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子育て中の皆さんにとって、こどもが生まれる前からの切れ目のない支援や、子育てしやすい環境があることはとても大切ですよね。こども家庭庁では、こどもたちが健やかに育つことができるよう、「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン(はじめの100か月の育ちビジョン)」を策定。その具体的な内容と、読者アンケートで寄せられた育児の悩みや解決策について、玉川大学の大豆生田教授とぎゅっての岡﨑編集長が対談。子育てに関わる人だけでなく、社会全体で共有したい大切なビジョンとは?

「はじめの100か月の育ちビジョン」って?

「はじめの100か月の育ちビジョン」とは、妊娠期から小学校1年生までの重要な時期に、一人一人が健やかに育つことができるよう、皆さんに大切にしてほしい考え方を大きく下記の5つのビジョンにまとめたものです。

5つのビジョン

具体的にどういうことなの?専門家に聞きました

では、この5つのビジョンとは具体的にどういうことなのでしょうか。

ぎゅってWebでは、読者アンケート(※)を実施し、子育て世代の「育児の悩みや不安」について調査。そのアンケートに寄せられた声をもとに、「はじめの100か月の育ちビジョン」との関わりや大切にしたい考え方を、ビジョンの策定に関わった玉川大学 教育学部教授の大豆生田先生に聞きました。

※「育児の悩み、こども家庭庁についてのアンケート」2024年1月17日〜1月29日、有効回答数631件

左から、ぎゅっての岡﨑編集長と、玉川大学の大豆生田教授

なぜ「はじめの100か月」が大切なの?

Q.こども家庭庁では「はじめの100か月の育ちビジョン」を策定しています。これについて、あなたの意見を聞かせてください

岡﨑読者アンケートでは、「はじめの100か月の育ちビジョン」について、「非常に大切なことだと感じた」「やや大切なことだと感じた」と答えた人が90.2%と高い割合になっています。そもそもなぜ「はじめの100か月」が大切なのでしょうか?
大豆生田先生「はじめの100か月」というのは、妊娠期から小学校1年生までのおおむね100か月のことで、この時期の健やかな成長はその後の幸せにもつながり、生涯にわたるウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に幸せな状態)につながる大事な時期です。この乳幼児期がとても重要な時期なんだということが、改めて“国”のビジョンとして出されたのはすごく大きなことで、この時期のこどもの育ちを社会全体で支えましょうというのが、ビジョンの重要なポイントです。
また、このビジョンでは、乳幼児期のこどもの育ちが大事というだけでなく、こどもを育てている親(保護者)や養育者およびそれを支える保育者や支援者、さらに普段育児に関わらない大人も重要な存在なんだということを打ち出しています。
日本の子育てを取り巻く環境は大きく変わり、必ずしも昔のようにいろんな人が子育てに関わる環境ではなかったり、十分な遊び場がある環境ではなかったりするなど、こどもの育つ環境としては課題が多いと感じています。障害のある子や病気の子や様々な家庭環境があるなど多様な境遇に置かれているお子さんがいますが、そうした子も含めすべてのこどもたちのウェルビーイングが支えられることが大事、ということを打ち出しているのが、このビジョンの大きなポイントなのです。日本中の皆さんにわかりやすくお伝えしたいということで、5つのポイントを挙げています。
岡﨑この5つというのは、保護者や養育者、社会全体で大切にしてほしい考えや、国や自治体がどのような政策に取り組んでいくかを示す役割、ということでしょうか?
大豆生田先生そうですね、ここでは“羅針盤”という呼び方をしています。今後自治体やいろいろなところで取り組まれる時に、こういうことが大事になるんだ、という目安になるといいなと思っています。
岡﨑羅針盤というのはわかりやすいですね。みんながそこに向かっていくというイメージですね。

子育て世代の悩みとビジョンとの関わり、そして悩みの解決法は?

