毎日忙しい働くママだからこそ、読んでほしい本 「『家事のしすぎ』が日本を滅ぼす」ほか、私たちの日常にちょっとしたヒントと、新しい視点をくれる本を3冊紹介します。通勤のお供にいかがでしょうか?

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もう家事に悩まないで!大義名分をくれる1冊

「丁寧な暮らし」「手づくりの食卓」「シンプルな部屋」。「アイタタタ…、耳が痛い!」というのは私だけではないはず。そもそも、なぜ「家事をきちんとしなきゃいけない」と思ってしまうの?そこにはちゃんと理由があるようです。

「『家事のしすぎ』が日本を滅ぼす」佐光紀子(光文社文庫)

日本の男性は家事をしない?

2016年3月の「ニューズウィーク」の記事によると、「日本は世界一“夫が家事をしない”国」だそうです。それは日本の男性は他国に比べると、1日あたり2時間半も長く働いている、という調査結果も関係しているかもしれません。

また、「子どもが完食できるお弁当を作るのは母親の責任」「学校から出た宿題を全部やらせるのは母親の仕事」と思わされている社会の構造に気付かされます。そうした「子どもの問題は母親の責任」という大前提は、実は昭和30年頃から国が先導してきたのでは、という考察はとても興味深いです。

驚きの海外の家事事情!

「世界一家事をしている時間が長い」と言われる日本の主婦。一方、東南アジア諸国では家の中に立派な台所がなく、食事は屋台でとることが多いそう。女性の管理職も多く、女性が食事を作るべき、という認識は日本ほどないようです。

また、海外では料理がおいしくなくても罪悪感を感じることはなく、「素材やレシピのせい」「塩を変えたせい」「自分の口に合うように調味料を足したらいい」「相手が料理が苦手なら一緒に作ればいい」など、なんとも寛大。

離乳食でも、「食べてくれないのは自分のせい」と気に病む日本人とは大違い。もっと肩の力を抜いてもいいのかも?

家事は誰もができないと困る

高齢者のみの世帯、あるいは一人暮らしの高齢者の増加、未婚男性の増加などにより、家事は誰にでも必要となる可能性大。年をとらなくても、妻や母にだってケガや病気、事故などの不測の事態は起こるもの。

だからこそ、誰もが簡単な食事を手早く作れる技術を身につけることが重要。また、ちょっと面倒なことでも最後まで自力でやることから、自立が始まります。手のあいたときに、作れる人が一汁一菜を準備する。

そんな家庭で育った子どもが増えたら、「家事は女性だけがするもの」という常識もなくなっていくのかもしれません。

激しく同意したくなる一言(あとがきより)

そろそろ、女は家事ができて当たり前という呪縛から、男も女も離れてもいいのではないだろうか。女が家事ができないことは恥ずかしいことでもなんでもない。できません、と言って誰かに手伝ってもらえれば、気持ちも体もずいぶん楽になるのではないだろうか。

「家事は女性が」「育児はやっぱりお母さん中心で」といった価値観は、日本文化の名のもとに形成されてきたようで、今でもなかなか崩れません。

子どもが学校でトラブルを起こせば、共働き家庭でもまず母の携帯が鳴り、保育園で熱を出したといえば「お母さん、お迎えに来てください」と連絡が来ます。そんな現状に疑問を持ったことのある、働く母親は多いはず!

最近、主婦向けの雑誌でも「家事をがんばらない」「やらなくていい家事」などの特集が目につくようになってきましたよね。

「家事をきちんとしなくては」と思いつめると、母親がつらくなるということ、また家事を母親だけがやっていると、いざというときに他の家族が困る、ということが「日本を滅ぼす」という強い表現になったのかなと思います。

ここで紹介したのは実は第1部のみで、第2部は「『片付けすぎ』が家族を壊す」と、こちらもまた興味深い内容です。気になる人は読んでみてください!

気分転換になるちょっとめずらしい育児本

巷には「いい子を育てる」育児本は山ほどあるけど、これはちょっと毛並みが違って「センスのいい子を育てる」本です。がんばりすぎず、でも愛情いっぱいの育児のヒントをくれる良書です。

「『センスのいい子』の育て方」宮崎祥子(双葉社)※現在新装版あり

一概に「センス」と言ってもいろいろ。たとえば、こんなものが紹介されています。

増えすぎても荷物にならない「言葉が豊かな人」

豊かな言葉のストック、そしてそれを自在に出し入れできる引き出しは、きっと一生の財産。ありがとう、ごめんなさいなどの「とっさのひと言」が自然と出る人、自分の「感情を言葉にできる」人。

誰にでも「ていねいに話せる」人、そして「自分の言葉を持っている」人。子どもには、そんな人になってほしいですよね。この項目では、最近特に気になる「英語と日本語のこと」にも触れられています。

大人になると、なにかと重宝「空気を読める人」

子どもは空気を読まない天才です。そもそも、小さければ小さいほど、読めというほうが無理な相談(笑)。

それでも、「場の空気を感じられる」人になるために、勇気を出して公共の場へ連れ出す必要があります。「静かなところではお静かに」というルールを学ばせ、「T.P.O.に合わせられる」ようにいろいろな体験をさせましょう。

まずはママがお手本になろう!「感じのいい人」

子連れで外出すると、ピリピリした空気を感じてしまうことが多いかも。だからこそ、こちらが感じのいい人であることを心掛けてみるのも大事です。子どもを持つ親同士は「おたがいさま」の視点を大切に。

