子育てが始まったら、助けてくれるはずの夫が“ほとんど(全く)役に立たない現実”にがく然とした経験がある人もいるのではないでしょうか。イライラしてしまったときのセルフケアを教えてもらいました。
お話を聞いたのは
- 下園壮太さん(メンタル・レスキュー協会理事長)
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1982年陸上自衛隊入隊。メンタルヘルス教官として、大事故や自殺問題、惨事対処など多くのカウンセリングを手がける。2015年定年退官し、現在はNPO法人メンタルレスキュー協会理事長。一般向け「感情ケアプログラム」の普及にも務めている。>公式ホームページ
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夫婦の恋愛感情は3年限界説
首都圏でシステムエンジニアとして働く、Aさん(40歳)の話です。
Aさんのような気持ちを経験したことのあるワーママは少なくはないはず。
「夫の立場でもある私が言うのもなんですが…(笑)」と前置きしつつ、「妻が、特に子育て中の女性が“夫に失望してイライラしてしまう”というのは、ある程度仕方のないことです」と、下園さんは断言します。
“仕方がない”のは、いくつか理由があります。
夫婦のクライシスだから
一つは、典型的な“夫婦のクライシス”のひとつだからです。
「恋愛感情の期限は約3年説があります。恋愛とはDNAを残すための感情。一人の人を世界一愛して、子どもを作り、その子どもがある程度育てば役割としては終わります。
夫婦の場合、結婚して恋愛モードが冷めて来るころに、出産、子育てが重なることが多いんですね。」
恋愛モードではなくなるから
もう一つは、夫婦とは「等しく歳をとり、等しく疲労していく者同士」だからです。恋愛モードが終わった二人は、徐々に、人と人としての付き合いへ。
また、夫も妻も歳をとるほど、疲労します。すると、相手の許せないことが増えて、食べ方や洗面所の使い方まで気になったり、子育ての考え方でまともにぶつかったりしてしまうのです。
ワンオペ育児で疲れているから
さらに、最近は共働き夫婦が増加。家庭での作業量はそのまま、仕事がプラスされて、ワーママの負担はかなりのもの。
夫も忙しく、先ほどのAさんのように、“ワンオペ育児”状態の人が多いことも見逃せません。
「夫も疲れているけれど、妻である女性側も、かつてないほど疲れている。それが今の日本、とくに都会の共働き夫婦の現状なのです。」と下園さん。
緊急対処はまず「離れる」!
「夫に限らず、人間関係に疲れるのは一言で言うと“我慢”するから。イライラが発生しても、我慢しないで上手にケアできればいいのです。」
イライラしたときの3つのケア
- 物理的に夫やその場を「離れる」(=新しい刺激を入れない)
- 睡眠、休養をとる、または食べる(=自分のエネルギーを補給する。感情を下げる)
- 誰かに話を聞いてもらう(=感情を分析する)
「変わってほしくても、夫は簡単には変わりません。だったら、自分のイライラをケアしてしまう方が、手っ取り早く省エネなのですよ。」と下園さん。
ただ、3つのステップの効果は、イライラが“少し下がる”というイメージ。“たちまちスッキリした”という効果では現れません。
感情とはそういうもの。少し下がったという感覚、わずかな余裕が、長い目でメンタルを健康に保つのです。
「イライラ」はあなたを守るお知らせ
さて、前述のAさん。いつにも増して忙しい1週間が終わり迎えたある週末の夜。“事件”が起こってしまったそうです。
家事をしているAさんの横で、夫はソファーでごろ寝。Aさんのイライラは頂点に達し「つい、洗っていたお皿を投げてしまったんです。」
この事件、下園さんは「夫婦のすれ違いの典型ですね。」と話します。
「夫である男性は“問題があるなら話して”という生き物。これに対して、妻である女性は“問題があるなら察して”。でも、この察する、というのが一番男性は苦手なんです。」
妻は、怒りではなく、なるべく“お願いモード”で話せるように心がけることが、上手に夫とコミュニケーションをとる秘けつなのだとか。
とはいえ、「お願いモード」は、まずは自分のイライラをケアしてから。自分が元気なときにお試しを。
イライラは「休んでね」の合図
「Aさんは、家族と穏やかに週末を過ごしたいだけだった。なのに、夫への恨みの感情がたまって、お皿を投げてしまった。イライラしてしまうのは、本人が悪いわけではありません。
“エネルギーがダウンしているよ。休んでね”という、自分自身へのお知らせです。
ただ放置しておくと“本来の目的”から離れて暴発してしまう。イライラを感じたら、こまめにセルフケアをしてあげることが何より大切なんですよ。」と下園さん。
さて、アドバイスをAさんにお伝えすると、
「夫へのイライラというよりも、子どもたちの前でイライラを隠せなかった自分が一番辛かったんです。3つのステップをまずはやってみます」と、ちょっと笑顔を見せてくれました。