読者アンケートでは、子育て中の悩みや不安についても聞きました。ここからは、寄せられた具体的な悩みのエピソードを紹介しながら、それがビジョンとどう関わっているのか、どんな解決法があるのかについて、聞きました。

Q.子育ての中で悩んでいること、不安に思っていることを教えてください

Case1.仕事と育児の両立は難しい?

岡﨑アンケートでは「仕事と育児の両立」に悩んでいる人が最も多くなりました。具体的なエピソードとしては、「こどもが病気のとき、預かってくれる先が見当たらず困っています。夫婦共に重要な仕事が入っている日に、朝いきなり発熱していると、どうしようもありません。(女性、こども5歳)」「正社員で働きながらこどもの世話は全て私がしていたが、ついに回らなくなり退職。男女問わず労働環境と子育てに対する意識が整わなければ、仕事と子育ての両立など叶わないと身をもって知った(女性、こども5歳/小学生)」という声が寄せられています。
万が一のときの預け先や、夫婦間の負担の差で、キャリアが止まってしまうという悩みが多くありました。これは、5つのビジョンのどの部分に関わってくるでしょうか。
大豆生田先生例えば4つ目のビジョン「保護者・養育者のウェルビーイングと成長の支援・応援をする」に関係します。保護者に対する支援だけにとどまらず、社会全体で応援するんだということを強調しています。
仕事と家庭の両立は、これからますます多くの家庭で重要になってきますよね。保育所等の充実は当然のこと、いろいろな預け場所も含めて社会全体で支えていくというのが重要な時代になってくると思います。男女問わず、子育てに関わっていくことができる社会にしていくということが、親たちの支援・応援になると思います。
やはり保護者がこどもに機嫌よく関われないと、当然、こどもの最善の利益は守られないことになります。

岡﨑親が機嫌よく関わるためには何が必要と思われますか?
大豆生田先生現代の子育ての最大の問題は、家庭が孤立しがちだということ。家庭によっては、ママたちが一人で負担を抱えている状況がまだまだ多い。パパたちもそうですが、ここでビジョンの中の「5.こどもの育ちを支える環境や社会の厚みを増す」ことで、いろいろな場(家庭だけでなく、園や地域の子育て支援拠点)を通して保護者が応援されていくことが大事なことです。
岡﨑「5.こどもの育ちを支える環境や社会の厚みを増す」については、アンケートで読者が一番大切に思う項目として挙げられていましたが、親がそういう支援の場に気軽に行けるようになっていけるといいですね。
岡﨑保育の充実というお話がありましたが、先生の考える保育の充実とはどのようなものでしょうか?
大豆生田先生それは、こどもの主体が尊重される保育の質の充実ともいえます。これまでは、待機児童が大きな問題でしたが、今は多くの地域で園が選べる状況になってきています。その背景から、園では保育の質の向上に取り組んでいます。こどもが園でその子の主体が尊重され、幸せに過ごせるということが、仕事との両立も含めて親たちの安心感につながると思います。

Case2.養育費、出産費などのお金まわりが心配…

岡﨑次に多かった悩みは、「養育費、出産費などのお金まわり」でした。「子どもの将来に向けて貯金をしていますが、これから小学生、中学生と上るにつれて大きな出費があると思うと不安な気持ちになります。(女性、こども3歳)」や、「第二子を検討したいが、金銭面での不安から踏み切れない。(女性、こども1歳)」というエピソードが寄せられています。これはどのビジョンに関わってくるでしょうか。

大豆生田先生経済的な支援については、ビジョンとは別に、「こども未来戦略」(※)の中で、出産育児一時金や児童手当の拡充などもあると思います。
ビジョンとしては、まさに「3.『こどもの誕生前』から切れ目なく育ちを支える」というところです。産前・産後や、入園・就学などの節目は、お金がかかるうえに悩みも多い時期。「こども未来戦略」では、以前より手厚く対応がなされてきているとは思いますが、お金だけではなく、孤立してしまう状況や、こどもの育ちについての心配ごと、今後どういう選択をしていったらいいかなど、さまざまな悩みがでてくるのが「切れ目」のところですよね。この「切れ目」の部分を社会全体で支えていこうというのが、今回のビジョンの3です。

