成長期に身につけたい能力として「非認知能力」という言葉をよく耳にします。リーダーシップや協調性など様々なものがありますが、加えて最近は「問いを立てる力」が注目されているようです。この力を育てるために大人ができる関わり方について解説します。

index目次

「問いを立てる力」ってなんでしょう?

よく「非認知能力」という言葉を耳にしますが、「非認知能力」とはいわゆる学力テストでは測ることのできない社会的スキルで、「リーダーシップ」「忍耐強さ」「困難を乗り越える力(レジリエンス)」「協調性」などがあります。加えて最近は「問いを立てる力」にも注目が集まっているようです。私も幼児の成長期に関わるモンテッソーリ教師として、このことについて問われることが増えてきたので自分なりに考えてみました。

ここでいう「問い」は、学校のテストのように「正解が用意されている」問題ではありません。世の中にはさまざまな社会課題があって、例えば少子化問題について考えるときに唯一の正しい答えはありません。そのかわりに人それぞれの「意見」があります。「問い」を持つことによって立場の異なる人の様々な意見が引き出され、社会をより良く変えるためにみんなで協力することができます。

とある人気漫画では、主人公が「僕は常々疑問に思っていたのですが…」と自説を語り出すシーンがお約束ですが、まずは身の回りの事柄に疑問を持つことが「問いの種」です。世の中で「あたりまえ」と考えられていることでも、見方を変えれば違って見えることもあります。時には「あたりまえ」を疑ってみることも、新たな視点を見つけるヒントになるかもしれません。

少し前置きが長くなりましたが、この「問いを立てる力」を幼児期から育てるために、大人はどのような関わり方をすればよいのでしょうか。具体的に解説します。

幼児はみな「問い」を持っている

問いを立てるには、まずは身の回りの不思議に気がつく必要があります。そこへいくと幼児は不思議を見つける天才です。「これはなに?」から始まって、「なんで?」「どうして?」と疑問だらけ、質問だらけです。

疑問を見つけたら、次は自分なりによく考えてみる必要があります。この部分は幼児1人では難しいので、大人がうまく助けてあげるとよいでしょう。子ども自身が考えるように接することが肝なので、むやみに答えを与えないようにしましょう。よかれと思って大人はつい教えすぎてしまいますが、残念ながら幼児は聞いたことを半分も覚えていません。そのかわり、自分で経験して学んだことはしっかり覚えます。だからこそ子ども自身に答えを見つけさせる働きかけをしましょう。

今から100年以上前にモンテッソーリ・メソッドを作ったマリア・モンテッソーリは、まさに「子どもが自分の意見を言えるように育てることが教育の役割」だと考えていました。そして子どもが自主的に物事を考えるように育てるには、どのように手伝うべきか研究を重ねました。「問いを立てる力」もまた、子どもが主体的に育ってこそ得られる力です。

主体性を育てるためにモンテッソーリ教師がしている工夫

私が保育の現場で子どもと接する時に、日々気をつけていることの中からいくつか具体的な例をあげてみます。

五感を使って感じることを優先する

言葉よりも感覚が敏感な幼児には、まず五感を使って感じることを優先します。子どもはなんでもすぐに質問しますが、答える前にじっくり感じる時間を取っています。

子どもの試行錯誤を見守る

物事の最も良いやり方を教えるのではなく、子ども自身で見つけ出す経験をさせるようにしています。子どもが自分でやろうとしているときは手を出さずに見守ります。

自分で考えることができるようなヒントを出す

「今日は何曜日?」と聞かれたら、「明日は土曜日だから、今日は?」「月火水木の次は?」というようにうまくヒントを出して、自分で考えるように導きます。

子どもの意見も聞いてみる

まさに答えのない問いには「私は〜と思う」と意見を言って、「あなたはどう思う?」と子どもの意見も聞いてみます。「空が青いのはどうして?」と聞かれても、科学的に答えなくて大丈夫です。

子どもと一緒に考える

  1. 子どもが困っているとき、「どうしたらいいと思う?」と投げかけてみます。ハンカチを忘れて出かけることが多いなら、「どこに置いてあったら忘れないかな?」と聞いてみます
  2. 次に「こうするのはどうかな?」と提案します。ハンカチを箱に入れて、忘れない場所に置きます。玄関においてあったら忘れない?いつも開けるクローゼットの目立つ場所に置いたらいい?と子どもと検討します
  3. 最終的には子どもに決めてもらいます

小さな工夫ですが、これだけでも子どもの反応がずいぶん変わってきます。参考になればうれしいです。