寝ているばかりだった赤ちゃんも、3カ月を過ぎて首がすわるようになると、次は寝返りやうつぶせで遊んだりするようになります。「さぁ、そろそろおすわり?」と気になるママも多いはず。おすわりの気になることを、小児科医の宮島祐さんに聞きました。

お話を聞いたのは

宮島祐さん

東京家政大学子ども学部子ども支援学科教授、学科長、同大学院教授。東京医科大学医学部兼任教授〈小児科学分野〉専門:小児神経学、臨床脳波学、発達障害。保育士・幼稚園教諭を目指す学生に特別支援教育を中心に教鞭をとりつつ、かせい森のクリニック・東京医科大学病院で発達神経外来を担当。著書『小児科医のための注意欠陥多動性障害の診断治療ガイドライン』(中央法規出版)他。

index目次

おすわりの時期は、何カ月から?

手が自由に使えることが、そろそろ「おすわり」の合図

おすわりの時期は、生後6~7カ月が目安です。この頃には、赤ちゃんの動きも活発になり、頭や手足を盛んに動かすようになります。そして、ちょっとしたタイミングで寝返りもできるようになった子もいるでしょう。

また、あおむけになって手を上げて遊んでいたり、自分の足をつかんだり、口元に運んで舐めていたら、それは「手を自由に使えている」ことの証です。そして、この「手を自由に使える」ことが、おすわりの前段階として重要なポイントになるのだそう。


「あおむけになり、重力に逆らって腕を上げ、足をつかむという動作は、首がしっかりすわっていて、背中の筋肉が発達していないとできない動きです。

ですから、“おすわり”と“手が使えること”というのは、一見、関係がないことのように思われるかもしれませんが、見逃せないポイントです。」

追視を始めたときから、「おすわり」の準備は始まっている?

赤ちゃんが、“何のためにおすわりをするのか”ということを考えたことがありますか?じつはそこに、もうひとつの見逃せないポイントがありました。

「赤ちゃんは生後1カ月の頃から追視を始めます。いつも抱っこしてくれるママを目で追うようになるのです。そしておすわりは、この“追視”の延長線上にあります。

もっとママを見たい、世界を見たいという気持ちが、うつ伏せで頭を持ち上げる動きから、さらにおすわりへと赤ちゃんを導くのです。

じつは、目の見えない赤ちゃんは、おすわりを始める時期が遅くなる傾向があります。それは、わざわざ重い頭を持ち上げて3次元にものを見る必要性が弱いからと考えられます。」

からだの動きと視力

1~2カ月 追視の始まり 視力0.01~0.02
人や物の形がぼんやりとわかるようになり、動くものを目で追うようになります。聞きなれた人の声に反応して、その方向を見るようにもなります。
3~4カ月 首すわり 視力0.04~0.08
奥行きが少しずつ認識できるようになります。首の筋力が発達し、うつぶせにすると、顔を持ち上げて周囲を観察できるようになります。ママの姿を、首を持ち上げて目で追うようになるのもこの頃です。
6~7カ月 おすわり 視力0.1
奥行き・距離感がつかめるようになっていきます。パパやママの顔がわかるようになり、早い子では人見知りも始まります。おすわりができるようになると、上下左右により広い視野で周囲を見ることができるようになります。

同じ月齢の子は出来ているのに、どうしよう…。

7カ月をすぎても、4人に1人はおすわりできない

発達には個人差があり、「〇カ月だから絶対にできる」というセオリーはありません。おすわりも、5カ月でできるようになる子もいれば、7カ月を過ぎてもしない子もいます。

とくにぽっちゃりさんは、動きが鈍くなる傾向があるので、少し遅くなっても心配せずに見守りましょう。また、おすわりをする時期に、男女差はほとんどありません。

「7カ月の時点でおすわりができる赤ちゃんは、全体の75%と言われます。4人に3人はできますよ、ということです。でもこの数字は、4人に1人の赤ちゃんは、7カ月を過ぎてもおすわりができませんよ、という意味でもあります。

ですから、7カ月になっておすわりをしなくても、ほとんどの場合は心配いりません。ただしこのとき、“手を自由に使えているか”が、今後の発達を見極めるポイントになりますので、注意して観察してくださいね。」

おすわりの教え方ってあるの?