岡﨑「切れ目」の悩みはみなさん抱えているという印象はありますか?
大豆生田先生そうですね。もちろんお金のこともありますが、産前に不安だったり、子育ての今後の見通しがたたない、そういう悩みのある人たちが、先輩ママたちと出会い、ちょっと話を聞いたりすることで、子育ての見通しが立ち、不安が解消されることもたくさんあるのではないかと思います。地域の子育て支援拠点やつどいの広場など、お金をかけなくても充実して過ごせる支援がたくさんあることも知っていただければと思います。
産後は、赤ちゃんとお母さんが二人きりになっている時期に、発達や多様な悩み事の相談にのってくれる体制があることが、支えになります。
コロナ禍で、そういうつながりを持てなかった人もたくさんいるので、そこをしっかりサポートしていき、むしろ支援する側から出向いていくくらいに支えていくことが大事だと思います。

岡﨑この3年間は特に厳しい子育てをされていた人も多かったと思います。問題はお金だけでない、というところが大変勉強になりました。
大豆生田先生お金のところから心配ごとというのは始まりやすいけれども、まわりから応援されているだけで、元気につながるというところがあると思います。

Case3.楽しみな反面、不安も…こどもの成長について

岡﨑3番目に多かったのは「こどもの成長」でした。「長女が幼稚園で日々いろんなことを学んでいるが、成長するに連れ、悲しさや嫌な思いなども経験すると思うが、優しすぎるので遠慮ばかりしてないか心配です(女性、こども2歳/4歳)」や、「妻と子が一緒に過ごす時間に比べて夫の私がこどもと過ごす時間が少ない。もっと子どもと一緒に過ごしたいが仕事が忙しい(男性、こども6歳/小学生)」というパパの意見もありました。
今は子育てに関する情報が多い分、心配事も増えているのかなと思います。すごく些細なことに心配になったり気にしたり、ほかと比べたりという人がちょっと増えたかなと個人的には思っていますが、こちらのエピソードについてどのように思われますか。
大豆生田先生これだけ情報があふれていると、多くの人の場合、かえってどう育てていいかわからない、もっと早くからいろいろなことをさせなければいけないんじゃないか、ほかの子と比べてうちの子は、のような心配がすごく大きくなっているのかなと思います。
ビジョン2の中で、「『安心と挑戦の循環』を通してこどものウェルビーイングを高める」とあり、乳幼児の育ちで一番大事なポイントを「安心」と「挑戦」の2つに絞って示しています。
一つ目の「安心」について、安心感をもてるということを専門用語で「アタッチメント(愛着)」と言いますが、その子がいつでも困ったらしがみつけるような関係や、あなたはあなたで大丈夫なんだよと言えるような関係性をもつことが、人が育つ上で一番大事なところなのです。
家庭でも甘えられているとか、自分らしさを出せているということが実はとても重要な育ちの基盤なんです。園で落ち込む経験をすることがあったとしても、家庭がそのような受け止められる場であることが大切です。また、園もそうした安心の場であることが求められています。
ただ、一つ誤解されがちなのが、「アタッチメント(愛着)」の関係は、親だけではなく、園の先生や周囲の大人との信頼関係も含めて、ということと理解してもらいたいと思います。

