派遣社員として働くママからのお悩み「ワーキングマザーの転職」について。「40歳を前に転職したいけど、ワーキングマザーは採用には不利では?」という相談にキャリアコンサルタントとして女性の就労支援を行っている石倉和美さんが答えてくれました。

question派遣社員から正社員への転職を考えていますが、実際に転職をするのはかなり厳しいですか?

現在は派遣社員として、海運関係の会社で働いています。40歳前には正社員での転職を考えていますがアラフォーでの転職は厳しいでしょうか? 

どうすればワーキングマザーでも「魅力あり!」と採用者に思ってもらえるのか、どのようなスキルを持っていると有利なのか教えてください。

answer「正社員」だけでは安心できない時代。大切なのは「軸」を持つこと

答えてくれたのは

石倉和美さん

ポジティブトランジション代表。キャリアコンサルタント兼育休後アドバイザーとして、企業・行政向けに女性活躍推進、個人向けにも働く女性のキャリア支援・働きたい女性の就労支援を行う。また、滋賀県マザーズジョブステーションのキャリアカウンセラーや大学のキャリアプログラム講師としても勤務。> 東京ワーキングママ大学

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“VUCA”な時代。自律的なキャリア形成を

そもそも、ななぽんぽんさんは、なぜ正社員での転職を考えているのですか。

もし「定年までひとつの会社で働きたい」「安定した高いお給料がほしい」といった理由からということであれば、注意が必要かもしれません。

個人のキャリアを、会社に依存して形成するのは難しい時代です

今の時代は「VUCAな時代」と称されます。「Volatility(激動)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(不透明性)」の頭文字を付けた言葉です。

生産年齢人口の減少、終身雇用の崩壊、労働市場の流動化、グローバル化、会社そのものの存続自体いつどうなるか分からない中で、個人のキャリアを会社に依存して形成するのは難しくなってきています。

こんな時代だからこそ、肩書きや会社の規模など「自分の外側の環境」に振り回されず、確固たる「自分の内側にある価値観」を自分の「軸」にして、自分の意思を持って働くことが求められるのではないでしょうか。

自分の「軸」を見つけ、ポータブルスキルを身につけて

では、これからの時代の自律的なキャリア形成に欠かせないものは何か。それは、先にも書いた、

自分の内側にある“軸”です。

この「軸」は、自分自身が満足できる基準とも言えます。自分の「軸」を知ることで、自分自身の持ち味や、やりがいや意義を明確に把握し、将来のキャリアを探索することができます。

経験から「軸」を探してみる

今までの経験の中で、達成感の高かった仕事、没頭した仕事などを3つほど挙げてみましょう。たとえば以下のようにです。

  1. 各部門との書類のやりとりのムダを省くため新しい書式を提案
  2. 新規取引先の業務フロー構築を担当し、リーダーとして取りまとめた
  3. 取引先のために、独自の工夫をこらした提案書を作成したりプレゼンテーションをした

上記の3つからだと「自分で仕事の枠組みを決め自分のやり方で進めていくことが喜び」、つまり「自律」が「軸」となります。

まずは現職で「軸」を満たす方法がないか考えてみる

特定の業務だけを深堀りしていく事もできますが、「軸」の方向が事務処理速度を上げるだけになってしまっては、ともするとAI(Artificial Intelligence「人工知能」の略)にとって代わられる仕事かもしれません。そうした場合は、

“軸”を持ったまま横展開して考えてみることも必要です。

たとえば、自ら企画提案し課題を解決した経験を積む、マネジメントスキルを手に入れるなどの「ポータブルスキル」(特定の業種・職種に捉われない能力のこと)を獲得することは、AIにはできない「考動力」の領域。転職市場でもPRできるスキルです。

また「軸」の琴線に触れる勉強会への参加など、社外ネットワークの構築も大切です。学んだ内容を社内に還元することができますし、拡がった人脈は自分自身の大きな資産になります。

社内でのみ通用するスキルではなく、たとえ会社から放り出されたとしても自分の資産となるスキルを積極的に身につけましょう。

現職での機会は全て活用し「軸」を満たすためには「A社の正社員でしかできないあの仕事」という選択肢が浮上したら、いよいよ検討の時期が来たという事かもしれません。

子どもの成長に合わせてバランスをシフトする準備を

ななぽんぽんさんは、現在は時短勤務中とのこと。4歳と2歳では、まだ手のかかる子育て時期ゆえ焦りもあるのかもしれませんね。思うように仕事ができない場合もあるかもしれません。

そのようなときは、こう捉えてみてはどうでしょう。

子育ては人材育成

子育てをすることは、自分の中の「軸」を人材育成の領域に横展開しているのと同じなのです。子どもたちにも積極的に家事のお手伝いを任せるなど、子どもの自律を促す関わりを持ってみましょう。

こうした育児経験は、子どもにとっても良い経験になると同時に、今後仕事の場面で、人を育てるときに必ず役立つポータブルスキルとなるでしょう。

子どもの自律を促すことは、ご自身のスキルアップだけではなく、一人で抱え込まない環境づくりにつながり、子どもの成長に合わせて仕事へと向かうアクセルを踏んでいくための大切な準備になります。

まずは、自分の“軸”を自覚し、育児と仕事の両方でポータブルスキルを獲得してください。

そして、子どもの成長とともに自分らしいキャリアをつくるための準備をしておいてくださいね。