SDGsとは2001年に策定された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標。ぎゅって読者アンケート(※)では「言葉も意味も知っている」と答えた人が82%を超え、広く浸透していることが分かりました。しかし実践している取り組みとしては、「ゴミの分別を守る」だけという人も多数。目標達成までまだまだ遠い今、家庭で今日からできることを紹介します!

※2023年3月3日~4月3日/ぎゅって読者にWebアンケート/有効回答数483

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教えてくれたのは

秋山宏次郎さん

一般社団法人こども食堂支援機構代表理事。SDGsオンラインフェスタ・ソーシャルイノベーションディレクター。正社員時代から他社や行政に提案し、新規事業の発起人として多くの案件を実現に導く。大学での授業、講演、執筆活動まで幅広く活動するパラレルワーカー。監修に「数字でわかる!こどもSDGs」(カンゼン)他多数。

まずはクイズです

親子でSDGsに関するクイズに挑戦!答えは一つとは限りませんよ。

Q1 この中で、食べられるものは?

  • A)ニンジンの皮
  • B)ブロッコリーの芯
  • C)ピーマンの種

答え…ABC
すべて食べられます。廃棄すればフードロスですが、料理に使えば環境にも財布にも優しくできます。

Q2 海で暮らしているのは?

  • A)イルカ
  • B)あさり
  • C)わかめ

答え…ABC
海が身近にない地域に住んでいても、生物の話題から海の環境にも興味を広げていきましょう。

Q3 木から作られているのは?

  • A)ティッシュ
  • B)紙
  • C)粘土

答え…AB
木から作られるものはたくさんあります。それらをムダ遣いしないことは森林保全につながります。

Q4 地球からいなくなってしまいそうな動物は?

  • A)ジャイアントパンダ
  • B)アフリカゾウ
  • C)チンパンジー

答え…ABC
いずれもレッドリスト(絶滅の恐れのある野生生物のリスト)に掲載されています。パンダの個体数は増えていますが、未だ2000頭弱なので危機は脱していません。

Q5 家族にとって大事な仕事は?

  • A)外でお金を稼いでくる
  • B)家でお皿を洗う
  • C)子どもを育てる

答え…ABC
いずれも優劣はなく、家族にとって大事な仕事です。そうした価値観を子どもにも伝えていきましょう。

日本の深刻な課題である環境とジェンダーに注目

国連と連携する研究機関の昨年の報告書によると、日本のSDGs達成度は19位。17の目標のうち「深刻な課題がある」とされたのが、「ジェンダー平等を実現しよう」「つくる責任 つかう責任」「気候変動に具体的な対策を」「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさも守ろう」「パートナーシップで目標を達成しよう」の6つでした。

今回の特集では、日本の深刻な課題であり家庭でも取り組みやすい「環境」と「ジェンダー」に絞って紹介します。

SDGsは私たちの暮らしに直結する課題

SDGsでは17の目標が設定されています。いずれもこれからの時代を生きていく、ぎゅって読者やその子どもたち世代に直撃する課題。SDGsは「どこかの誰か」のためではなく、「未来のわが子や自分たちの暮らしに直接影響すること」なのです。

特に、地球温暖化による「気候変動」はすべての人に影響が大きい、とても身近な課題です。温暖化による異常気象で、台風や豪雨などによる被害が大きくなる一方で、内陸部は乾燥で砂漠化が進行。住むところを奪われる人が増え、農産物の供給も不安定になりがちです。

また、海水の温度が上昇して南にいた魚の生息域が北上しています。陸の生物も今後生息域が変わったり、絶滅したりする種が増える可能性が高いでしょう。

最大の課題は温暖化対策 家庭でもCO2削減を

私たちでもできる温暖化対策としては、温暖化の一因になるCO2(二酸化炭素)の排出量を減らすこと。例えば、CO2はものを燃やすときに出るので、家庭のゴミを減らしましょう。

食品や製品を作る工場が排出するCO2を減らすために、消費者側が不必要なものを買わないことも有効。また、CO2を吸収してくれる森林を守っていくことも非常に重要です。

ジェンダー不平等社会は男女とも不幸

もう一つ身近な課題であり、日本が大きく遅れているゴールの一つが「ジェンダー平等を実現しよう」。特に政治の領域で女性の活躍が遅れています。

また、ビジネスの領域では「女性だから昇進できない・男性だから昇進できる」など、未だに差別がある職場もあります。逆に、女性管理職の人数を増やすために能力不足の人を昇進させて、社内に軋轢(あつれき)を生んでいるケースも見られます。

ジェンダー不平等の社会は、女性が不利益を被るだけでなく、実は男性にも厳しい社会。「男は理不尽な扱いを受けても耐え、外で働いて稼ぐべきだ」という古い価値観から脱却できず、プレッシャーで苦しんでいる男性は少なくありません。

こんなこともSDGs 次のアクションをしていこう!