岡﨑そうなんですね。二つ目の「挑戦」はどういうことでしょう。
大豆生田先生「安心」の基盤がある上で、さらに育ちをうながしていくのが「挑戦」のところです。人は安心感があると、「よし、やってみよう」「今度はこうしてみよう」と「挑戦する」気持ちになる。挑戦を促す大きなところが「遊びと体験」です。実は乳幼児期の遊びはとても重要なのです。
非認知能力とか社会情動的スキルといわれたりもしますが、夢中になって遊ぶことを通して、「意欲」や、「やり抜く力」、「他者とのコミュニケーション」、「思いやり」、「自分の気持ちをコントロールすること」などが育ったり、非認知的な面だけでなく、言葉や数を数えたり、科学的なことに好奇心をもったりするなど、認知的な育ちの側面も広げていきます。遊びを通して、育ちや学びを作ることが大事だということが社会全体でちゃんと理解されることによって、わが子らしさを認めることにつながるのかなと思います。
一方、“遊び”といっても家庭でできることには限界もあるので、多様な人・モノ・自然・空間・時間等の環境が保障されている園や地域子育て支援などとのつながりの中で育てることも大切になっていきます。また、保育の場など専門職の先生方は、こども主体の遊びを通した育ちや学びが重要であることを意識するということがますます大切な時代になってくると思います。

岡﨑「安心と挑戦の循環」という言葉が難しいなと思っていたのですが、読者のコメントなどを見ると、一番大事に思っているところなのではないかと思います。
大豆生田先生簡単に言うと、「しっかりとした心の安全基地の形成」が大切にされ、「思いっきり遊ぶことが大事」ということですね。
岡崎そこに幼稚園や保育園の支えがあるととても心強いと思いました。
家庭では愛着形成というと、こどもとどのような関わり方をしていけばよいのでしょうか?

大豆生田先生それほど特別なことはしなくてよいと思います。毎日の生活の中でこどもが自分らしさを発揮でき、その子の思いが尊重され、困った時にだっこされたりするなどしっかりと甘えられるような関係を作ることが大切です。それは、日常の中で近所の公園に一緒に遊びに行くとか、何気ない楽しい時間を過ごすことの中でなされるのだと思います。
岡﨑一緒に過ごす時間を楽しめばいいということですね。忙しくてなかなか時間が取れないという人もいますが。

大豆生田先生「こうしなくちゃ」と頑張りすぎなくてもよいのだと思います。量よりも質かもしれません。長い時間は無理かもしれないけど、寝る前に少しの時間、絵本を読んであげるとか、ちょっと公園に行く時間をとろうとか、いつもでなくても、ちょっとした時間の中で楽しい時間を過ごすことが大事だと思います。こどももわかってくれていますよ。
岡﨑そうですね、肩の力を抜いて関わっていきたいですね。

Case4.保育園、学童に入れるか…子育て環境についての悩み

岡﨑「子育て環境(社会制度、入園など)」も悩みが多いようです。具体的には、「こどもが赤ちゃんの頃は、たとえ自分が風邪をひいたとしても育児はしないといけないし、歯医者などちょっとした用事にも行けなかった。夜も寝なくてストレスだったり、大人と話す機会もなく孤独でした(女性、こども6歳/小学生)」、「第二子が1歳のとき復帰を予定しているが、保育園入園が年度途中になるため入りにくい(女性、こども0歳/4歳)」、ちょっとした時の預け先や、仕事復帰と入園のタイミングで悩みを抱えているということですが、そのあたりはいかがでしょうか。
大豆生田先生こども未来戦略の中で「こども誰でも通園制度」が始まります。0歳6か月から満3歳未満のどこにも通っていないこどもたちが月一定時間利用できるという制度です。この制度の目的は、こどもや保護者が保育士や他の子育て世帯と関わる機会を作り、こどもの育ちや保護者の子育ての支えとなることです。
入園前にそういう機会があることで、保育園のことを知ったりいろいろな相談窓口にもつながり、気軽に相談ができるようになり、質問にあったような、入園に関する悩みの解決にもつながるかもしれません。

