ママ友、職場、家族など、とかく悩みは「人間関係」によることが多いもの。なかでも、“困ったモンスター系”の人はなかなか厄介です。トラブルに遭遇したら、下園さんのアドバイスを参考にしてみて。

お話を聞いたのは

下園壮太さん(メンタル・レスキュー協会理事長)

1982年陸上自衛隊入隊。メンタルヘルス教官として、大事故や自殺問題、惨事対処など多くのカウンセリングを手がける。2015年定年退官し、現在はNPO法人メンタルレスキュー協会理事長。一般向け「感情ケアプログラム」の普及にも務めている。>公式ホームページ

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“モンスターなあの人”実は…。

首都圏に住むMさん(フルタイム勤務・小学6年母)が、こんな悩みを寄せてくれました。

「PTAの係が一緒になった、とあるママ友が、いつも怒ってばかりいるんです。“作業の進め方がおかしい”とか、“あの人は変だ”とか、口を開けば悪口や批判ばかり。

周りも嫌がっているのですが、だれも止められない。先日私も、学校行事での子どもたちへの景品の配り方という、本当に小さなことでもめて、キツイ言葉で責め立てられてしまったんです。

放っておけばいいのですが、中学校でまた一緒かと思うと気がめげちゃって…。」

怒ってばかりいる人というのは、実は、自信がない人なのですよ。

と下園さん。なぜ、自信がない人は怒りっぽくなるのでしょうか。ここで「自信」とは何かを考えてみます。

  • 「自信がある」とは、「自己イメージ」が「課題・対象」より大きいこと
  • 「自信がない」とは「自己イメージ」が「課題・対象」より小さいこと

適度な自信が持てるときは、「うん、なんとかできそうだ」という感覚です。

一方、自信は“感情”と表裏一体。「自己イメージ」が小さい人は、世の中が大きく見えて、警戒心が強い状態。ビクビクして、不安や怒りが発動しやすくなります。

つまり、逆にいえば、怒りやすかったり、必要以上に不安がったりする人は、「自己イメージ」が小さい。“自信のなさ”を抱えた人が多いのです。

「このママ友さんのモンスター的な言動も、自信のなさの裏返しと考えられますね。」と、下園さんは言います。

被害妄想大な人にも理由が

ほかにも、職場や地域にいる“困った人”で多いのが、「被害者意識が強い人」です。

「私はこんなにやっているのに、正当に評価されていない。」「私は悪くないのに。」、このテの発言や態度が行き過ぎて、トラブルになったり、周囲を困らせたりしている人はいませんか。

「被害妄想が大きい人は、つらかった過去の“記憶(=恨み)”がそうさせていることが多いのです。もしくは、現在うつ状態など心身の蓄積疲労がたまっているか。いずれにしても世の中への警戒心が高いので、それが被害者意識という形で現れるのです。」

背景を理解できたら、少しは優しくなれる?

いえいえ、前述のMさんのように、実際に心が折れたら、なかなかそうも言っていられません!トラブルに遭遇したとき、自分のメンタルを守るためにはどうしたらいいのかを聞いてみました。

「離れる」は大人のスキル

「30年以上カウンセラーとしてさまざまなケースを担当してきましたが、はっきり言えるのは、他人を変えることはできないという事実。

あなたを困らせる人がいるのなら、オススメは相手にまともに対応するより、その相手から“離れる”。そして、“傷は自分で手当てする”。この方が結果的に早く傷が癒えて、メンタルを守るのです。」

「離れる」というのは、“逃げ”ではないかと感じる人も多そうですが…。

「子どものころ“イヤなことから逃げずに立ち向かえ”というメッセージを刷り込まれて育った私たちには、ダメなことのように感じてしまいます。

でも、大人は人間関係をはじめとして理不尽なストレスにも対応しなければならない。

乗り切るために、“離れる”は、大人だからこそ備えたいスキル。

選択肢に入れておきましょう。」

逆に大人が頼りすぎるのが、「我慢」「忘れようとする」こと。

一時的には有効なのですが、感情を押さえつけることで疲れて苦しくなったり、「記憶(=恨み)」に残りやすくなったりして、のちのメンタル面への影響が大きいのだとか。

メンタルを強くする「7~3バランス」

「自分の心の傷の手当て」(=感情ケアプログラム)は、次の3つのステップで行います。

ステップ1:感情を落とす

怒りや不安などの感情を感じたら、まずはその対象から離れる。物理的にできないなら、呼吸法や注意をほかにそらして、感情のレベルを落とす。

ステップ2:感情に触れる

ピークが過ぎて落ち着いたとき、その出来事や対象をあえて思い出して、その感情に意図的に触れてみる(感情に巻き込まれそうになったら直ちに中断。落ち着いたときに再トライを)。

ステップ3:感情を分析、考える

「なぜあんなに怒りを感じたのか?」など、その出来事について考え、分析しておく。分析することで、感情は真の意味でおさまりやすくなる。

そこで、ステップ3「感情を分析、考える」方法の一つ、「7~3バランス」について紹介します。

7~3バランス

  1. 問題となっている出来事について、自分自身がどのように行動したらいいのか、極端な二者択一の選択肢を考えてみる
  2. 例:「嫌なママ友がいる。極端な選択肢は、行動A案=じっと耐える、B案=絶交する」

  3. 次に「A案」をゼロ、「B案」を10としたときに、「7~3」の間に収まる行動案を考えてみる
  4. 例:「バランス7の案=会長や役員に相談してみる。3の案=同じ係を外してもらう、など」

「人は苦しいときほど、極端な案しか考えられず、結局行動に移せずいつまでも悩むことに。“7~3バランス”で考えると、極端でないぶん、行動を取りやすくなります。行動すれば、必ず事態は変化します。

また悩むかもしれませんが、それも7~3で行動する。悩みを行動のエネルギーにするのです。このようにして対処すると、自分で自分の行動を選んでいる、という感覚が育ち、それが、あなたの“自信”に変わっていきます。」

最後に。とても大事な注意点として、下園さんよりメッセージがありました。

「感情のセルフケアは大切ですが、実際の状況が虐待やいじめ、ハラスメントに当たる場合は、ただちに現実的、物理的な対処をしてください。信頼できる相談相手を持って、状況をよく見極めるようにしてくださいね。」

この記事を書いたライター

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向山奈央子さん

フリーライター&エディター。仕事で走り回りすぎて、気付いたら一人娘は中学生に育っていた! ライフワークで「感情ケアプログラム」指導者コース修了。忙しいワーママを見ると、つい(聞かれてもいない)アドバイスをしてしまう。

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