持続可能な社会を作るには、一人一人のアクション(行動)が必要です。家庭で取り組みやすいアクションの例を紹介するので、一つでもできそうなことから実践してみましょう。

ムダな電気を使わない

発電には膨大な燃料が使われ、CO2を大量に発生させます。家庭での使用電力を減らすことは、家計の節約にもなる上に、温暖化対策にもつながります。

中古やリサイクルを活用

何かを買うときは、新品だけでなく中古品も選択肢に。「サイズアウトした子ども服を入れるボックスを作り、着なくなった服は入れて、欲しいものはご自由に持っていってください」としている園もあります。

ゴミの量を減らす

例えばペットボトル飲料を買わず、水筒を持ち歩けばゴミ減に。不要になった服やおもちゃもゴミとして捨てる前に、リサイクルやリユースができないか検討しましょう。リサイクルショップ、バザー、フリーマーケット、メルカリやジモティーなどもぜひ活用を。

マイカーの利用を減らす

徒歩や自転車で行ける距離なら、マイカーを使わないようにしてみて。使用するガソリンも、排出するCO2も削減できます。ちょっと遠いスーパーでも、家族で歩いて買い物に行けば楽しい運動にもなりますよ。

環境に優しい商品を選ぶ

森林保全につながる製品に付けられる「FSC®マーク」や、持続可能な漁業で獲られた水産物の証、MSC「海のエコラベル」が付いている商品もあります。買いたい商品に迷ったときは認証マークが付いているものを選ぶと環境保全につながります。

週1回「残り物カレー」

フードロスは食品そのものだけでなく、生産や運送時に費やした燃料や、廃棄後の処分にかかる燃料もムダ遣いしたことに。週に1回、曜日を決めて冷蔵庫などの中身を親子でチェックし、残り物はカレーにしていただきましょう。子どもと一緒に作るのもおすすめです。

夫婦の分担は適性で

SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」には「無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する」というターゲット(具体的な目標)があります。外で働くことも家の中のことも同等の価値として、「男だから・女だから」でなく、「個人の適性」を基準に分担を話し合いましょう。

フードマイレージを意識する

フードマイレージとは食料の輸送距離のこと。地産地消に比べ、輸入食材は環境負荷が高いことが分かります。親子で世界地図や日本地図を見ながら、料理に使われている食材がどこから運ばれてきたのか話してみて。世界への関心も育むことができるでしょう。

本当に必要なものだけ買う

買ったものの多くはいずれゴミになります。おもちゃや服も「安いから」「ちょっと気になったから」などと安易に買わず、本当に必要なものだけを吟味する習慣にしましょう。無駄な消費が減れば、生産工場が排出するCO2も減らせます。

情報をシェアする

気候変動やジェンダー平等について気になる記事を見つけたら、ぜひ友人にシェアしましょう。自分が取り組んでいるアクションを発信するときは#SDGsを付けて。

ニュースを解説する

地球温暖化や異常気象、環境問題などのニュースに触れたら、子どもに分かるくらいの言葉で解説してあげて。5~6歳なら「ゴミをいっぱい燃やして、地球がどんどん暑くなって、お外で遊べないくらい暑くなっちゃったらイヤだよね」程度でOK。

選挙に行く

子どもたちの未来のためにも、国や自治体のリーダーを選ぶことは大事。親子で投票所に行って、子どもに投票する姿を見せるのもGood。

グリーンカーテンにトライ

ゴーヤーなどのツル性の植物でグリーンカーテンを作れば、エアコンの電気使用量を減らせますし、建物の壁の蓄熱を防いで地球温暖化やヒートアイランド現象の緩和にもつながります。親子で生長を観察するのも楽しい経験に。6月上旬から育て始めても間に合う品種もあります。

それって本当にSDGs?

SDGsをうたっている製品やサービスの中には、「原材料が環境に優しくても、製造過程で環境負荷の高いもの」「環境にどういいのか根拠のないもの」「『エコ』などあいまいな表現を使い、具体的な内容を明らかにしていないもの」などもあります。

SDGsの達成には総合的なバランス感覚が必要。消費者側も知識を増やし、偽装(SDGsウォッシュ)を見抜けるようになりたいですね。

ぎゅって読者のSDGs意識調査

読者の皆さんはどのぐらい関心を持っているのか、聞いてみました。

Q SDGsに関心がありますか?

※小数点第二位以下四捨五入のため100%にならない

Q 17の目標のうち、関心があるのは?(複数回答)

  • 1位 質の高い教育をみんなに(58.6%)
  • 2位 すべての人に健康と福祉を(57.6%)
  • 3位 住み続けられるまちづくりを(50.9%)
  • 4位 海の豊かさを守ろう(49.3%)
  • 5位 貧困をなくそう(45.5%)
  • 6位 働きがいも経済成長も(42.4%)
  • 7位 安全な水とトイレを世界中に(42.0%)
  • 8位 人や国の不平等をなくそう(41.4%)
  • 9位 ジェンダー平等を実現しよう(41.2%)
  • 10位 陸の豊かさも守ろう(41.0%)

11位:飢餓をゼロに(39.1%)/12位:平和と公正をすべての人に(38.5%)/13位:気候変動に具体的な対策を(37.7%)/14位:エネルギーをみんなに、そしてクリーンに(37.5%)/15位:つくる責任 つかう責任(34.0%)/16位:パートナーシップで目標を達成しよう(17.2%)/17位:産業と技術革新の基盤を作ろう(15.9%)

皆さんはいかがでしょうか?「できることから」がなかなかできないことも多いかもしれませんが、この記事が小さなアクションのきっかけになるとうれしいです。(編集部)

イラスト/いしやま暁子

※この記事は、2023年6月発行の「ぎゅって7月号首都圏版」に掲載した記事を再編集したものです