育児に家事、仕事で時間があっという間に過ぎていってしまう働くママの毎日。キャリアアップのためにもっと勉強したいのに時間がなくて悩んでいる、という相談者のお悩みに、5児の母であり医師として働く吉田穂波先生がお答えします。

questionキャリアアップのため資格取得したい。どうやって勉強時間を作ればいい?

資格取得のために勉強したいのですが、子どもが3人おり、家では家事をするだけで精一杯。なかなか自分のための時間を作れません。業務も忙しく、昼休みも仕事をしている状態です。

通勤中はインターネットで必要品を発注するなど、少しでも時間を効率よく使うようにしているのですが…。他のワーキングマザーのみなさんは、どのように勉強時間を作っているのでしょうか。

answer「タイム」ではなく「モチベーション」のマネジメントを。そして受援力を身につけて

回答者

吉田 穂波さん

神奈川県立保健福祉大学の准教授/産婦人科医/医学博士/公衆衛生修士。ドイツ、英国、日本での医療機関勤務などを経て、2008年夫と3人の子どもを連れてハーバード公衆衛生大学院入学し、2年間の留学生活を送る。4女1男の母。著書に『「時間がない!」から、なんでもできる(サンマーク出版)』ほか多数。> 東京ワーキングママ大学

まずはモチベーションマネジメントを!

ご相談内容を拝見し、「そうだよね、そう感じるよね!」と大きくうなずいてしまいました。私自身も、もうすぐ3人目が生まれるという頃(当時35歳でした)、同じジレンマを感じていました。そして、現状を打破しようとしてさまざまな本を読み漁った挙句、たどり着いたことがあります。

それはタイムマネジメントではなくモチベーションマネジメントが大事だということ。

モチベーションマネジメントとは、目的意識を見失わないよう自分の意識をコントロールし、やる気を維持する方法ともいえます。

「時間がない!」という状況の中だからこそ「できないといわれると、ますますやりたくなる」という人間の心理を利用するのです。

働くママが目標に向かってモチベーションアップする秘訣

秘訣その1.「なぜ○○を勉強したいのか」を、とことん考える

「現状維持だけでも精一杯なのに、これ以上向上するなんて無理」と思っても当たり前の状況です。それでも“なぜ〇〇にチャレンジしたいのか?”その理由を考えることで、心の底からやりたい気持ちがわき、原動力となります。

「見返してやりたい!」「もっと頑張りを認めて欲しい」というネガティブな気持ちでも構いません。そうした気持ちをチャレンジする原動力に昇華させればいいのです。

自分が毎日一番よく目にすると思われる手帳やスマホ、ポストイットに、自分がチャレンジする理由をメモしたりPC画面に貼り付けておいたりすると、それを見るたびに自分の初心を思い出すことでしょう。

そしてもうひとつ、周りの人と共有できるような自分がチャレンジする理由も考えてみます。

たとえば、夫にとっては自分の給料が上がって家計が潤う方が良い。子どもにとっては、私がイライラガミガミせず、イキイキ働いていた方が良い。会社のためにも、私がもっと仕事で貢献できる人になった方が良い、などです。

周りにいる人を巻き込むような理由も考えてみましょう。

秘訣その2.目標を達成する期日を決める

1年後に設定するよりも、6カ月後の受験だと思った方が、奮起しませんか?それまでに準備が整わなければ多少受験の時期を遅らせてもいいのです。

目標達成期日は、半年後、8カ月後など、そのときの自分の状態をイメージしやすい早めの時期がいいでしょう。

「いや~、そんな短時間で受験するなんて無理だ~」と怖気づきそうになったら秘訣その1.に戻ってやり直すといいかもしれません。

秘訣その3.達成するための必須条件を挙げ細分化する

試験のための問題集は基本的なもの2~3冊を選び、ページ数を見て秘訣その1.で決めた受験日で割り算をし、一日に何ページ進むか大まかに決めます。

1問解くのに2~3分かかるなら、自分の日常の中でその2~3分が手に入るところがいつなのかを探し、どうしたら予定通り進められるのかも細かく考えていきます。

2分間であっても、問題を解くためだけの時間を確保するなんて難しい!と思うかもしれません。でも、探してみると隙間時間は結構あるものですよ。信号の待ち時間、電車の乗り換え時間など、まずは探してみてください。

目標達成のための気持ちの基盤作りは「受援力」

そうはいっても予定通り進められないのが子育て中のママ。いろいろ詰め込みすぎて疲れてしまって頭も心もフラフラ…。とプレッシャーに押しつぶされそうになったら、「受援力」の出番です。

「受援力」とは、他者の援助を受け入れる能力をいうのですが、周りにいる人と共有できる目標や理由を話して、夫や身内に「休日2時間だけでいいから子どもたちを連れて外に出かけてきてもらえると助かる」と頼んでみます。

もし「保育園の送迎に必要な30分を勉強時間に充てられれば…。」「週に一日だけでも遅く帰れる日があれば…。」と思うのであれば、子どもの送迎を地域のシッターさんやヘルパーさんにお願いする、というアウトソーシングも賢い方法です。

職場でも「受援力」を

会社でも「この会社のためにもっと役立つ人材になりたいんです」「私が後輩たちを育てられるようになりたいんです」と話せば、おすすめの参考書や受験ノウハウを教えてくれる人が現れるかもしれません。

受験日直前には少し仕事を融通してくれるかもしれませんし、子どもが熱を出して早く帰らなくてはいけないというときも「看病しながら勉強します」と言えば理解を示してくれるかもしれません。

何より、人に助けてもらうことで何としてでも受かりたい、合格して報告したい、お礼を言おう、という気持ちが膨らみます。

こっそり受験するよりも多くの人と目標達成を分かち合う方が、大きなエネルギーが湧いてくるものです。そして誰かに助けてもらうことで、のちのち同じような状況で困っている人の存在に気付くことができ、誰かをサポートする側に回ることができます。

勉強している自分を誇りに思い、今の状況を楽しめるくらいの心の余裕を持ち、さらに周りの環境や人々を全て味方につけて、1ミリでも2ミリでも前に進んでいけますよう応援しています。