このことはビジョンの「5.こどもの育ちを支える環境や社会の厚みを増す」にもつながると思います。仕事と子育ての両立は職場の支えも大切です。社会全体でそういうことをバックアップしようということです。もうひとつは「3.『こどもの誕生前』から切れ目なく育ちを支える」ですね。支援する場とのつながりがない切れ目の時期が一番、孤独になり、不安になりやすいですよね。だからこそ、これからは、産前などからそうした時期にいつでも気軽に相談できるようなかかりつけ的な支援の場を提供し、手厚く相談にも乗っていこうとするのです。
また、例えば不適切な保育が心配だと思われている人もいるかもしれません。ですが、多くの園ではこども主体の質の高い保育をしようと頑張っています。ビジョンでいうと「1.こどもの権利と尊厳を守る」に関わる重要なポイントです。
こども基本法で、こどもはその権利の主体なんだということを位置付けており、こどもの最善の利益が守られるということや、こどもの声や思いがちゃんと実現されるんだということが記されています。保育の質の安心感は、入園にまつわる悩みの解決にもつながるのではないかと思います。

岡﨑「育児短時間勤務だと学童に預けられず、夏休みの行き先がない(女性、こども2歳/5歳)」というご意見もありました。小学校入学というのがひとつハードルになることも多いと思うのですが。
大豆生田先生これもビジョン3の切れ目にまつわる課題ですね。入学にあたっては、発達に心配のあるこどもの相談も含め、園も学校も自治体も力を入れているところだと思います。学童保育の充実についてもますます重要な課題です。

Case5.いざというときにどうしよう…相談、頼れる人がいない

岡﨑最後に、「相談、頼れる人がいない」という悩みもありました。「フルタイムで働き保育園に入れていると、ママ友もいないので信頼できる情報源がほとんどなく、ネットを頼るしかなかった。ネットは不安をあおる情報も多く、相談できる人がいないので心細いです。(女性、こども1歳)」、「仕事復帰し働いていたが、こどものことばが遅いため退職。幼稚園を転園し、療育に通わせようと思っているが手続きやどういったサービスを選んだら良いかわからないし、相談できる人がいない。(女性、こども3歳/中学生以上)」という声が寄せられました。いろいろな行政の相談先があって、どこに相談したらいいんだろうという悩みですが、こちらはビジョンでいうといかがでしょう?

大豆生田先生すべての子育て家庭が相談窓口や支援とつながれるような社会を作っていくというのが大きなテーマです。
ひとつはビジョン3のところで切れ目なく。特にこども未来戦略の中では「伴走型相談支援」といって、産前から相談できる体制がスタートしたり、同じ出産を控えているママ同士がつながる機会を設定したりするなど、地域子育て支援拠点などでさらに充実していくものと期待されています。
産前産後から、いつでも気軽に相談できるような場(園や支援センター等)や、同じ親同士も相談できる場が広がっていくことで、このことは解決してくるかなと思っています。
そしてビジョンの5とも関係してきますが、これまでこどもにあまり関わりがなかった人たちがこどもと関わることを促していきたいわけです。わが家もそうでしたが、子育てひろば等で、近所のおじいちゃんやおばあちゃんが赤ちゃんを抱っこしてくれたり、大丈夫よと言ってくれたりすることが支えになり、安心感が持てたということがたくさんあります。子育てを応援してくれる応援団が地域の中にたくさんできてくるというのが、これからこどもまんなか社会をつくっていくうえではとても大事なことになります。相談できる人がいない、という課題がこれによりかなり解決するのではないかと思います。

岡﨑そうですね。社会全体という中で、関わりがない人たちにどう理解してもらうか、私たちにできることはあるでしょうか。

大豆生田先生保育園や地域子育て支援拠点は重要な中核を担うと思っていて、例えば保育園だと散歩に出ますよね。“まち保育”といいますが、商店街や地域のいろいろな人とこどもたちがつながっていくことで、保育園を応援しようという応援団ができ、こどもの居場所ができるのは、こどもにとってもメリットが大きいことです。

ビジョンの5や3に関わってきますが、いろいろな世代の人が当たり前にこどもに関わるという機会を作っていくことで、こどももよく育ち、親の不安も無くなり、街の人も、こどもって大事だよねと思える社会を作っていけると思います。でもこれは簡単ではありません。このことにそれぞれの園や地域子育て支援拠点、関係各所、自治体が力を入れていくことが、支えになると思います。

