家事に子育て、仕事…。目が回るほど忙しい毎日も、労いや気遣いの一言で報われたり、ちょっとした気分転換でまた頑張ろうという気持ちになれたりするものですよね。身近なプチ贅沢で気分転換、いつもより少しゴージャスなご褒美パンはいかがでしょうか?

File 14. 登戸「CEYLON」

あっという間に梅雨が明け、暑い暑い夏がやってきました。

食欲がなくなるこの時季は、私にとって特にパンしか食べなくなる季節です。わずかな食欲は本当に食べたいものに使いたい、というのがその理由です。

照りつける太陽の下で移動をするからには、目的地に“とがったパン”~つまり作り手にこだわりのあるパン~があって欲しいもの。なおかつ電車を降りてからの距離が短いことが、私にとって夏のパン屋さん訪問時の必須条件です。

そんな私の厳しい基準を難なくパスしてしまうのが向ヶ丘遊園駅近くにある「CEYLON」。他に類を見ないこだわりのシナモンロールのお店です。

開店前から列ができるため、営業時間前に撮影した外観

店名「CEYLON」はオーナーシェフの森麻里子(もり・まりこ)さんがほれこんだシナモンの産地、スリランカの「セイロン島」が由来。その類まれなる香りに私も驚きと感動を隠せませんでした。

開店時間に合わせて多くのお客さんが訪れ、日によっては1時間たらずで売り切れてしまうこともあるそうです。そんな「CEYLON」の魅力を突き詰めていくと、以下の3点に落ち着きました。

  1. とにかくシナモンがスゴイ、上品な香りと爽やかな後味
  2. バリエーションも豊富、また訪れたくなる魅力的なラインアップ
  3. ショーケース越しの対面販売だから伝わる、店主のシナモン愛

シナモンロールはシナモンを表現する「手段」

「CEYLON」はシナモンロールのお店であって、でもシナモンロールのお店ではありません。「CEYLON」はシナモンを売る店なのです。

確かに店頭に並ぶのはシナモンロール。ただし、それは店主の森さんが惚れこんだシナモンの素晴らしさを最も消費者に伝わりやすい表現方法として選んだのが「シナモンロール」だからなのです。

定期的に現地に赴いて、自らの目で選んだシナモンはこの店でシナモンロールにするだけでなく、シナモン自体で取引されることもあるそうです。いわば森さんはシナモンロール屋さんなのではなくシナモンの「伝道師」なのです。

通年商品のプレーン、ストレートにシナモンを味わいたい人はコレ!

シナモンと森さんの出合いは青年海外協力隊としてスリランカに滞在していたこと。2年の活動期間内にシナモンに触れ、ほれこんで、その普及に努めることを生涯の仕事として選ばれたのでした。

好きだからこそ、シナモン以外の要素にもこだわりがいっぱい。その中でも特筆すべきは、ひとつひとつを型に入れて焼き上げるキューブ型であること。

シナモンロールは丸めた生地を天板に並べて一度に多くを焼き上げるのが一般的な焼成方法です。失敗なくきれいに焼き上げられるという利点もあります。

生地を型に入れるという行為そのものがひと手間であり、型ピッタリに愛らしいキューブ型に仕上げるには生地の発酵の見極めが難しいので、ある意味リスクの高い方法とも言えるのです。

あえてそのカタチを選んだのは、特別な素材を使った特別なパンであることを分かりやすくするためだと森さんは言います。

「あなたのために作りました」という気持ちを伝えたい、全てをきちんと管理するため、製造量は1日100個が限界なのだそうです。

それゆえに最近では「幻のシナモンロール」と呼ばれることも…。

1人4個の購入制限ですがほとんどの方が4個買われるので、並んだ順番によっては手に入れられないこともあるようです。

スリランカの魅力や季節の移り変わりを伝えるメニュー展開

ベーグルやコッペパンのように生地に練り込む素材などでバリエーションが豊富であることを、シナモンロールに期待する人はそういないでしょう。

海外からシナモンロールの専門店が進出してきた際にも、大きさで大と小があっただけでした。

ところが、元はパティエという経歴を持つ森さんはシナモン以外にもあるスリランカの名産品を活かして常時7~8種類のバリエーション展開をしています。

例えば「カフェラテ」は、フローラル調の香りを漂わせる軽やかなスリランカのコーヒーを用いた生地に、自家製のカスタードクリームとシナモンと砂糖に加えて、少量のホワイトチョコレートを巻いた商品です。

ショーケースに並んだシナモンロール

「プレーン」よりも少し卵の量を多くしているというコーヒー風味の生地はしっとりして口どけも良く、上質なケーキを食べているのに近い満足感があります。

スリランカの天然甘味料「キトゥルハニー」がシナモンの香りを引き立て、コクを前面に押している「キトゥルハニー&トリプルナッツ」、味わうと確かにシナモンを濃密に感じ、また新しい魅力を発見させていただきました。

ぐるぐるがきれいに表れる断面、切ると香り立ちます。

セイロン島と言えば、の名産品の紅茶は商品作りに生かされるだけではなく、茶葉(リーフのみ)での販売もしています。

シナモンクッキーも人気の定番商品、パンは生鮮食品ですがクッキーは日持ちもするのでお土産にと選ばれる方も多いようです。

商品と会話で伝えるスリランカへの思い

製造だけでなく、販売も店主の森さんがひとりでこなします。

3人も入ったら狭く感じてしまうくらいのこぢんまりしたスペースのため、お客さんは順番に入店、ひとりひとりとショーケース越しに相対します。

商品ひとつひとつを丁寧に商品を説明する姿にも、スリランカ・セイロン島への愛が満ちあふれています。

穏やかで優しい語り口ですが、説得力のあるお話しに、ではそれもひとつと買い増した方も多いかもしれません。

店主の森麻里子さん、自慢の原料のシナモンを見せていただきました

天井にはご青い鳥が羽ばたき、窓辺には男の子と女の子が窓から外をのぞき込んでいる姿が描かれた店内。それぞれに物語があり、独特の温かい雰囲気を作っています。

窓から外を眺める幼い子どもたち、今日はどんなメニューなのかワクワクしているお客さん達を例えたようにも見えます

森さんの熱い思いがルートを作り、お店を作り、お客さんを呼んでいる。「好き」から始めたことが、こうして様々な人を巻き込んでいる一種の「奇跡」を目の当たりにした思いでした。

「好き」のエネルギーを受けて、元気になれるお店としてもおすすめです。

店名 CEYLON
ウェブサイト http://ceylon.jp/
所在地 神奈川県川崎市多摩区登戸1813
電話番号 044-911-9017
営業日時 火・水・金曜日 14:00~16:30(完売にて終了)
土曜日 11:00~14:00(完売にて終了)

/ 2018.08.07

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福地寧子さん ( パンコーディネーター )

1日3食、年間1095食以上パンを食べ続けて四半世紀。そんな小麦まみれの生活の中で見つけたキラリと光るパン屋さんをご紹介します。

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