モンテッソーリ教育において欠かせないキーワードである「敏感期」。3〜6歳の「感覚の敏感期」と呼ばれる時期にぴったりなおもちゃの作り方・遊び方をご紹介します。今回は「触感覚」を育てるのに適したおもちゃです。

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おうちで簡単!感覚おもちゃ「ママのポーチ」

3~6歳ごろは「視覚」「聴覚」「味覚」「嗅覚」「触覚」の5感覚に代表される「感覚器官」が最も敏感になる時期です。

今回は感覚のうち、特に「触覚」の興味を満たすおもちゃ、「ママのポーチ」をご紹介します。

材料

  • 小さめの巾着袋
  • 巾着袋の中に入れるもの(5~6個)

材料選びのポイント

今回のおもちゃは作る工程がありません。そのかわり、肝になるのはいかに適した材料を選ぶかという点です。以下を参考にしてください。

巾着袋について

中身の見えない色・素材で、中の物を手探りで探せる程度の大きさを選んでください。

「中をのぞかない」というルールなので、ひもの上部分の布が少し長めのものが理想的です。手触りが良いものを選びましょう。

以下、「ポーチ」と呼びます

ポーチの中身について

中に入れるものは子どもが知っているものでも知らないものでも構いません。

「洗濯バサミ」や「鍵」のように立体で、日常的なものを選ぶといいでしょう。以下を参考にしてみてください。

適するもの:

  • なるべく日常的なもので、名称や用途を説明できるもの
  • 立体的なもの
  • それぞれ形や素材が違うもの
  • 細かすぎないもの
  • 子どもが知っているものでも知らないものでもOK

適さないもの:

  • とがっているもの、触ると危険なもの
  • 紙切れや糸のように、触ってわかりやすい立体ではないもの
  • ミニカーや人形など子どもが特に好きなおもちゃ(子どもの注意がそちらに向いてしまいます)

中身の例

セット1:ブラシ、リップクリーム、鉛筆(下の写真は眉ペンシルを使っています)、手鏡、スポンジ、大きめのボタン、ヘアゴム、クリップ

リップは子どもが中身を口に入れないように注意してください

セット2:ブラシ、石、鍵、貝殻、くるみ、スプーン、糸巻き

そのほか、小さめのスーパーボール、電池、サイコロ、などもいいですね。

子どもと遊んでみよう!

遊び方には二段階あるので、ふたつに分けてご紹介します。

(1)中身の紹介をしよう

  1. ポーチを見せ、中を見ないで取り出すというルールを伝える

    「ママは中を見ないで出してみるよ」

  2. 大人がポーチに手を入れ、入っているものをひとつ取り出す

    中を見ずに手探りで探している様子をゆっくり見せてあげてください

    「何が入っているんだろうね?」
  3. 子どもに手渡しをして、触ってもらう
    「こんなのが入っていたよ」「知っているものかな?」

    そのものを知らない場合は、どんなときに使うものか簡単に伝え、名称を教えて発音してみます

  4. テーブルの上に置く

  5. 今度は子どもに中身をひとつ取り出してもらう

    「ひとつ出してみてね。」

  6. 取り出したものをテーブルに上に置く

    「こんなのが入っていたね」「知っているものかな?」

  7. 順に中身を取り出し、テーブルに並べていく

  8. 全て並べたら、ポーチが空になったことを子どもと確認する
  9. ものをひとつひとつ確認し、名称を紹介する
    「これは知ってる?」「そう、ブラシだよね」「こうやって髪の毛をとかすんだよね」など
  10. 子どもにひとつひとつ袋に戻してもらう

    このとき、ものの名称を言いながら戻してみましょう。

子どもは初めのうちポーチの中をのぞいてしまうことがあると思いますが、「のぞかないで!」と強く言う必要はありません。大人が中を見ずに取り出している様子を見て、自分でも同じようにやってみたくなるものです。

(1)の中身の紹介が終わったら、次の遊び方(2)を試してみます。ふたつは同じ日に続けて行う必要はありません。

子どもの興味に応じて(1)だけで終わっても構いません。別の日に(2)に進んでください。

(2)手でものを探す

  1. 大人がポーチからひとつ物を出す

  2. 子どもに渡し、触りながら確認してもらう

    「これは何だっけ」「そう、リップクリームだったよね」

  3. 物をポーチに戻す
  4. 子どもに手で同じものを探してもらう

    「おんなじの探せるかな?」

  5. 同じものを探せたら、「探せたね、いい手だね!」

    違うものを取り出してしまったら、もう一度!

