「今住んでいる地域の保育園に入れるのか?」「保育料はどれぐらいかかるのか?」など、保活にはさまざまな不安がつきまとうもの。あなたの住んでいる地域は大丈夫?みんなが思う待機児童数は本当の数ではない?保活している人、これからする人は要必見です!

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お話を聞いたのは

普光院 亜紀さん

「保育園を考える親の会」代表。保育、仕事と子育ての両立について、執筆・講演活動をおこなう。自身も2回の育児休暇をとって、2人の子どもを保育園に預けた経験をもつ。著書に『共働き子育てを成功させる5つの鉄則』(集英社)など。
>保育園を考える親の会

今あなたが住んでいる地域は保活しやすい?

自分が住んでいる地域の認可保育園は入りやすいのか?保育料は安いのか?園の環境はどうなのか?保活をしていると、不安で気になることがたくさん出てきますよね。そして、自分が住んでいる地域のことは調べる事はできても、他の地域について知るのはなかなか難しいもの。

「保育園を考える親の会」では毎年、首都圏と全国の政令指定都市あわせて100都市にアンケートをとって、「保育力充実度」をチェックしています。

「その地域の待機児童数を見れば、保活のしやすさがわかると思いがちですが、厚生労働省が発表するデータだけでは、ママたちにとって正直あまり参考にならない。」と普光院さんはいいます。

待機児童数だけでは分からない。実際はもっと多い「隠れ待機児童」

2017年4月に厚生労働省が発表した待機児童数は、全国で2万6081人でした。「例えば、世田谷区の待機児童は861人、港区は164人。数字だけ見ると、世田谷区は保活が大変そうで、港区は待機児童が少ないように感じませんか?

でも、実際の認可への入園決定率は、世田谷区は60.4%で、港区は48.2%。港区では2人に1人の子どもが認可に入れない状況である。そもそも、世田谷区の世帯数は約47万3500世帯、港区は約14万1700世帯なので、規模がまったく違う自治体の数を比較するだけでは意味がないのです。」

「待機児童数」と聞くと、“認可保育園に申し込んだけれど、入れなかった子どもの数”だと思いますよね? しかし、国のカウントする待機児童数はちょっと定義が異なります。

「認可保育園に落ちてしまった場合、会社の育児休暇を延長したり、認可外保育施設にひとまず入園させて、認可のキャンセル待ちをしたり、と試行錯誤する人たちは待機児童数の数には含まれません。

それから、最近は劣悪な環境の施設も残念ながらあるので、保護者にとっては預けられたらどこでもいいというわけにはいかないですよね。そうして認可保育園のみを希望して待機児童になった場合、個人的な理由とみなされてしまい、カウントされないのです。

2017年度からは、保護者が育児休暇を延長した場合も数に入れる方式に変わりました。2018年の待機児童数は、現在よりもっと増えるでしょう。」

合格率が高いのは〇〇区、入園事情が厳しいのは〇〇区

待機児童数だけでは見えてこないことがたくさんあります。そこで、「保育園を考える親の会」が調べているのが「入園決定率」。

入園決定率とは、新規に認可に申し込みをして、入園が決定した児童の割合、つまりママが一番知りたい「合格率」です。2017年度は全体で74.2%となり、昨年度の72.8%よりも少し上昇の傾向に。

23区の入園決定率ベスト5

1位 豊島区 90.8%
2位 北区 84.7%
3位 葛飾区 77.3%
4位 板橋区 77.1%
5位 荒川区 73.9%

23区の入園決定率ワースト5

1位 港区 48.2%
2位 台東区 51.4%
3位 渋谷区 52.2%
4位 中央区 56.1%
5位 文京区 59.5%

入園決定率が一番高いのは豊島区で、9割の子どもが認可に入園しています。逆に港区などの地域では、認可だけでなく認証保育所ですら、入園が難しいケースが多いようです。

なお、港区では独自の認可外助成制度「港区保育室」があり、ここに入れている児童も含めると入園決定率は61.8%になります。「港区保育室」は保育料や入園手続が認可保育園と同じですが、基準が少し低くなっています。

「私たちの2011年度の調査と比較すると、港区の認可保育園は約238%も定員が拡大。自治体が一生懸命、施設を増やしても足りないということは、それだけ一つの地域に一極集中してしまっているということ。人気の地域には住まない、ということがママにとっての自衛策になります。」

