっとした気分転換でまた頑張ろうという気持ちになれたりするものですよね。身近なプチ贅沢で気分転換、いつもより少しゴージャスなご褒美パンはいかがでしょうか?

File 9. 乃木坂「VIKING BAKERY F」

高級食パンのブームが続いています。継続しているばかりではなく、ますます勢いを増しているようにすら感じます。

パン屋さんの中には定番に加えてスペシャル食パンを作るところも出ていますし、大都市を中心に専門店が増加するなどその勢いは留まるところを知りません。

2017年10月にオープンした「VIKING BAKERY F(ヴァイキングベーカリーエフ)」も食パン専門店です。開店から4カ月の新店ですが、私の中ではすでに大きな存在感のあるお店です。

研修先のサンフランシスコで感じたものを具現化。独特の世界観がある外観

東京メトロ千代田線乃木坂駅から徒歩2分、国立新美術館や乃木会館など人々が集う施設にも近く、人通りが絶えることのない道沿いであるという好立地に加えて、私を魅了しているのはココです。

  1. 「食パン」を売るだけじゃない、「パンを楽しむ生活」を売る店
  2. 種類豊富、こだわり食パン全10種
  3. 外観、内装、サービス。商品以外も魅力的

パンを通したライフスタイルの提案

「VIKING BAKERY F」を運営する、株式会社nigiruの原点は“美味しいサンドイッチ”作りでした。

食パンブームと並行しておきているサンドイッチブーム、そのサンドイッチ作りに欠かせないハムやチーズなどの食材を扱う会社を中心に“美味しいサンドイッチ”作りを目指して数社で設立したのが株式会社nigiruなのです。

連日SNSで“萌え断”、つまりこだわりの具材をこれでもかと詰め込んで作られたサンドイッチの美しい断面が注目を集める中で、設立メンバーが気になったのがパンの存在。

自分たちが作るサンドイッチは具材と同じかそれ以上にパンにこだわったものにしたい、だからこそ最初に食パンを極めよう、「VIKING BAKERY F」誕生にはこんな背景があったのです。

「プレーン」(2斤800円/税別)、小麦の香りや味わいが感じられる店の代表作です。

食パンを極める、それはつまり最大の消費機会である朝食を極めること。朝食として何を食べるか、だけではなく、食べる時間や準備する時間、どう食べるか考えて調理する時間…。

朝食をめぐる時間、空間を楽しく豊かなものとして過ごしてもらいたい、サンドイッチを出発点に膨らんだ想いを表しているのが「一日のはじまりをしあわせに」というテーマです。

いまやどこででも手に入るのにわざわざ専門店に出かけて朝食のために用意した美味しい食パンを、より美味しく食べられるとっておきのバターやオリーブオイル。パンに添えたい、サイフォンで1杯ずつ淹れた香り高いコーヒー。

「VIKING BAKERY F」で提供しているのは、「一日のはじまり」を「しあわせに」してくれるものばかり。

ここで売っているのは食パンと、食パンに良く合う食品や飲料ではなく、日々をより豊かにするライフスタイルなのです。

試行錯誤を重ねて完成、こだわりの食パン

しあわせな朝の食卓の真ん中にあるもの、それが店の主力商品である食パンです。だからこそ、原材料、配合、製法、全てにこだわって理想を追求しました。

店舗の契約から引き渡しまでの準備期間のうち約4カ月は、門前仲町に設けたラボでイメージ通りの「食感」、「味わい」、「香り」をもった食パンが出来上がるまで何度も試作を繰り返しました。

ラボではテスト販売も行い、消費者の反応も伺いながら出来上がったのが、現在レギュラー商品となっている10種の食パン達です。

整然と可動式のラックに並べられた食パンは、商品でありながら、店を彩るオブジェのようにも見えます。

最もシンプルな「プレーン」(800円/税別)と熊本産の雑穀を練り込んだ「シリアル」(850円/税別)は2斤(1本)での販売で、スライスも受けてはいません。

それは、気分や合わせるメニューなどによってパンの厚さも含めて様々な形でアレンジできるようにという配慮。つまり、食パンをどう食べようか、自分だけの「しあわせ」な時間をどう作ろうかと考えることから「一日」を「はじめ」てみませんか、というお店からの提案なのです。

いつもの食パンとして毎日の食卓に乗せて欲しいから、あえて日本人好みの甘めにはせず、小麦本来の香りと甘味や旨味などの味わいを堪能できるように仕上げたとのこと。トーストするとサクッとした軽い歯触りの後にもっちりしっとりとした口当たりが楽しめ、ふわりと香りがたちます。