  6. 次は子どもが取り出したものを大人が探す

触感覚だけで形の違いを認識することを繰り返してください。「何が入っているのかな?」というワクワク感は子どもの特別な楽しみになるはずです。

今回はテーブルの上を使って説明していますが、必ずしもテーブルの上でなくても構いません。

(1)の物の紹介のときには取り出した順に名称を紹介し、そのままポーチにしまっても構いませんし、ひざの上に乗せてもいいと思います。

場所に応じて臨機応変に楽しんでください。外出先で時間が余っているときにも楽しめますので、ぜひお試しください。ポーチの中身は時々替えてみると楽しいですよ。

モンテッソーリの感覚教具「秘密袋」

モンテッソーリ感覚教具「秘密袋」

今回のおもちゃのヒントになっているのは、私がずいぶん昔に海外の本屋さんで見つけた「Grandma’s Purse(おばあちゃんのハンドバッグ)」という知育玩具です。

ビロード素材でできた小さながま口式のハンドバックに、とてもオシャレで上品なおばあちゃまの身の回りの品が入っているというものです。

小さな手鏡やリップ、香水ビン、ブローチ、レースのハンカチなどオシャレに興味を持ち始めた女の子のワクワク感そのものを詰め込んだような憧れのバッグ。

そのコンセプトにすっかり魅了されてしまい、当時すでに「小さな女の子」ではなかった私も、つい購入したものでした。残念ながらそのバッグはもう手元にありませんが、子どもの「ワクワク」する気持ちは忘れずにいたいものですよね。

上の例ではごくシンプルな中身を選んでいますが、すてきな香水瓶などが手元にあれば、入れてみるといいと思います。

モンテッソーリが考案した感覚教具「秘密袋」にも子どもがワクワクする仕掛けが盛り込まれています。

二人が同じものを手に握って「見て見て、おんなじの探せた!」と得意げに

「秘密袋」は形や素材の異なる実物が6~8個入った巾着袋をふたつで構成されます。ふたつの袋の中身は全く同じもので、二人の子どもが手探りで同じものを探すという活動です。

触感覚により立体認識力を育成することを狙いにしていますが、子どもはそんなことは全く意識せず「中には何が入っているんだろう?」といつもキラキラした目で活動しています。

私の勤めている保育園「子供の家」では、袋の中身を季節ごとに入れ替えて子ども達のワクワクに応えるようにしています。

春は植物の種、秋になれば様々な形の木の実など。お正月には駒やおはじき、羽子板と羽根のミニチュアを入れるなどして様々な形や素材に触れる機会にするのもいいものですよ。

「感覚」への刺激に敏感になる時期

先にも述べたように、3~6歳ごろは「感覚器官」が最も敏感になる時期です。

ただ単に何かが「視界に入っている」、「見えている」という段階から、子どもが積極的に何かを「見よう」とする段階へと成長すれば「触ってみたい」「匂いを確かめてみたい」「口に入れてみたい」など、感覚的な刺激を求めるようになります。

自分の感覚で「体験」することによってものを理解していくのです。

ですから、子どもが家の中にあるものを次々に触ろうとするのはいたずら心でもなんでもなく、内なる強烈な欲求に突き動かされているのです。

「触覚」の興味を満たす「ポーチ遊び」を親子やきょうだいと一緒に楽しんでみてくださいね。

※子どもの「敏感期」については、拙著「子供の才能を伸ばす最高の方法モンテッソーリ・メソッド」でも詳しくご紹介しています。

この記事を書いたライター

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堀田はるなさん

モンテッソーリ原宿子供の家・モンテッソーリすみれが丘子供の家教員、保育士。アパレル業界、eコマース、金融など様々な業種でのマーケティング業務を経験後、教育の道へ転身。日本モンテッソーリ協会承認モンテッソーリ教員免許取得。著作「子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド」。

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