自治体のやさしさがわかる!? 保育料が安いのは〇〇区

保育園を選ぶとき、保育の質と同じくらいママたちが気になるのが保育料。保育料は住民税の負担額によって、それぞれの自治体によって決められています。最高所得階層になると、月額の保育料が7万円以上になってしまう自治体も多く、かえって認可外に通ったほうが安くなる場合も。

23区の保育料の最高額ベスト5(3歳未満児)

1位 江東区 7万7700円
2位 品川区/文京区 7万7500円
3位 足立区 7万5500円
4位 新宿区/台東区/港区/中野区 7万4700円
5位 世田谷区 7万3100円

23区の保育料の中間額の安さベスト5(3歳未満児)

1位 渋谷区 7480円
2位 中央区 1万3100円
3位 練馬区 2万600円
4位 新宿区 2万1500円
5位 杉並区/港区/文京区 2万3600円

「中間額」とは、平均的な所得階層を独自に設定して、その階層の保育料を出したもの。「全国の平均所得を元にしているので、東京都の場合は低所得階層にあたると思います。こうした層の保育料を安く設定して、負担を少なくしているところは、子育てにやさしい自治体といえます。」

中間所得階層にとって、一番保育料が安いのは渋谷区の7480円でなんと1万円未満。「渋谷区の保育料は他の地域に比べて断然安いですが、入園決定率は52.2%と低いので保活はとても大変。保育料の安さを目当てに、渋谷区に人が押し寄せているということも考えられます。

もし、保活のために引っ越しを考える場合、保育料の安さだけで住む場所を選んでしまうと、入園の可能性が低くなる地域があるので要注意。

そして、同じ自治体内でも地域によって、入園の厳しさは大きく変わるので、引っ越す前には役所に出向いて実状を聞いてみましょう。“〇〇駅周辺の保育園は、フルタイム勤務の人は入園できているかどうか”など具体的に質問するのがポイント。」

「認可保育園=園庭がある」は、もはや当たり前ではない

待機児童対策のために、どんどん新しい保育所ができています。今は、ビルの中に施設を設けていることが当たり前の時代で、子どもがのびのび遊べる園庭がない園も。

「ひと昔前までは、認可には園庭があることが当たり前でした。公立の認可保育園や、老舗の私立認可保育園だと、外観だけだと幼稚園と変わりないところがたくさんある。しかし近年は、園庭がある施設が2割もない自治体もあるほど。これは自治体がしっかり取り組まないといけない問題ですね。」

23区の園庭保有率が高い自治体ベスト5

1位 足立区 83.3%
2位 北区 75.3%
3位 板橋区 74.1%
4位 渋谷区 73.0%
5位 中野区 70.4%

※認可保育所(分園も含む)

23区の園庭保有率が低い自治体ワースト5

1位 文京区 18.3%
2位 港区 24.1%
3位 中央区 27.9%
4位 千代田区 30.8%
5位 台東区 37.9%

※認可保育所(分園も含む)

23区の北東部には園庭保有率が高い区が多いようですが、文京区は全体の2割をきった18.3%しかありません。「文京区や港区はもともと保育園が少なかった地域。そこに一気に施設を増やしてしまったので、園庭がない園が多いのが現状です。」

そもそも、園庭がないことは園を選ぶうえで大きな決め手になるのでしょうか?「園庭があるかないかは、地域によって大きく差があります。必ずしもないといけないわけではありませんが、子どもは発達上、外遊びは絶対に必要。

園庭がない場合には、近くの公園などで代用しなくてはいけません。2、3歳から活動量が多くなるので、親が見かねて転園するというケースも少なくありません。

もし、希望する園に園庭がない場合には、どんな外遊びをしているのか質問してみましょう。どこの公園に遊びに行くか聞いてみて、実際に見に行ってみては。近隣の保育園の子どもたちで混雑していて、子どもが満足に遊べないということも発生しています。」

保活は不安。でも楽しく前向きに!

国が発表する待機児童数は増えていますが、どの自治体でも保育園の数は年々増えています。少しずつですが、入園決定率は上昇傾向にあります。

「保育ニーズの増加はまだ続くと思いますが、待機児童対策が追いつくのは時間の問題だと思います。郊外ではすでに大幅に改善している地域もあります。地域の情報をしっかり把握するようにして、ニュースなどに振り回されて必要以上に不安になってしまわないようにしてください」と普光院さん。

認可の4月入園がもしダメだとしても、信頼できる認可外も探せばたくさん。

認可も5月に空きが出る場合もあるので、あまり悲観的になりすぎずに保活を!