/ 2018.08.02

スキンシップが大事なのは分かっているけれど、「ゆっくり時間が取れない」と悩んでいませんか? 難しく考えるより、今、ママの手で “ぎゅっ” と抱っこしてあげることが子どもに一番必要なことかもしれません。今回は抱っこのコツとパワーを紹介します。

お話を聞いたのは

帆足暁子さん( 臨床心理士 )

保育士資格・幼稚園教諭1級免許を持つ臨床心理士。ほあしこどもクリニック副院長。同院における育児相談・心理相談・保育相談に応じる傍ら、保健センターで虐待発生予防事業等に携わる。東京家政大学 非常勤講師。

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抱っこは生きる力の土台 苦境にも負けない子へ

今の働くママはみんな頑張り屋さん。家事に育児、仕事と毎日フル活動している中で「ママ、抱っこ~」の言葉があっても「忙しいから後で!」と言いたくなる場合もあるでしょう。

でも、乳幼児期の毎日の「抱っこ」ほど大切なものはありません。ママの“ぎゅっ”には想像を超えるパワーがあるのです。

この時期にしっかり抱っこされた子はママから安心感を得て、将来苦境に立ったときも強く生きていける子になります。安心感・信頼感は生きる力に直結し、ちょっとのことではへこたれない精神が育まれるのです。

また、ぐずったときの抱っこは、子どもの「どうしたら良いか分からない不安な気持ち」をママの肌で包み込むことにより、子どもは感情を落ち着かせる感覚をつかんでいきます。

高ぶった感情をママの抱っこで収めてあげるうちに、自分で感情コントロールをできるようになっていくのです。そして結果的には、ママにとっても育てやすい子になっていきます。

大事なのは時間ではなく、心の入れ方だった。最低でも1日2回! 「抱っこのコツ」

「抱っこは時間の長さが大事」と思っていませんか? 帆足先生に“愛情の伝わる抱っこのコツ”を教わりました。

[朝]【おはよう!】
朝の“ぎゅっ”は1日のスタートに欠かせない!

「ママお仕事でごめんね」ではなく、笑顔で目を合わせて「大好きな○○ちゃん、今日も楽しんでね」と抱っこしましょう。時間がないときは10秒だけでもOKです。

時には、子どもから「抱っこ」と言われる前にママの方から抱っこしてあげましょう。親から求められる抱っこは、愛されている自信につながります。

●先生からアドバイス

子どもはママが忙しいのを知っています。それでも抱っこしてくれたことが、心に刻まれていきます。

【ただいま!】
ただいまの“ぎゅっ”で張っていた気がほぐれる

子どもは子どもなりに保育園で気を張って生活しています。ママがただいまの“ぎゅっ”をすると、自然と笑顔になるもの。

お迎えの保育園内でするのがいいのですが、抱っこを恥ずかしがる子ならお家に帰ってから“ぎゅっ”をしてあげましょう。

【お風呂で】
肌の触れ合いを大切にして心もポカポカ

お風呂では肌と肌の触れ合いが心も温かくしてくれます。たくさん話さなくても、一緒にお風呂に入り、子どもの顔を見て笑顔で“ぎゅっ”とするだけで伝わるものがあるでしょう。

もちろん、一日にあったことをいろいろ聞いてあげるのもいいですね。

[夜]【おやすみ】
夜の“ぎゅっ”でその日のことをリセット!

子どもにとってうれしいのは、ママが自分をしっかり見て抱っこしてくれること。「おやすみ。いい夢を見てね」などと、優しく言葉を掛けてあげましょう。

スマホ片手や目をそらしながらの抱っこではダメです。しっかりと抱っこされて安心すれば、自然と眠くなってぐっすり眠れることでしょう。

●先生からアドバイス

心の込もった抱っこを最低でも朝晩の1日2回。子どもだけでなく、ママの気持ちもリセットされます。

子どもの“生きるチカラ”につながる「抱っこのパワー」

  • 愛情ホルモンのオキシトシンが分泌され、不安を静める
  • 人を信頼することができるようになる
  • 親子の情緒的な結び付きが強化され、生きる力となる
  • オキシトシン効果で親子ともに安心感を得られる
  • 自分の感情をコントロールできるようになる

赤ちゃんは「ママの温かい抱っこ」を五感で感じ取ります。その記憶は親子の情緒的な結び付きを強め、生きる力となります。

また、抱っこには愛情ホルモン「オキシトシン」の分泌を高める効果があり、親子を安心感で満たします。子どもが「抱っこによって安心できる」ことはとても重要で、思春期以降の人格形成にも大きくかかわります。

ママから「大好きな○○ちゃん、おいで」と言って抱っこし、愛されている自信を子どもに付けてあげるのも大切です。

抱っこを嫌がる子も少なからずいます

必ずしも全ての子が抱っこを喜ぶわけではありません。抱っこを嫌がる子も少なからずいます。

それは、その子の持つ性質だったり、これまで育ってきた環境だったりと、原因はさまざま。けれど、子どもの時期に「温かい親子関係を築けたかどうか」で、その子の生き方が大きく変わってしまうのです。

最初はしっくりこない抱っこでも、続けていればママも子どもも安心できるように変化していきます。気長に取り組んでいきましょう。

抱っこが苦手な子と向き合うママへ 心持ちアドバイス3つ!

  1. 子どもの嫌がらない抱っこを見つけよう
  2. 抱っこ大好きな子どもになるようチャレンジ
  3. 辛いときは専門家を頼ろう

※この記事は、2017年5月発行の「ぎゅって 6月号」に掲載した記事を再編集したものです