「お先にどうぞ」は小さい子どもは苦手だから、親が行列や出入口でお手本を見せましょう。公共のお手洗いなどの「水場の使い方」や「ショッピングの場面で」のマナーも、繰り返し教えて身につけてほしいものですね。

この他にも、「きれいに食べる人」「コミュニケーション上手な人」「サバサバした人」「凛とした人」「品のある人」「日々を楽しめる人」など、見出しを並べるだけでも、子どもではなくて「むしろ自分がこんな人になりたい!」と思ってしまう項目ばかりです。

1つの項目につき、ほぼ1ページでまとめられ、かわいらしいイラストも添えられているので、読みやすく隙間時間にもぴったりですよ。

ちなみに、親がユーモアを持って真剣に対処する方法を説いたコラム「悪い子センター」ですが、わが家では「鬼派遣センター」でした。上の娘が小さいときに「もしもし?鬼さんですか?言うことを聞かない3歳の女の子を迎えに来てほしいのですが…」と電話をするフリをして、大泣きさせたものです。

「育児が少しでも楽になるきっかけになれば」という作者の想いが詰まったこちらの本は、多くの母親たちに支持され、共感を得てきました。2008年刊行で、現在は新装版が発売中です。プレゼントにもおすすめですよ。

はっとする一言(本文より)

「子どもなんだから仕方がない」というのは、他人だけが言っていいセリフで、当事者である親はまず、最大限に静かにさせる努力をするのがスジ。

「かわいそう」じゃない!施設の現実を小説で

舞台は、90人が暮らす児童養護施設「あしたの家」。新米職員の三田村慎平が、厳しくて頼りになる先輩たちに鍛えられ、自分の常識を超えながら奮闘します。「施設の子」に対する世間の偏見にさらされる子どもの、渾身の訴えが胸に響く1冊です。

「明日の子供たち」有川浩(幻冬舎文庫)

施設の子は「かわいそう」?

児童養護施設を取り上げた番組に感動し、転職して「あしたの家」の職員になった三田村。しかし、「問題のない子」であるはずの高校2年生、カナに嫌われてしまいます。理由は、三田村の「かわいそうな子どもの支えになりたい」という志望動機。

「わたしは施設に入ってほっとした。施設のことを知りもしない奴に、どうしてかわいそうなんて哀れまれなきゃいけないの」とカナ。一般的な児童養護施設のイメージと、事実とのギャップに気付かされる一幕です。

就職が当たり前、大学進学をためらう!

「勉強しながら給料もらえるのって魅力」と、防衛大進学を希望するヒサ。寮がある女子大への進学を希望するも、経済的な不安から迷っているカナ。「意識が高い子どもだけが進学するべきだ」というベテラン職員・猪俣の考えに反発する、三田村の指導職員・和泉。

しかし、猪俣にはかつて、進学を勧めた教え子が経済的理由で大学を中退後、行方不明になったという苦い経験があって…。

進学するのが当たり前になってきている世の中で、施設の子どもたちは高卒で就職を勧められるという現実。施設の子どもたちの「強いられた自立」に胸が痛みます。

子どもはみんな「明日の大人」!

冬休みにカナとヒサが出会ったのは、施設の子どもが集まってリラックスしたり、退所後にも宿泊したりできる「実家」のような場所「サロン・ド・日だまり」の運営者・真山。

子どもたちも気に入って利用していたこの場所が、県の予算削減の対象とされ、存続の危機に!なんとかしたいと知恵を絞る、職員たちと子どもたち。

一般企業の営業職経験者・三田村のアイデアを軸に、カナが「こどもフェスティバル」で講演することに。果たして、みんなの思いは届くのでしょうか?

聴衆に届いた一言

(カナが講演で、「児童養護の当事者には選挙権がないから、政治家も後回しにしてしまう」という事実を述べて)

確かに、わたしたちは今は子供です。でも、わたしたちは生きていれば、いつか必ず大人になるんです。「あしたの家」の子供たちは、明日の大人たちです。

小学生のときのヒサが、園長先生に「ご本を読むのは素敵なことよ。みんな、自分の人生は一回だけなのに、ご本を読んだら、本の中にいる人の人生もたくさん見せてもらえるでしょ」と言われるシーンがあります。

自分が知らない世界を知ることができる、それだけで本を読む意味があるんだな、と改めて気付かされました。

働く母親としては、他の子どもの環境にまで気を配る余裕はなかなかありませんが、虐待などのニュースを聞くたびに、痛ましくやりきれない思いになるのはみんな同じですよね。

子どもを育てる力が弱い親がいる、という事実。施設に入ることで、命が救われる子どもがいる、という事実。すべての子どもは明日の大人で、子どもを大切にすることは未来への投資。そう知ることで、いつか何かができるかもしれません。

「図書館戦争」「三匹のおっさん」「レインツリーの国」など、映像化されたものも多い有川浩作品。その人気の秘密は「わかりやすく、清々しい正しさ」にあると思います。この「明日の子供たち」も、連続ドラマ化してほしい!そして、多くの人に観てほしい!と願っています。

この記事を書いたライター

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ふみきさん

福岡出身、大阪在住のまあまあフリーなライターです。夫と娘2人の4人暮らし。趣味は本屋巡り&図書館通い。忙しいママにおすすめの本や漫画をご紹介します♪

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