10種のうち7種類は具材を練り込んだプチタイプ、「Petit 7FLAVOR」という名称で、1斤分をローフ型で焼き上げたものを半分にカットして販売されています。

アルコールの提供はしていないものの、「チーズ&ブラックペッパー」(410円/税別)、「竹すみ&ドライトマト」(500円/税別)、「オリーブ&オリーブオイル」(410円/税別)とワインが飲みたくなるようなメニューが半数を占めています。

「チーズ&ブラックペッパー」は卵サラダと、「竹すみ&ドライトマト」はクリームチーズと、「オリーブ&オリーブオイル」はルッコラ、生ハムと組み合わされています。

これらはサンドイッチとしても商品化されており、3種全てを集めた「VIKINGサンド」は食べ方の一例となるだけでなく、食パンの試食としてもおすすめです。

私が一番気に入ったのは「オリーブ&オリーブオイル」のサンドイッチ。オリーブの実とオイルで風味よく口当たりなめらかな食パンに、辛味と苦味のルッコラと塩味と旨みの生ハムが加わって、パン単体で味わうときの数倍の美味しさを感じさせてくれました。

ほかの4種はスイーツ系、「ガトーショコラ」(500円/税別)、「ほうじ茶&ホワイトチョコレート」(460円/税別)のチョコ系2種と、「シャンパン&ストロベリー」(460円/税別)、「ハニー&レモン」(460円/税別)のフルーツ系2種となっています。

「ほうじ茶&ホワイトチョコレート」(税抜460円)、焼くとより香ばしくなります!

注目の組み合わせは「ほうじ茶&ホワイトチョコレート」。ほうじ茶風味の生地の香りとほのかな苦味、そして大きな塊で練り込まれたホワイトチョコレートの軽やかな甘みのバランスが絶妙で、食べ始めると止まりません。

トーストするとより香りが立つことと、耳に溢れたチョコがカリッと焼けて食感がより加わることで、より美味しく感じました。

10種目は、サンフランシスコのご当地パン「サワーブレッド」。サンドイッチの研修で彼の地を訪れた際に口にした“美味しいサンドイッチ”が製造のきっかけだそうなので、将来的にはサワーブレッドを使ったサンドイッチが発売になる可能性は高そうです。

日本ではまだまだ認知度も低く、独特の酸味から好みが分かれることもあり、現状購入していくのは外国の方が多いそうですが、「VIKING BAKERY F」でサンドイッチを食べた人からハマって大流行、という未来がくるかもしれません。

見せて、魅せる、劇場型店舗

「VIKING BAKERY F」が外観写真を撮るのは、想像以上に大変でした。店先で足を止める方が想像以上に多かったからです。

注目を集める3つめのポイントはなんといってもこの外観を含めた店舗の造りと言えるでしょう。

「パン屋さんなんだ」という驚きの声をあげる人もたくさんいました。

さわやかさの中に温かみのあるレモンイエローのノーブルな外観からは食パン専門店とは想像できない人も多いことでしょう。まずそこで意外性に興味を惹かれます。

中に入ると販売スペースは打ちっぱなしの壁と自然木の建具や家具、黒のスチールラックでシックモダンにまとめられたオトナ空間。工房とは一部を除きガラスで仕切られていて、仕込みから焼成まで全ての工程を販売スペースから見ることが出来るようになっており、食べ手に作り手との一体感をもたらす効果も担っているのが特徴です。

抜群のセンスと演出効果、まさに劇場型といえる店舗は、まるで別世界、カワイイ、オシャレと、オープン以来SNSを頻繁に賑わせ続けています。

シェフの小池裕達さん、時にはサイフォンの前に立つことも…。

商品や店舗の素晴らしさとともに、お店のファンを作っているのがスタッフの皆さんのサービスです。

応対は、笑顔で丁寧。列が出来てもひとりひとりにしっかり向き合ってくれるので心地よく、待ち時間短縮のために工房から製造スタッフが接客フォローに出てきてくれるお客様想いの協力体制にも好感が持てます。

試しに買ってみたら美味しかったから、というのが2度目以上のお客様の口からよく出る言葉だそうですが、素敵な店舗デザインや気持ちの良い接客を受けた体験が、翌朝の食パンをより美味しく感じさせているに違いありません。

「VIKING BAKERY F」に食パンを買いに行くことから、「しあわせ」な「一日」を「はじめ」てみませんか。

店名 VIKING BAKERY F(ヴァイキングベーカリーエフ)
Webサイト https://www.vikingbakery.jp/
所在地 東京都港区青山1-23-10 第2吉田ビル1F
電話番号 03-6455-5977
営業時間 8:00~20:00
定休日 なし

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福地寧子さん パンコーディネーター

1日3食、年間1095食以上パンを食べ続けて四半世紀。そんな小麦まみれの生活の中で見つけたキラリと光るパン屋さんをご紹介します。

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