/ 2017.07.07

「通っている保育園ではひらがなを教えないので幼稚園児と入学後に差が付いてしまう?」「お友達はひらがなが書けるのに、うちの子はまだまだ…」など、保育園ママの焦る声がちらほら。そこで、今回は“かず”の習得ステップについて、大宮先生に聞きました。

お話を聞いたのは

大宮明子さん

十文字学園女子大学人間生活学部 幼児教育学科 教授。お茶の水女子大学人間発達教育研究センター特任講師等を経て現職。専門は発達心理学、認知心理学。主な著書に『幼児期からの論理的思考の発達過程に関する研究』(風間書房)。

index目次

【事実その1】保育園と幼稚園で学力の差は生まれない

自由保育の時間が多い園は学力を伸ばす

多くの保育園では、ひらがなや数を教える時間を設けていないので、入学後を心配するママは多いようです。

ですが、これまでの数多くの研究で、幼児期の文字や数は「教え込まなくても知らぬ間に身に付けている」ということが分かっています。だから園でひらがなや数を教える時間がなくても全く心配いりません。

実は、学力に影響があるのは、保育形態だそう。意外にも、時間を区切って教える一斉保育型よりも、子どもが主体的に過ごす自由保育型の方が学力を伸ばすということも判明しています。

多彩な遊びの中で自然に学びが進む

保育中の様子はママから見えないので学習していないように感じるかもしれませんが、子どもは自由保育の時間で学びを進めています。

先生ごっこでお友達に絵本を読んであげたり、描いた絵に自分のサインを入れたり、集めたドングリの数を比べたり、先生やお友達との多彩な遊びの中で文字や数を自然と学んでいるのです。

【事実その2】読み書きできるようになる時期と学力は関係ない

スタートが遅くてもあっという間に追いつく

ひらがなの読み書きはスタート時期や習得にかかる期間に大きな個人差があります。スタートが遅くても、子ども自身の意欲が高まってくるとあっという間に覚えるので焦る必要はありません。

4歳台で個数(全部で何個)が分かるようになり、5歳台でほぼ100%のお子さんが濁音と半濁音を含むひらがな71文字が読めます。入学時にひらがなが書けない子も小1の9月には追いつき、能力の差がなくなります。

幼児期は“話し言葉”を豊かにすることが先決

入学後の学力に差が付く要因は、読み書きを覚えた早さではなく、幼児期に培った「語彙(ごい)力」です。

たくさんの言葉を知っている、豊かな語彙を持つ子は入学後に独自の視点で意見を発表したり、感性豊かな作文を書いたりできますが、語彙の乏しい子は苦戦する傾向があります。

将来の学力のために幼児期で重要なのは“話し言葉”を豊かにすること。保育園では先生やお友達とバラエティーに富んだ会話をして、相手に分かるように話すことに気付きながら、話し言葉を広げていくことができます。

【事実その3】家庭の「しつけのスタイル」も語彙力に影響する

「○○しなさい」でなく「○○してみる?」

では、家庭ではどんなことを心掛けるべきでしょうか。

調査で分かった「語彙が豊かな家庭」の特徴は、「絵本の読み聞かせが多い」と「共有型のしつけをしている」の2つ。共有型とは、しつけの場面でも子どもの人格を認め、「○○したらどうかな?」と、子ども側に判断の余地を与えるスタイルです。

一方、強制型の「○○しなさい」が多い家庭では、親子で意見や気持ちを言葉で伝え合う機会が少なくなりがち。「早く○○して」など、いつも同じ声掛けになるのもデメリットです。

“こそあど言葉”をできるだけ使わない

家庭では共有型のしつけにすることに加え、「耳で聞いて」分かるように話すのが語彙を増やすコツ。

「あれをここに置いて」と“こそあど言葉”に頼らず、「テレビの前のリモコンをテーブルに置いてくれる?」と具体的に話しましょう。

習得の時期は気にせずおおらかに見守って

文字や数は、子ども自身に学ぶ意欲がないときに教え込もうとすると学習嫌いになってしまうこともあるので、無理強いは避けましょう。

習得時期の早い遅いは将来の学力には関係ありません。他の子と比べず、意欲が出るまでおおらかに見守ってくださいね。

また、「ちゃんと読めない・書けない時期」「ちゃんと数えられない時期」はとても短いもの。絵本を拾い読みする姿や、つたないながらも一生懸命書いた文字、数え間違いしている様子などを写真やビデオで記録しておくのもおすすめです。とてもかわいらしい成長の記念になりますよ。

※この記事は、あんふぁんぷらす2015年2月号に掲載した記事を再編集したものです