2018.03.04 / 2018.03.05
2児のパパ目線、そして新聞記者の目線で子育てや世の中の気になることを読み解く、高橋天地さんの「新聞記者パパのニュースな子育て」。今回は「子どもの映画館デビュー」について。また先日初の映画化が決定した「おかあさんといっしょ」についても。
執筆
- 高橋天地さん
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平成7年、慶應義塾大文学部独文学専攻を卒業後、産経新聞社へ入社。水戸支局、整理部、多摩支局、運動部などを経て、SANKEI EXPRESSで9年間映画取材に従事した後、文化部で生活班を担当。育児、ファッション、介護、医療、食事、マネーの取材に精力を注ぐ。平成29年10月1日より1年6カ月ぶりに映画担当となる。
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長女の映画館デビューは3歳から!初めて観た映画は
わが家の場合、一家そろっての映画館初体験は一昨年9月。作品はディズニーアニメ「ファインディング・ドリー」(2016年)だった。当時長女は3歳、次女は生後3カ月。映画鑑賞は長女へのプレゼントという意味合いがあった。
生まれて間もない次女にばかり注意を注ぎがちで、何かと寂しい思いをしながらも頑張っていた長女の“労”をねぎらいたかったのだ。長女は、自宅の寝室にクラゲのポスターを貼るほど海の生物が大好き。映画のチョイスに迷いはなかった。
親としては、静かに娘たちが鑑賞できるかが最大の気がかりだった。上映時間(1時間37分)の確認、騒いだときのバックアッププランとそのシミュレーションはもちろんのこと、出入りしやすく、かつ、大画面が見やすい座席を吟味したりと、事前準備にはあれこれと神経を使った。
「おかあさんといっしょ」がついに映画化へ!
日常を離れ、ちょっとおすましして特別な空間へ。しかし、そんな認識が覆されるような親子向けの映画が9月7日、全国で公開されると聞き、早速取材した。内容は、NHK Eテレの人気長寿番組「おかあさんといっしょ」を映画化したもので、タイトルは「おかあさんといっしょ はじめての大冒険」。

製作にあたる日活の高橋信一プロデューサーは
親子が映画館でスクリーンに向かって声を出したり、体を動かしたりして楽しめる体験型のファミリー映画を目指したい
と説明した。
映画化をめぐっては、番組内の人形劇「にこにこぷん」が1990年にアニメ映画化。本作のように、歌のお兄さんやお姉さんが歌と体操を披露し、アニメパートを挿入するなど、番組と遜色ない構成としたのは初の試みだ。
「おかあさんといっしょ」は昭和34年10月、2~4歳児を対象に始まった教育・音楽番組。視聴者の親子はテレビの前で歌のお兄さんやお姉さんと歌や体操を楽しめるなど、番組は世代を超えて人気を集めてきた。
映画では、歌のお兄さんとお姉さんたち(花田ゆういちろう、小野あつこ、小林よしひさ、上原りさ)がスタジオを飛び出して各地を冒険するという。
映画館で鑑賞する親子も4人の冒険に参加し、一緒に歌うなどの体験ができる。番組で人気の体操コーナー「ブンバ・ボーン!」や、人形劇「ガラピコぷ~」をアニメ化した作品も盛り込まれる。

内容の詳細は今後詰めるそうだが、高橋プロデューサーは
子どもたちにとって人生初の映画体験となる可能性が高い。いつまでも心に残る楽しい作品となるよう知恵を絞りたい
と力を込めていた。
子ども向け映画は大人も楽しめるストーリーに
ことに幼児の鑑賞者については、映画館はコンテンツを鑑賞する場から楽しいイベントに参加する場へ姿を変えているようだ。
長女の保育園の同級生は、公開早々、幼児に人気のアニメ映画「プリキュア」シリーズを鑑賞したそうだ。主人公の舞台あいさつで会場は大盛り上がり、上映中も、劇場で手渡されるライトを振って応援する子どもたちの楽しそうな声であふれたという。
ママ友さんによれば「前売り券に特典グッズがついて、別売りのおもちゃとセットで使えるようになってるから、映画を観に行く前におもちゃ本体もポチった(※ネットで購入すること)」のだそうだ。
幼児の映画鑑賞は保護者の同伴が大前提となるため1回あたりのコストも大きくなるが、同行した大人も一緒に楽しめる、しっかりしたストーリーになっているという。
「おかあさんといっしょ」の場合は、毎日同じ時間にやってくる、もはや「日常生活の一部」ともいえる慣れ親しんだ時間が大きなスクリーン上で展開され、参加する。それがどんな体験として子どもたちの心に刻まれるのかは、大変興味深いところだ。
映画館デビューしてみた感想は…。
さて、初めて映画館にすべりこんだ娘たち。あと少しでトイレトレーニングが完成しそうな長女にまたおむつをはかせることをちゅうちょし、不慣れなトレーニングパッドを使ったことが災いし、席に着くとすぐに違和感を訴えぐずぐず言い出した…。
あわてた妻が大荷物と生後3カ月の赤ちゃんを抱えてごそごそやっているうちに、なぜか父親たる自分まで買ったばかりのコーヒーを床にぶちまけるおまけ付きの波乱の幕開けとなった。
ちょっと早かったかな…。
うっすら後悔し始めたが、次第に長女に変化が現れた。以前からあこがれていた大きなバケツいっぱいのポップコーンを自分の手にもたせてやると、厚いクッションで底上げした座席に居心地よさげに収まり、深く腰掛けた。

モーションロゴのあと、日の光が差し込む水の中に大好きな「おさかな」が映し出されると、一瞬にしてソワソワした様子は消え、スクリーンを一心に見つめる瞳が映像を反射し、暗がりの中でキラキラと輝きはじめた。
繰り広げられる本物さながらの美しいCGの世界へと親子全員でどんどん引き込まれていく。まどろんでいた次女も、ゆらゆら光る水の底の映像をしばらく目で追い、また気持ちよさそうに目を閉じて寝息を立て始めた。
赤ちゃんにとっても、なにか特別な空間にいることが伝わった瞬間だったのかなと感じた。
4K、8K、ARやVR。技術がどんどん発達する中で、映画の楽しみ方も変わってくるだろう。家族で同じ1つの画面を見上げるのと、個々のゴーグルの中で繰り広げられる仮想現実に参加するのでは、体験や思い出としてどんな違いが生まれるのだろうか。
心温まるラストシーンと印象深いエンディング「Unforgettable」で、わが家初の映画鑑賞は幕を閉じた。ぐっすり眠った次女を抱き、神妙な面持ちで静かに母親に手を引かれる長女とともに、優しい気持ちで劇場を後にした。
どんな形であれ、心を動かす何かに出会える場所が映画館なのかもしれない
毎年世界中で次々生み出されるこんな特別な空間を人に知らせる仕事を少しだけ手伝っていることが、4人での映画鑑賞の後は改めてとてもうれしく、ありがたいことのように思えた。