岡﨑関わりのない人が関わるにはどうすればといいかと思っていましたが、お散歩というのはたしかに、声をかけてくれる人もいたりしますよね。
大豆生田先生現代の子育ては周囲からの支えられ感がなく、電車で赤ちゃんが泣いている時なども、声をかけていいのかな?という空気感を作ってしまっていたと思いますが、声をかけていいんだ、かけちゃおうよという社会にしていけることが大事なんだと思います。こどもに関わっていいんだという空気感を作っていくムーブメントを、こどもに関わる専門職の人たちから作っていってほしいですね。それがこどもを産み育てやすい社会を作るんじゃないかと思います。

岡﨑関わっていいんだ、というのはすてきな言葉ですね。
大豆生田先生現代は、こどもの頃に赤ちゃんや小さなこどものお世話をする経験がない若い世代が増えています。それでは、親になることに不安が大きいですよね。だからこそ、産前からの伴走型の支援が重視されるほか、これからは小中高校生、大学生などが赤ちゃんや小さなこどもにかかわる機会を増やしていくことも不可欠です。それは、乳幼児期のこどもの育ちに大切なだけではなく、児童や若者がこどもに関わることの喜びを感じる機会にもつながるのです。

それは、児童や若者だけではなく、中年や高齢者もそうです。多様な世代の多様な人たちがこどもに関わることの喜びを感じる社会が「こどもまんなか社会」なのだとも思います。

岡﨑そうですね、それがまた私たちの身近なところで感じられる社会になるといいなと思いました。
最後に先生からメッセージをお願いします。
大豆生田先生私自身は三人のこどもを育て、こどもの保育や教育を専門にしていますが、実際子育て中は悩みが大きかったです。そんな中で、ひとつは子育てひろばに支えられました。わが子を近所の高齢者の方に抱っこしてもらったり、同じ子育て仲間と出会えたりしたことは大きかったです。
また、うちの子が通った園では、こどものその子らしさが尊重され、遊び込む時間を保障してくれました。また、親の大変さも理解してもらえ、支えてもらいました。支えがあると、悩みも吹き飛び、まあいいかと思えるようになり、子育てが喜びにあふれるのです。
自分だけで頑張らなきゃと思うとつらくなりますが、こどもまんなか社会をつくるということは、周囲の支えをもっと充実させていこうということでもあるので、“みんなで子育て”という気持ちが、“親も子もワクワク”につながってくるかなと思います。
岡﨑そうですね、外に出るのが楽しみになりますね!
ああしなきゃ、とか〜しなきゃが多くなりがちですが、少し気を緩めて、社会全体で支えていけるといいのかなと思いますし、そういう社会が醸成されていくといいなと思いました。

こどもたちに健やかに育ってほしいという思いは、親だけでなく、誰もがもっていることではないでしょうか。このビジョンを共通の羅針盤として、当事者である保護者だけでなく、こどもたちを社会全体で支える「こどもまんなか社会」にしていけたら良いですね。

はじめの100か月の育ちビジョンについて
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プロフィール

大豆生田 啓友先生

玉川大学教育学部教授。青山学院大学大学院を修了後、青山学院幼稚園教諭などを経て現職。保育の質の向上、子育て支援などの研究を中心に行う。2男1女の父。幼児教育・保育・子育て本を中心に著書多数。

プロフィール

岡﨑奈穂子編集長

あんふぁん・ぎゅって統括編集長​。2004年より地域情報誌の編集に携わり、2010年「あんふぁん」編集部へ。​2017年「ぎゅって」創刊プロジェクトメンバーとして立ち上げに参加。​2018年「ぎゅって」編集長に。2020年より株式会社こどもりびんぐに転籍。​編集業務のほか、未就学児家庭の消費・行動調査、キャラクター事業等に携わる。​2023年「あんふぁん」編集長に就任。​

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