入園、進級は新しい習慣を作る時期。毎朝決まった時間に家を出る、通園カバンなど自分の荷物を持つ・管理する、バスや電車に乗る、学校でのお約束事など…子どもの「初めて」をうまくサポートして、大人も子どももニコニコで過ごせるといいですね。

index目次

4月はルールを学ぶ絶好の機会

少しずつ暖かくなり、花咲く春になりました。4月からは、お子さんが幼稚園や保育園に通うという家庭もありますよね。

入園、進級は新しい習慣を作る時期です。毎朝決まった時間に家を出る、通園カバンなど自分の荷物を持つ・管理する、バスや電車に乗る、学校でのお約束事など…子どもにとっての「初めて」がたくさんあります。

初めてのことは親子ともにドキドキ・ハラハラするもの。特に大人は、子どもを思うがゆえに「ほらまた忘れてる!」「あれは持ったの?」と余計な世話を焼いてしまいがちです。

子どもの様子は気になりつつも、大人が少し引いて主導権を渡してしまう方が、実はうまくいきます。あまり過度に期待せずに余裕を持って見てあげれば、大人も子どももイライラせずに済むと思います。

全く何もしないというわけではありません。最初にルールをしっかりと伝えて、あとは子どもが自主的に学んでいくのに気長に付き合っていきます。

そんなにうまくいかないのでは?という声もあるかもしれません。確かに最初からうまくいくわけではありませんが、大人が手を出してなんでもやってしまえば、子どもが自立するチャンスを失ってしまいます。

今日は新しいルールや約束ごとにどのようなアプローチがいいのか、具体的に紹介したいと思います。

自分で間違えに気がついて直す
「自己訂正」という考え方

モンテッソーリ・メソッドには「自己訂正」という言葉があります。間違えを誰かに指摘されるのではなく、自分で気がついて行動を修正するという意味です。

教具で活動するときには初めに使い方を見せ、それから子どもの自由にさせます。ルールや行動の場合も同じように、子どもの理解の度合いに合わせて言葉で伝えたり、動作を見せたりします。

モンテッソーリの教師は、活動を子どもに委ねた後は過度に干渉しません。子どもが教具の使い方を間違っている場合でも「ここが違うよ」と指摘せず、また簡単に正解を教えることもありません。

子どもが自分で間違えに気がつくまで見守り、自分で解決できるように少しだけ手を貸します。

間違えたときに自分で修正することは、子どもの成長に必要なプロセスです。うまくいかないときはどこが違っているのかをじっくりと考えます。

子どもが自分なりに考えて、ようやく「ひとりでできた!」という輝く一瞬が訪れたときにこそ、グン!と成長するのです。

大人の指摘が多すぎると子どもは自分で考えるのをやめてしまいます。もしかしたら失敗に臆病になってしまうかもしれません。子どもが自分で考えて行動する余地を残すことが、ちょうどよい大人の関わりです。

ルール(約束ごと)を学ぶ3ステップ

お約束ごとや新しいルールを教えるときにも、同じ関わりが有効です。具体的には、以下のようなステップで行います。

  1. 「事前に」伝える(ポジティブな言い方で)
  2. 子どもと一緒に「確認する」
  3. 子どもに確認を「促す」

いくつかの事例で考えてみましょう。

*事例では3歳くらいの子どもを想定していますが、年齢が高くなっても同様のステップを使えます。年齢や状況に合わせて、それぞれで考えてみてください

事例1:バス・電車に乗るときのお約束

公共のバスや電車に乗るとき、家とは違うマナーが必要になります。大きな声で叫ぶ、飛び跳ねる、靴のままいすの上に乗るなどは好ましくありません。電車のマナーを「事前に」伝えるにはどうしたらよいでしょう。

  1. 約束ごとを伝えるときはポジティブな言い方にしてみます。
    「大きな声を出さない」のように否定的な言い方を「小さい声で話そうね」と言い換えてみます。「いすの上には立たないで」の代わりに「いすに座ろうね」が良いでしょう。たくさんのルールではなく、ひとつかふたつ程度がおすすめです。ジェスチャーを使って伝えるのも良いですね。
  2. 幼児がルールを学んで、行動に移せるようになるには何度も繰り返す必要があります。1回目でできることを期待せずに、習慣になるまで続けます。一度決めた約束ごとはバスに乗るときにいつも確認しましょう。

    「バスに乗るときのお約束は何だっけ?」と子どもに声をかけます。短くて合い言葉のようなものがいいですね。

    「話すときの声は?」 「小さい声」
    「いすには?」 「座る」

    子どもが忘れているようなら「小さい声だったよね」「座るんだよね」と伝えます。

  3. 約束ごとを確認しても、ついつい声が大きくなってしまうこともあります。そんなときは叱るのではなく、約束ごとを思い出すように促します。
    「電車のお約束を思い出してみよう」「どんな声がいいんだっけ?」

事例2:自転車に乗るときのお約束

自転車に乗るときにも危険を避ける意味で約束ごとが必要です。保護者の方と一緒に自転車に乗る場合でも、気をつけるべきことがありますね。

  1. 「ヘルメットを被ってベルトで止める」、「座る(立ち上がらない)」「ハンドルを持つ(手を広げない)」などのお約束が必要ですね。なるべくポジティブな言い方で伝えるといいと思います。
  2. 「自転車に乗る前のお約束は…」と子どもと一緒に確認しましょう。
  3. ヘルメットに慣れるまでは子どもが嫌がるかもしれませんが、安全に乗るためには欠かせないものです。「お約束を思い出してみて」と子どもに考えてもらいましょう。「ヘルメットを被ったら自転車に乗れるんだったよね?」

歩道を歩くとき、横断歩道を渡るときにもお約束があると良さそうです。

通園するときには自分で荷物を用意する、自分で靴を履いたり上着を着るなどをルール化することもできます。(自分で荷物を管理することについては以前記事で取り上げました。こちらもあわせてお読みいただけると嬉しいです。)

この方法の良いところは「大人に叱られるから」約束を守るのではなく、子どもが自ら考えて行動するいう点です。どんどん子どもに考えてもらいましょう。

この記事を書いたライター

ライター一覧 arrow-right
堀田はるなさん

モンテッソーリ原宿子供の家・モンテッソーリすみれが丘子供の家教員、保育士。アパレル業界、eコマース、金融など様々な業種でのマーケティング業務を経験後、教育の道へ転身。日本モンテッソーリ協会承認モンテッソーリ教員免許取得。著作「子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド」。

堀田はるなさんの記事一覧 v-right