
2022.02.03 / 2022.02.04
帰ったらまずは赤ちゃんの顔が見たい
まだ娘の絢ちゃんが生後6カ月くらいのときのことです。時刻は夜9時。仕事が終わり帰路につく。早く帰って絢ちゃんの顔が見たい。
「ただいま」音を立てないようにドアを開けます。きっと赤ちゃんはもう寝ています。
「おかえり」ママはシーっとしながら玄関まで近づいてきて小さな声で答えます。
赤ちゃんはやっぱりもう寝ている。予想通り。寝ているということは今日も1日平和に過ぎたということ。いいこと。これ以上のことはありません。だけど少し残念。僕はカバンを置いて、手を洗う。そして向かう先はもちろん、赤ちゃんの寝ている寝室です。
起こしてはいけない
じわっとドアノブを下げて、じわっとドアを開けます。もちろん起こすつもりはありません。ドアの隙間から光が入らないように体を入れます。光が大きくなるのに合わせて影も大きくなるように体の角度を変えながら慎重に。赤ちゃんの顔には絶対に光を入れないように。
そして寝室に入ると、慎重にドアを閉めます。体を変に動かして光が赤ちゃんの顔に当たらないように慎重に。そしてドアの閉める音で赤ちゃんが起きないように気をつけながら。
日本人だからこそできるニンジャ的な動作。僕は日本人であることに感謝します。これができなければ夜寝ている赤ちゃんの顔を見ることは許されないのです。世の中は辛くも実力主義なので。
赤ちゃんはスヤスヤ寝ていました。顔が見れてよかった。今日も1日無事だったことを僕は自分の目で確認して安堵します。赤ちゃんの頬に自分の頬を当ててスリスリします。赤ちゃんは深く眠っているので少々のことでは起きないので大丈夫。
ママが羨ましい
ママはこんな天使と1日中一緒に過ごしているのか。赤ちゃんの寝顔はほんとに天使です。当時の僕はママの苦労も知らずに、ただ羨ましく思っていました。
ママは「みてね」というアプリに毎日赤ちゃんの微笑ましい写真をあげてくれていて、僕はそれを仕事の合間に見るのが楽しみでした。今でもそれを楽しみに仕事をしています。
だけど、その毎日写真をアップするという行為が「子育てがただ楽しくて幸せなものである」と錯覚させていたのかもしれません。もちろん、僕の想像力が足りなかったというのが一番悪いです。
頑張って子育てして写真までアップしてくれているのに、苦労を分かってもらえないなんてホントにあのころのママが不憫です。でも多分、ほとんどのパパは想像力がないので世の中のママたちはお気をつけください。
今は、僕は寝ている赤ちゃんのほっぺたをスリスリしていて、もうそれだけで十分。のはずが、ママが今日1日思う存分この子と遊んだのかと思うと、だんだん物足りなくなってきます。
少しだけ起きてほしい
少しだけ起きて欲しい。僕の顔を見て笑って欲しい。僕の存在を確認してほしい。
「絢ちゃん、絢ちゃん」
気がついたら絢ちゃんに呼びかけていました。僕の手はほっぺたをプニプニしたりつねったりしていました。
睡眠中枢がまだまだ発達していない赤ちゃん。一瞬にして目を開けてくれます。そして何が起こっているのか分からないというような感じで天井をずっとキョロキョロ見つめています。
少し僕と目が合ってニコッと笑ってくれました。かわいい。起こしてよかった。これで僕は今日1日を終えられる。でも寝かしつけはできません。そのうち泣くかもしれません。すぐに焦る僕。
寛容なママ
「絢ちゃん、起きたかも」
一旦絢ちゃんを布団に横たえてリビングに戻り、僕の夕食の支度をしてくれているママに、あたかも赤ちゃんが自発的に目を覚ましたかのように報告します。
「うそ、やっと寝たところだったのに」
そう言ってママは、手を止めて赤ちゃんのところに向かいます。僕も後をついていきます。幸い、まだ絢ちゃんは泣いてはいません。でもこのままでは寝れそうにないのでママが抱っこします。さすがはママ。赤ちゃんは抱っこするとすぐに寝ました。
「すごい、一瞬で寝た」「やっぱり眠たいから目が醒めてももすぐに寝るのかな」「...それにしてもまだ睡眠中枢がちゃんと発達していないからすぐに目が醒めちゃうのか」
僕はあくまでも自分が起こしたのではなく、赤ちゃんが勝手に起きたという体を貫きます。
「そうだね」
ママは短く一言だけ。
「いやあ、それにしてもさすがはママ。おれにはできないよ」「夜はこれ以上目が醒めなかったらいいけどどうなるかな」「...でもやっぱかわいいよなあ」
罪悪感があってなおも色々喋る僕。
「絢ちゃんは夜中は意外とそんなに起きないからね。多分、2時ごろに1回起きるだけであとは寝てくれるんじゃないかな」
ママはさっきと違って丁寧に答えてくれました。
ママは僕が赤ちゃんを起こしたことに多分気づいている。でも丁寧に答えてくれました。気づかないふりをしつつ、丁寧に答えることで「今回のことは許すよ」と示してくれたのかもしれません。
ありがとう、ママ。
僕は心の中で感謝します。もう多くは喋りません。バレているから喋る必要がないし、許してもらえているから喋る必要がありませんでした。
その後は、帰宅後に赤ちゃん起こしたくなる誘惑に何とか打ち勝つパパでした。
となればよかったのですが、その後もしばらく寝室に忍び入っては赤ちゃんを起こし続けるのでした。赤ちゃんの魔力は恐ろしい。でもそれより、許してくれるママがもっと恐ろしい(今ではもちろんそんな愚かなことはしていません)。
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ゆう先生さん やっと気がつきました!ママの大変さ偉大さ
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僕は一児のパパです。うちでは妻が育休を取っていて、育児をメインでやっているのは妻です。妻は育児、夫は仕事、という古い形になってしまっています。そんな中で、僕も少しでも妻の力になれるように日々奮闘しているところです。
僕はいわゆるイクメンパパではありません。記事の中で父親失格なのではという行動も多々登場するかと思いますが、それを承知の上で書いています。もちろん記事は妻にも読んでもらっています。温かい目で読んでいただけると幸いです。