「むしさんにとってはたいふうかもね」

「相手の身になって考える」ということは、人生の中でもとりわけ大事な技術の1つであるように思います。私の場合、そうした技術は主に経験を通じて習得してきました。

例えば、アルバイトをすることでその仕事の苦労を知り、自分が客として関わる時には親切にふるまうことができるようになったり、旅行に行くことでその地に暮らす人々に親しみを持ち、以降その地に関わるニュースについては深く想像力を働かせられるようになったり。そうやって少しずつ視野を広げてきたつもりでいたのですが…まだまだ甘かったと思い知らされました。

子どもと一緒にいると、彼らの視野の広さには本当に驚かされます。他人に対してはもちろん、虫や花、風や太陽、車や建物など、実にさまざまなものに対して感情を働かせる。そうした子どもの様子に対して、それは単なる知識の不足によるものであり、未熟ゆえに現れる態度に過ぎないと評価する人もいるかもしれません。

例えば花を踏んでしまった子どもに、「お花さんだって痛いよ」と声をかけることについて、「いやいや、花に神経はないから痛みを感じることはないんだよ」と反論することは可能です。しかしこうした反論はナンセンスでしょう。

大切なのは「事実としてどうか」ではなく「どう扱うか」の方にあるわけですから。子どもの物事に対する扱い方、その根底にあるやさしさは、私の心をいつも暖かくしてくれます。

この記事を書いたライター

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パパ頭さん
絵日記・漫画家

高校で倫理を教えつつ、妻子との暮らしを描いた漫画を執筆、SNSで公開中。おっとり優しい長男と元気で愛嬌のある次男とに囲まれ、賑やかな毎日を送っている。著書は『パパが育休とってみたら妻子への愛が深まった話』(KADOKAWA刊)

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