「ファーストおすわり」を誘う練習法は?

赤ちゃんの首がすわったら、縦抱きにして赤ちゃんの視界を広げてあげましょう。ママとも正面から顔を見合わせることができるようになりますし、赤ちゃんの好奇心の刺激にもつながります。

「赤ちゃんと目を合わせ、笑顔を交わすことはとてもママにとっても大切なことです。こうした非言語性のお互いの働きかけのなかで育まれる絆は、エントレインメント、つまり母子相互作用と呼ばれています。

こうした絆を背景に、赤ちゃんは外の世界への好奇心を広げ、安心して冒険の旅に出ることができるのです。」

おすわりは、これまでの寝ていた姿勢から、初めて縦の姿勢となること。赤ちゃんにとっては不安もたくさんあることを理解して、最初はママの膝の上で座らせてあげることから始めてみるのもいいでしょう。

また、エントレインメントは、俗に幸せホルモンとも呼ばれるオキシトシンや母乳をつくるホルモン、プロラクチンの分泌を盛んにし、ママに女性としての輝きも与えてくれるのだそう。赤ちゃんと笑顔を交わす幸せな時間は、ママにとって思わぬ効果も期待できそうですね。

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バランスボールで手足の動きを確かめる

おすわりを目指す6カ月頃になったら、直径50cm位のバランスボールを使って体幹のバランスをとる練習をしてみるのもいいいでしょう。赤ちゃんが落ちないように安全を確保しつつ、バランスボールの上に腹ばいに乗せてみましょう。

このとき、赤ちゃんが両手でしっかりとボールをつかもうとしていたら、おすわりをそろそろ始める目安になります。

また、ボールをゆっくり後方に回して足を床につけたときに、赤ちゃんが自分の足で床を支えようとする動きをするかどうかで、足を使えるようになっているかどうかを見ることができます。

「6~9カ月は、赤ちゃんがからだを自由に使い始める時期です。バランスボールを使うことで、手足の働きが機能しているかどうかも見極めることができますよ。ビーチボールを代用してもいいでしょう。」

うちの子のすわり方、大丈夫?

“ぺちゃんこすわり”が気になります

6カ月頃のおすわり初心者の赤ちゃんは、手を前について背中を丸くして座っています。それどころか、腰を支えてあげないと座っていられない子もいることでしょう。

しかしだんだんに背中の筋肉も強くなり、7か月には、多くの子がお尻をしっかりと床につけ、ひとりで両手を使って遊ぶことができるようになります。

でも、なかには正座の足を崩したように外側に開いて、両足の間にお尻を落として座る“ぺちゃんこすわり”をする子もいて、心配になるママもいるかもしれません。

「乳児検診で股関節脱臼の検査をすることからわかるように、赤ちゃんの関節はルーズです。とても柔らかくできていますから、おすわりの際の座り方は気にしなくて大丈夫です。

関節は荷重するにしたがって、靱帯や筋肉も発達して、しっかりしていくもの。赤ちゃんが、座るという動作が取れていれば、神経質にならずに様子を見ていけばいいでしょう。

ただし、片方はしっかりしているのに片方は力が入ってない、長さが違う、太さが違うなど、極端な左右差があるときには医師や保健師に相談してください。」

【左】6カ月前後:からだを手で支えている間は、長い時間座っていることはできません。【右】7~9カ月:手が開いているのは、「ものをつかめるよ」という証です。おすわりが安定してくると、からだをねじり、後ろや横のものもつかめるようになります

「倒れそうで心配」大人が気を付けるべき事は

おすわりで転んでも大丈夫

おすわりを始めたばかりの頃は、安定して座っていたかと思うと、ちょっと目を離した隙に突然、後ろや横に倒れることもあります。そして床にゴンと頭を打ってしまい、赤ちゃんは大泣き…なんて経験をしたママも多いのではないでしょうか。

赤ちゃんが頭を打つと、ママはとても心配になるもの。でも、おすわりをしている赤ちゃんが、ゴロンと自分で倒れたぐらいでは、問題が起こることはまずありません。まずは慌てずにしっかりと抱っこして、転んでびっくりしている赤ちゃんの不安を解消してあげましょう。

