ママは朝からイライラ

「絢ちゃん、もう集中して食べてよ!」
「うえーん」
「立ち上がらないで!危ないから」
「うえーん」

今日も朝からママの怒号と絢ちゃんの泣き声が響いています。絢ちゃんはいつも朝とても早い。ママはそれに合わせて起きて朝ご飯を準備し食べさせています。

(朝早くから起こされてしんどいだろうなあ。しかも夜中も途中で起こされてたしなあ。)

絢ちゃんは朝早いだけではなく、夜中もしょっちゅう途中で目覚めて泣きます。おまけに寝入るのが苦手で落ち着くまでに時間がかかります。かと言って朝寝と昼寝をしっかりするわけでもありません。いわゆるショートスリーパーってやつなのかもしれません。

それに伴ってママも慢性的に寝不足になっていると思われます。ママはアピールしてこないけれど、睡眠時間は多く見積もっても夜は5時間くらいで、昼間もほとんど寝ていないようです。

僕はというと、朝がとても弱いので、夜中と朝の絢ちゃんのお世話は免除されています。それで昼間仕事ならいつ家事育児をしているんだというところなのですが、休日に絢ちゃんと買い物に行ったり、夜ママが寝かしつけしている間に掃除や皿洗いなどをしたりはしています。

「もういい!ご飯おしまい!」「お腹すいても知らんで!」絢ちゃんの朝食は強制終了となったようです。

(これはママ怒ってる。赤ちゃんやから怒ってもしょうがないのに。そろそろ起きないとな。)

僕は、重い瞼を擦りながらベッドを出ます。

(それにしても赤ちゃんに怒るなんてママは相当ストレスが溜まっているのかも。)

ダイニングルームに入る前に、顔を洗って歯磨きをして、寝癖を整えます。そして着替えも済ませます。2人の雰囲気が悪そうなので時間を稼ぎます。

そこまで機嫌悪くない?

「おはよう」ダイニングルームに入ると明るく声をかけられました。そこには意外にも機嫌の良さそうなママがいました。そういえばママは朝強いのです。絢ちゃんは何事もなかったかのように、おもちゃで遊んでいます。

(あれ、2人とも機嫌悪いんじゃ...?)

絢ちゃんは僕に気付くと笑顔で抱っこを求めてきました。

「絢ちゃん、パパおはようだね」ママも笑顔です。
(さっきまでの感じはなんだったんだろう。)

なにはともあれ、そこまで悪い雰囲気ではないので一安心です。
「いただきます」
僕は席について、準備された朝食を食べます。

「絢ちゃん、続き食べよか」
ママはそう言ってもう一度絢ちゃんをベビーチェアに乗せました。

「食べるじゃん!絢ちゃんえらいじゃん!」
ママの高気圧な掛け声が始まりました。そして絢ちゃんも気持ちを切り替えたのか、さっき食べなかったものを食べ始めているようです。

「絢ちゃん、おいしい?」
僕が尋ねると、こっちを向いて嬉しそうにします。

「よかったなー、絢ちゃん」
その笑顔が何よりです。

でも絢ちゃんはだんだんテンションが上がってきたせいか、ストローマグの水を口に含んで盛大に吐き出しました。
(あちゃー、やってしまった...)
「絢ちゃん!ブーしたらダメ」
ママは当然注意します。でもそれほど怒っている様子はありません。
(もうママは眠気も醒めて完全に機嫌が戻ってきたのかな。)

絢ちゃんは僕たちの反応を面白がって何度もストローマグの水を吐き出します。
「絢ちゃん、もうほんとにやめてよー」

それでもママは怒っている感じはありません。ストローマグは遠ざけつつも、笑ってよだれ掛けやテーブルに飛んだ水を拭いています。

絢ちゃんが危険な目に遭わないように

ちなみに僕は絢ちゃんには怒ったことがほとんどありません。それはダメとか注意したりはするけど、どこか半分他人事のような感じなのかもしれません。

「絢ちゃん、ちょっと落ち着いて」
絢ちゃんは尚も興奮して食べるどころではなくなってきました。

すると、突然がママが大きな声を出しました。
「絢ちゃん、もう危ないから!ホントにやめて!」
絢ちゃんは泣き出します。

なんだか、朝一番のときと似たような雰囲気になってきました。
「もういい、おしまい」
そう言って、絢ちゃんをベビーチェアから下ろします。

絢ちゃんは覚えたての一人歩きでスタスタ自由に歩き出しました。途中こけたりハイハイしながら目的の場所まで歩いて行きました。

(出勤の直前になってまた雰囲気悪くなっちゃったなあ...)「ごちそうさまでした」
僕は食器を台所に運んで、支度を整えます。

でも次の瞬間には、「絢ちゃん、今日は天気がいいから〇〇公園にお散歩にいこっかー」と言って、ママは一人で遊んでいた絢ちゃんの前でしゃがんで、同じ目線になって優しい表情をしていました。絢ちゃんも特にしょぼくれている様子はありません。

(ママは機嫌が悪いわけじゃなかったんだ。)

絢ちゃんが料理中にキッチンに入ってきたり、フォークの柄の部分をくわえながらヨチヨチ歩いているときも、ママは大きな声で怒っていたことを思い出します。今回は食事中にベビーチェアの上に立ち上がったことを怒って食事を中断しました。

(ママは機嫌が悪くて怒っているんじゃなくて、絢ちゃんが危ないことをしたときに怒るようにしているんだ。)

僕はようやく気付きました。ママは赤ちゃんを怒るとき、いつも急に怒り出す。さっきまで機嫌よかったじゃん、といつも思っていたけど機嫌は関係ないのです。機嫌ではなく、「この子が危険な目に遭わないように」怒っているということにやっと気付きました。

この必死さこそが母性?

とっさに赤ちゃんを怒るというのはなかなかできることではありません。僕だったらいざ危険なことが起こってから慌てることになり、「もっと強く叱っておくべきだった」と後悔することになりそうです。

赤ちゃんを危険から守らないといけないという危機感がママとパパとではまるで違うのではないか、と思うに至りました。

機嫌が悪いときに怒ることはあっても、そうでないときでも、危ないことが起こる可能性があるときは厳しく叱るというのは、簡単にできることではありません。

もちろん激流に入っていこうとするとか、そういう明らかに危険な行為があれば怒るかもしれないけれど、ベビーチェアに立つくらいのことで「落ちて頭を打ったりしたら危ない」から厳しく躾けておこうとするのって、なかなかできることではありません。その場の雰囲気を壊したくないし、赤ちゃんに嫌われたくないし。

母性とは子どもを守り育てようとする本能のことを言うそうです。この赤ちゃんに対する必死さこそが母性というものなのかな?とも思ったりします。

※絢ちゃんが1歳ごろのお話です

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ゆう先生さん やっと気がつきました!ママの大変さ偉大さ

僕は一児のパパです。うちでは妻が育休を取っていて、育児をメインでやっているのは妻です。妻は育児、夫は仕事、という古い形になってしまっています。そんな中で、僕も少しでも妻の力になれるように日々奮闘しているところです。
僕はいわゆるイクメンパパではありません。記事の中で父親失格なのではという行動も多々登場するかと思いますが、それを承知の上で書いています。もちろん記事は妻にも読んでもらっています。温かい目で読んでいただけると幸いです。

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