/ 2023.03.13

育休中にパラレルキャリアでぎゅってブロガー/ワーキングマザーの会運営をしている2児の母、うかたそです。衝撃的なニュースや痛ましい報道などをテレビで目にすると、「子どもにこの映像を見せてもいいのか?」と戸惑うことはありませんか。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって1年が経ちましたが、わが家の5歳年中の娘は、そういったニュースがテレビに映ると決まって「テレビ消して」「チャンネル変えて」と言います。母としても、子どもと報道との付き合い方をどうすべきか、そろそろ考えないといけないなぁと思い始めていたところでした。

育休中の母たちと、みんなで考えるワークショップを開催してみた

そんな背景もあり、私も育休中でゆっくり考える時間があることから、同じように育休中で「子どもと報道の関わらせ方」に関心がある母たちと議論をしてみようと思いました。参加者は、所属している育休コミュニティ「MIRAIS」の中で募り、Zoomを使って1時間ほどじっくりみんなで考えてみました。

会の進行は、「序盤にまず何かインプットがあった方がみんな考えやすいよね」という友人の意見から、NHK「週刊こどもニュース」のお父さん役だった池上彰さんの本をヒントに紐解いていくような構成にしました。

参考書籍はこちらです。「こどもにも分かるニュースを伝えたい ぼくの体験的報道論」池上彰(2005年)新潮社

子どもにニュースをどうやって分かるように伝える?

まずは、子どもにニュースをどうやって分かるように伝えるか、という観点から話をしていきました。古い本なので、時事の内容もだいぶ昔の話ですが、池上さんも子どもたちへの説明に苦心していたことが書かれていました。

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小泉内閣の福田官房長官が辞任したニュースでも、大人のニュースだと「福田官房長官が辞任しました」で済むが、「こどもニュース」だと「官房長官とは」という説明が必要になる。そうなると「官房長官」という職種をきちんと理解していないと説明できない。
「官房長官とは、内閣の大臣のひとりです。内閣のまとめ役で、総理大臣の仕事のお手伝いをしています。また、内閣がする仕事を国民に知らせる係でもあります」
こういう説明ができるかどうか。そのためには、日頃からニュースに登場する言葉への深い理解が必要になる。(P.202)
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また、池上さんは「こんなにむずかしいニュースは、子どもにはわかりっこないよ」とは決して言わないようにしていたとのこと。「これを子どもにわかってもらうためには、どんな工夫をすればいいんだろう」と考えることが大事で、そのように実践していた、と書かれていました。

それを読んで私は、「な〜んだ、鉄板メソッドなんてやっぱりないんだなぁ…」とちょっとがっかりしたのですが、でもそれと同時に、逆に私たちは、子どもから「調べ、自分の頭で考える」機会を与えてもらっているんじゃない?とも前向きに考えることができました。

子どもに理解してもらえるようになるためには、自分がそのニュースの背景からしっかり調べて頭に入れる必要があります。ニュースを説明できるようになれば、それは自分がきちんと分かっているということ。そうなれればしめたものです。

子どもがいなければちゃんとニュースのことを調べたり、考えたりしようと思うことはなかったかもしれないので、そういうチャンスを与えてもらえる母業って、ある意味ラッキーな仕事だなぁと思いました。

子どもは「王様は裸だ」と言ってくれる存在

また、本には、こんな記述もありました。

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「内閣改造」について番組で取り上げたときのこと。「内閣改造とは、総理大臣が、一緒に仕事をする大臣を入れ替えることです」という説明をすることにした。
このとき、子どもたちが、「内閣とは、どういう意味?」とか「大臣って、どうしてそんな名前なの?」とかいう質問をするのではないかと考えて、あらかじめ語義を調べておいた。事前の準備は万端。さあ、何でも聞いて。
・・・
「そんなに大臣を入れ替えて、仕事ができるの?」(P.204)
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まさにその通りで、そんなに大臣を入れ替えてばかりいたら、本業の政治の仕事はちゃんと進められません。池上さんも、番組の中では「そうだよね、でもこれでいけると総理が考えたから、大臣を入れ替えたんだよ」としか説明できなかったそうです。

大人の世界では暗黙の了解となっている「グレー」な部分も、子どもの純粋な視点で見たらやっぱり「おかしい」んですね。そんな子どもの視点に立ち帰ることができるので、やっぱり子どもの意見や考えを聞くことは面白いことだなぁと思えます。

子どもに悲惨なニュースはどう伝える?