「ただし、床に尖ったものなどがあると危険です。おすわり初心者の赤ちゃんのまわりには角のあるおもちゃなどは置かないようにしましょう。

また、この時期は何でも口に入れてしまうので、おもちゃは赤ちゃんが飲み込まないサイズのものを選ぶようにしてください。

赤ちゃんの口の大きさは母子健康手帳にも記載されている“誤飲チェッカー”で確認できますので、おもちゃを選ぶときにはぜひ参考にしてください。」

母子手帳の「チャイルド・マウス」は、子どもが誤飲する可能性がある直径39mm以下のものを簡単にチェックできるツール

おすわりに役立つアイテムは?

赤ちゃんを支えるU字型の授乳クッション

はぐまむ「洗える授乳クッション」1851円(税別)。授乳中に使ったクッションは、おすわり初心者の赤ちゃんに便利なアイテムです

後方や左右に倒れそうになる赤ちゃんをサポートします。授乳クッションがない場合は、枕やふとんを丸めて赤ちゃんの周囲に置いておくのでもいいでしょう。

手を伸ばしたくなるおもちゃ

赤ちゃんが手をついて座っていたら、目の前にお気に入りのおもちゃをおいてみましょう。やがて赤ちゃんは、手を床から離しておもちゃをつかみにいくことでしょう。

「おすわりを嫌がる、遅い」どこに相談したら?

おすわりよりハイハイが先だったら?

赤ちゃんは、首、背中、腰、足というように、上から下に成熟させていきます。つまり多くの場合は、からだ全体を使うハイハイよりおすわりのほうが、早くできるようになります。

もし、ハイハイはするのにおすわりを嫌がる場合には、必要性を感じていないのか、おすわりが赤ちゃんにとって不愉快な動作になっている可能性があるかもしれません。

「体幹のバランスが悪いとおすわりがしにくい場合があります。また、音に敏感、かんしゃくが強いなどの傾向がある。または我関せずといった雰囲気や、独特な動きをするなどの場合は、何か別の問題があるサインかもしれません。早めに専門家に相談することをおすすめします。」

子育てのバイブル「母子健康手帳」を活用して

子育てをしていると、「同じ月齢の赤ちゃんができていることが、うちの子はできない」と心配になるママも多いことでしょう。また育児の情報もインターネットにあふれていて、自分にとって何が正しい情報なのか、わからなくなることもあると思います。

そんなときにぜひ活用してほしいのが『母子健康手帳』。ここには、妊娠期から乳幼児期までのママと赤ちゃんが知っておくべき健康に関する情報がすべて記載されています。

「赤ちゃんの成長は、早ければいい、というものではありません。たとえば6~7カ月の記録のところに、おすわりをしますか(7カ月頃)との記述がありますが、これは“この月齢まで焦らなくていいですよという意味。

7カ月までにできていなければいけない、という意味ではありません。ただしこの場合、8カ月ではどうか、9カ月ではどうだろう? と経過を小児科医と相談しながら観察していくと安心ですね。」

ひとりで悩みを抱え込まず、周囲の人を巻き込んで

育児をするなかで、悩み、不安を感じることはけっして恥ずかしいことではありません。その悩みや不安を解消する手段として、『母子健康手帳』や乳児検診があり、小児科医や助産師、保健師、看護師という専門家のサポートがあるのです。

「子を授かることは、女性にしかできない、非常に尊いことだと男性の小児科医として感じています。その尊さをパートナーやおじいちゃん、おばあちゃん、周囲の方々、医療や福祉の専門家、社会全体で支えているのです。

ママは悩みをひとりで抱え込む必要はありません。母親なんだから、がんばらなきゃ、とも思う必要もありません。周囲の人を上手に使って、自分らしく子育てしやすい環境をつくっていってくださいね。」

この記事を書いたライター

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毛利マスミさん

フリーライター&エディター。娘が幼児の頃「勉強するなら今しかない」と思い立ち、社会人学生となって臨床心理学を修める。さらに赤ちゃん好きが高じて、保育士免許も取得。中学生となった娘に「孫育てが楽しみ」と言っては、煙たがられています。

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