最近、将棋の藤井聡太六段が幼少期に受けた教育法として「モンテッソーリ教育」は注目されていますが、具体的にはよく知らないという人も実はまだ多いのではないでしょうか。そもそも「モンテッソーリ教育」とは何か、を具体的にお伝えします。
index目次
聞いたことはあるけれど…。モンテッソーリ・メソッドとは?
こんにちは。保育士の堀田はるなと申します。東京・原宿で45年続く「原宿子どもの家」でモンテッソーリ教師をしています。
モンテッソーリ・メソッドは、AmazonやGoogleの創業者、米国のオバマ元大統領やビル&ヒラリー・クリントン、日本では将棋の藤井聡太棋士が幼少期に受けた教育法として注目されています。
しかし、「モンテッソーリ・メソッド」という言葉になんとなく覚えはあっても、具体的にはよく知らないという人もまだ多いのではないでしょうか。
モンテッソーリ教育は「一部のエリート向け」、または「お受験向け」などという誤解を受けることもあります。しかし、特殊な「天才教育」をしているわけではありません。この教育法の理念はいたってシンプルなものです。
子どもの自主性を最大限に尊重し、大人はそれをサポートする
これがモンテッソーリ教育の基本的な姿勢です。
従来の日本型教育の「逆」をいく教育法
モンテッソーリ・メソッド(教育)は、20世紀初頭のイタリアで初めて女性として医学博士号をとったマリア・モンテッソーリが開発した教育法です。
彼女は科学的な視点から子どもの発達に注目し、それぞれの子の発達段階に応じた個別の援助をする方法を考えました。
日本の従来の教育が「ひとつの教育方法にすべての子どもを当てはめていく」やり方であるのに対して、モンテッソーリ・メソッドはその逆をいく考えであると言えます。
子どもは「自分でやってみたい!」と願っている
小さな子どもが「自分で!」といって、大人が出した手を振り払う姿を見たことはありませんか。あれが、まさに自主性・自立心の目覚めです。
子どもたちは、いつも世の中のあらゆることを「知りたい!」と思っていますし、そんなときには「体や手を使って、自分でやってみたい!」と願っています。ごく自然に周りの環境に興味を持ち、五感を使って感じ取ろうとしているのです。
大人にできることは、そんな姿を見守り、応援することです。
そして、必要なときに少しだけ手を貸してあげることです。大人が先頭に立つのではなく、子どもが主体的に自分でやろうとするのを手伝うのです。
そのためには、大人は子どもの動作を見守り、手を出さずに見守ってあげる必要があります。日常生活の中で、子どもにできることはぜひ積極的に自分でやるように導いてあげてください。
- ドアを開け閉めする
- 服を着る、脱ぐ
- 靴を履く
- 荷物を持つ
- 食事をする
- 食器を片付ける
実際にやってみるとわかりますが、見守るというのはなかなか難しいことです。
子どもがひとりで何かをしようとすれば、大人が想像するよりもはるかに時間がかかります。忙しい時間には特に、大人が手を伸ばしてさっとやってあげたくなると思います。
でも時間が許すときには、ぐっと堪えて子どもにさせてください。その積み重ねが、ゆくゆくは子どもを大きく伸ばしていくことになるのです。
知っておきたいキーワード「敏感期」とは?
子どもの育ちをサポートするために知っておいていただきたい「敏感期(びんかんき)」というキーワードがあります。
「敏感期」は、もともと生物学の用語です。生物には成長の過程で「ある特定の機能」を成長させるために「特別な感受性」を持つ時期があります。生まれながら本能的に、環境から学習していくプログラムが備わっているのです。
例えば「言葉」を例に取るとわかりやすいでしょう。幼いうちにたくさん外国語に触れた子どもは、ネイティブスピーカーのような発音と流暢さで話せるようになります。
これは、子どもが言葉に対する「特別な感受性」を持っているからです。しかし、敏感期を過ぎてしまえば同じように学ぶことは難しくなります。
「敏感期」は0~6歳に集中している
言葉以外にも、0~6歳にはさまざまな敏感期が集中しており、大人が気づかぬうちに現れては消えていきます。代表的な以下のようなものがあります。
秩序の敏感期 | 2~3歳頃 | 身の回りの環境を知り、内面の秩序感を育てる時期 |
感覚の敏感期 | 3~6歳頃 | 感覚を通して物事の概念を捉える時期 |
運動の敏感期 | 0~4歳半頃 | 体や手指の動かし方を洗練させる時期 |
言語の敏感期 | 0~6歳頃 | 言葉を吸収し、コミュニケーション能力を育てる時期 |
※詳しくは拙著「子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド」をご覧ください。
敏感期の働きにしたがっている子どもの行動は、なかなか大人には理解しがたい時がありますが、少しの知識があれば、子どもの動作やふとしたしぐさに「もしかして、これは…。」と気づくことができるかもしれません。
それだけでも子どもの見方が変わりますし、落ち着いた心持ちで子どもの成長を楽しむことができると思うのです。
親子で楽しむ「遊びワザ」
敏感期特有の「こだわり」を知ることで、子どもに「いま」の興味に合った遊びや活動を提案することができます。
このコラムのタイトルを「親子で楽しむ遊びワザ」としましたが、ワザと言うからには「コツ」があるのです。次回以降は、子どもと遊ぶ「コツ」と具体例をモンテッソーリ教師の視点から紹介していきます。