冒頭からギュンギュン惹き込まれる!「ひみつのいもうと」

『これから、あたしだけしか知らないひみつを お話ししましょう。』

「ひみつ」って、ワクワクします。主人公バーブロの、とっておきのナイショ話が語られる、お人形さんみたいな口元。冒頭の一文目から、「なになに?」と思わず聞きたくなります。

2、3行目で「エッ?」。続く4、5、6行目で、ああ、もう、いちいち面白い。畳み掛けるように、ギュンギュン惹き込まれていきます。1ページ目を読み終わったところで、これ絶対おもしろいと確信。

そうだ、私、物語が大好きだったんだ。仕事やつまらない雑務に追われて、頭いっぱいにしてたけど、本当は物語に浸るのが大好きで、空想ばっかりしてたんだ。なんてことを思いながら、もう虜です。長らくファンタジー世界から遠ざかっていた私が、時空を超えて少女時代へ。

以来、ときどき手に取って、繰り返し音読したり、眺めたり。読み聞かせ用ではなく、自分のために読む、そんな一冊をご紹介します。

後から知った作者は「長くつ下のピッピ」を生んだアストリッド・リンドグレーン

絵本「ひみつのいもうと」(岩波書店 2016年2月25日発行 石井登志子訳)は、発行直後に、クレヨンハウスの定期配本サービスで入手しました。

てっきり、新作だと思いました。絵だって、ぶきみ可愛くて素敵。新進気鋭の、すごい作家さん、見つけた! そう思ったのに、なんと作者は「長くつ下のピッピ」を書いたアストリッド・リンドグレーン(1907-2002)でした。

見つけたも何も、世界中に知られている児童文学作家です。2002年に亡くなったのに、一体いつ書いたの? 幻の手記でも見つかった?!実は、落ち着いて確認すると、見開きページの裏にちゃんと記載がありました。

原題:Allrakäraste Syster(最愛の妹)1949年、リンドグレーン、42歳のときの作品。70年前です。絵本としてスウェーデンで初出版されたのは1973年。絵は出版当初から、ハンス・アーノルド(1925-2010)というイラストレーターによるもの。まさか、46年も前に描かれた絵とは。天才は、古くさくならないものなの?

それで、驚きついでに改めて「長くつ下のピッピ」を読み返してみました。通勤電車で読んで大失敗です。ブブブっと派手に吹き出してしまったから。あわててマスクを装着して、思いっきり大口開けて笑いながら読み耽りました。そして会社の最寄り駅を乗り過ごす、というね。

さらに、そんなことは、なんでもないさという気すらしてしまう、ピッピの罪深さ。強烈なキャラを、隣の家の兄妹の視点で語る巧みさ、無駄のなさ。子供時代にさほど面白いと思わなかったことまで、今なら全部、当時の感覚も含めて面白がれました。

ピッピの話はまた別の機会にするとして、そんな訳で、リンドグレーンの作品にハマっています。たとえ全部読み終えても、まだ日本語に翻訳されていないだけの、知られざる作品がたくさんあるのだと思うだけでワクワクします。

面白いけど怖い。楽しいけど不安。スウェーデン版、不思議の国のアリス

バラの茂みの真下にある穴を通って、ひみつの世界へ降りていく。「不思議の国のアリス」をモチーフにしたと思われる設定がいくつかあって、スウェーデン版アリスみたいです。

ただし、アリスが長編のように、ある程度ボリュームのある児童文学ならいざ知らず、このページ数の絵本で、ここまで世界観を広げたら、一体この先どうなるの? 夢落ちや、不幸なラストにだけはなりませんように。

大人なのでつい余計な心配をしてしまいます。イラストのせいなのか、楽しいけれどずっと不安がつきまとって、最後までハラハラ。ですが、大丈夫。最後は安心して眠れるようになっているので、子供にもプレゼントできます。

子供の頃って、楽しい、面白いだけじゃなく、寂しい気持ちや、不安な気持ちも持っています。そうした説明しにくい複雑な感情を、否定したり打ち消すのではなく、ちゃんと表現してくれています。

私には4才の息子がいて、突然、そこまで大泣きすること?っていうくらい、激しく、強く、訴えてくることがあります。不安な気持ち、伝わらないくやしさ、寂しさだったかもしれません。

普段の生活の中で、つい見逃したり、気づかなかったり、気づいてもそういうものだと流してしまったり。鈍感になっていることに気づかされます。だから、一番おススメしたいのは、ママです。

特に二人目が生まれたママに、上の子の不安な気持ちを、しっかり感じとってもらえるのではないでしょうか。面白くてせつない。そんな絵本です。

子供の不安な気持ちを教えてくれる、面白くて切ない絵本。忙しいママと、全ての女の子へ

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みずちさん

発達凸凹のある5才息子がいます。仕事を辞めて、幼稚園ママデビューいたしました。ゆるっと就活しながら、子育てや就学先について考えていきたいです。

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