/ 2018.08.22

ネット広告でふと目にとまった漫画。軽い気持ちで読み始めたら止まらなくなりました。結婚って何?いい夫婦って何?一度結婚したら誰とも恋をせず、死ぬまでその人だけを見て、愛して、生きていくことが本当に幸福なのか?考えずにはいられない作品です。

テーマは「婚外恋愛」

渡辺ペコ「1122」(講談社)

主人公は35歳、フリーのウェブデザイナーいちこ。夫の「おとやん」とは友達のような関係で、互いを知り尽くし、言いたいことを言え、いたわりあえる関係。

自分でいうのもアレだけど わたしたちはたぶんけっこういい夫婦

しかし2人の間には特殊な取り決めがありました。それは「婚外恋愛許可制」。おとやんには習いごとのお花教室で出会った一児の母の恋人がおり、それをいちこが公認しているというちょっと特殊な夫婦なのです。

最初に読んだとき、私の第一印象は、

ええやん

でした。それを互いに良しとして傷つけ合わずに良い関係を築けているのならば、こんなに自由で楽しそうなことはないやん、と。

でもそう簡単にはいかないのが夫婦なんですよね~。自分が認めたはずの夫の婚外恋愛に、いちこは次第にモヤモヤとした感情を抱き始めます。

合理的だと思ったんだけどな――うちで生活 そとで恋愛 そんな豆まきみたいな…

おとやんの婚外恋愛について友達に相談するいちこ。友達のツッコミが笑えます(笑)。テーマや設定だけ見ると少しドロドロしているのかな?と構えがちですが、基本のタッチはあくまで軽妙。

笑える場面も多く、絵もきれいなのでとても読みやすい作品です。個人的にはいちこと友人たちの女子会?トークがとてもツボ。リアリティがあって笑えますよ。

もうひとつのテーマは「セックスレス」

本作のもう一つのテーマはずばり、セックスレス。いちことおとやんは友達みたいな関係ゆえ、長い間夫婦関係がありません。元はと言えばいちこがおとやんを拒んだことが原因で、それがおとやんの婚外恋愛にもつながっています。

そのことを一度は認めたはずのいちこも、恋愛に充実しているおとやんを見ているとモヤモヤしてきます。そらそうですよね。自分の夫がウキウキとよその女にときめいている姿を見せられたら。

自分で蒔いた種とはいえ、いや自分が蒔いた種だからこそ、相手を責められなくてしんどくなるような気がします。そこでいちこが見出した活路が、ああ…、これ以上は読んでほしい!(笑)

ふたりで決めた(わたし発案)公認不倫が しっくりこなくなったのはなぜなのか

1.浮かれている夫に対するムカつき
2.嫉妬
3.欲求不満

自分の心なのに 自分の身体なのに わからない(中略)でももし 夫も妻もそうなったら わたしたちが夫婦でいるのは何のため?

名言いっぱい「1122」

さらっと軽く読めるんだけど深いテーマを有した本作。思わず、

そうやねん…そうやねんわかるでいちこ…

となる名言もたっぷりです。ストーリーはぜひ読んで楽しんでほしいのでさわりの紹介だけで、あとは勝手に私の心に響いた名言たちを紹介します。どれか一つでも響いたらぜひ読んでみて下さい。

名言その1

おとやんはよく話を聞いてくれる方だと思う でもたぶんそれはお互い様だと それでもたまに 夜の海に向かって言葉を投げているような気持ちになることもある

わーかーるーーーー!私なんて毎日海に向かってますよ(笑)

名言その2

わたしたちはいびつな夫婦かもしれない でもそれでいい  自分で選んだ人と 自分たちのやり方で家族になるの

名言その3

外の恋はそのうち終わるものだけど 家の暮らしは未来へ続くものだから

名言その4

はたから見たらどんなにトンチキだろうと 我々は大真面目だったのだ

いちこの心の動きを見ていると、「夫婦関係って、やめることより続けることがよっぽど難しいよな」と思ったりします。果たしていちことおとやんは「自分たちのやり方」で夫婦の安寧を手に入れることができるのか。

2018年7月現在、全3巻の本作ですが、続く4巻ではさらに波乱が待ち受けているようで発売が待ち遠しいです。

この記事を書いたライター

ライター一覧 arrow-right
あら井さん

2歳差姉妹を命からがら育てています。逃避手段は読書とジャニーズ。今春から京都に引っ越すので、京都子連れ情報も発信したいと思っています。

あら井さんの記事一覧 v-right