さて、いよいよ本題です。私が特に自分の実体験として思い浮かぶのは、昨年の7月、安倍元首相が街頭演説中に銃撃された事件の映像を娘と見てしまったこと。思い出すだけで今でも胸がざわざわします。あの衝撃的な映像を、よりにもよって当時4歳だった娘と一緒に私は見てしまったのです。

あの日、テレビは何度も何度も、繰り返し銃撃の映像を流しました。私は何が起きているのか、安倍元首相は大丈夫なのか、何かこの事件のことをもっと分かる情報は入ってこないかと、ざわざわする胸をおさえて、夕飯の支度をしながらずっとテレビをつけっぱなしにしていました。

でもそのうち、「このショックな映像を娘に見せてはいけない」と、夕飯を食べている最中に、はっと我にかえり、テレビを消しました。テレビをつけるんじゃなかった、と、今となっては、後悔しかありません。幸い、娘の心には大きな傷は残っていなかったように思います。それ以来、夕飯の時間にニュースをつけることはやめました。

池上さんも苦悩していた。大阪教育大学付属池田小学校の事件。

この点についても、まずは池上さんの本をヒントに考えました。2001年6月8日、大阪教育大学付属池田小学校に男が乱入し、子どもたちを襲った事件を報道する際、その内容の扱い方について番組スタッフとかなり議論をしたとのことでした。

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スタッフも、こんないやな事件は扱いたくない。子どもたちに改めて伝えて、子どもたちの恐怖心を呼び覚ます必要があるのか、という意見だ。でも、それでは、「一週間に起きた日本と世界の大ニュースを子どもに伝える」という番組の趣旨に反する。なんらかの形で伝えなければならない。苦悩した挙句、私は、番組の冒頭で伝えることにする。
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結局、事件についてと、学校という場所のありかたについてふんわりと一般論を述べ、このニュースに関してはそれ以上の話はしなかったそうです。これについては、子どもの心理的な面も考えないといけないので、やはり、いちニュースキャスターである池上さんでも扱いかねるんだろうなぁと思いました。

子どもとの関わりのプロの意見も仰いでみた

子どもの心理的な側面でのアプローチといえば、保育士や小学校の先生はどうだろう。知り合いの保育士や先生をあたり、「このように子どもにショックなニュースを見せてしまったら、プロとしての立場ではどう思うか?」とインタビューしてみました。すると、やはり同じ子どもを扱う専門家だからか、ふたりの回答には共通点がありました。

【小学校教員の知人】
ショックなニュースに一切触れないというのは不可能。臭いものには蓋をするような対応では意味がないと思う。子ども達が容易に情報をアクセスできる環境にいるのも事実。

特に心への影響が強いと考えられるようなニュースを扱う場合、言葉を慎重に選びながら、先ずは自己開示することが多い。正直な思いを(辛い気持ちになった、不安な気持ちになった、受け入れ難い等)語ることで、子ども達にも自分の思いを口にしてもらえるよう心がけている。

【保育士の知人(母としての回答)】
恐怖心がついてしまうから、あまり怖い映像は見せない。たまたま見てしまったりしたら、「〇〇ちゃんはどんな気持ちになった?そうだよね、傷つけられたりしたら悲しいよね、ママも〇〇だと思う。」などと、Iメッセージで「私は悲しい、怒っている」などを伝える。

恐怖心を抱いたあとは安心感を与えられるように、ポジティブな雰囲気に変えられるような働きかけが必要。例えば、「お母さんがいつでも味方で守るからね、安心してね。〇〇くんはお母さんの大事っ子だからね。自分を大切にしてね。辛い時悲しい時困った時はママやパパ、近くの大人に言ってね。」など、前向きなコミュニケーションをとる。

このコメントで分かるように、ふたりとも「自己開示」や「Iメッセージ」という言葉を使い、「まずは大人である自分がどう感じたか」を子どもに伝える、ということを話してくれました。

痛ましいニュース映像を見てしまったとき、子どもにはその感情を上手に言語化する能力はまだありません。まずは私たち大人が率先して、「悲しい」「つらい」「怖い」という気持ちを言葉にし、子どもにもその気持ちを吐き出させるようにしてあげる工夫が必要なんだなと気づくことができました。

母同士で、思ったこと、気づいたことを共有して会は終了へ

その後、上記のインプットを受けて、みんながどう感じたかを少人数のグループごとに分かれてシェアしあい、それを全体に共有してもらい会は和やかに終了しました。全体にシェアしてもらった中で面白かったのは、母たちの性格・タイプによっても感じ方が違うということ。

・何か事件が起きたときに、問題点はその仕組みやシステムにあると考え、子どもと一緒に考えてみる
一方で、
・何か事件が起きたときに、その背景にいる人の気持ちに寄り添おうとする

同じニュースを見ても、母たちの切り取り方はそれぞれ。ロジック的な視点、感情的な視点、どちらも取り入れられるようになりたい、という声が参加者たちから寄せられました。

今夜、わが子とニュースについてどう話す?

せっかく勉強会を開催したので、記録に残しておきたいと思い、今回このようにぎゅってブログに書かせていただきました。このブログを読んでくださったあなたは、どう思いましたか?今夜、わが子とニュースについて、どんな話ができそうですか?

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この記事を書いたブロガー

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うかたそさん 育休を最大限に充実させる方法×手帳を使ったセルフコーチング研究中

フルタイム会社員。夫・5歳娘・1歳息子と都内で4人暮らし(2023年末)。好きなもの・ことは、旅行/手帳/語学のスキル磨き。「母になっても自分らしく生きる」「やりたいことを諦めない」がモットー。2022年11月に出産し、2024年3月までの育休の記録。

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