/ 2017.08.25

災害が起きたとき、子どもや家族を守るにはどうしたらいい? 防災の日を前に、災害を経験したママにそのとき起きたこと、その後備えていることを教えてもらいました。1人目は広島土砂災害を経験した高木理恵さんです。

水曜日の夕方、さらに強まる豪雨。そのとき、2歳児ママの高木さんは…

広島市安佐南区の3階建てアパートの2階に、当時2歳7カ月の長男と夫の3人で暮らしていた高木理恵さん。大雨注意報が出ていた夕方に夫が帰宅。その後さらに雨脚は強まり、夜には大雨警報に。家族3人で自宅にて屋内待避をしました。

「自然災害はなんとなく不安だけれど、何も対策をしていませんでした。停電になったとき、懐中電灯すらスムーズに取り出せず困りました。LINEで“懐中電灯もない”と言ったら、ママ友が懐中電灯アプリの情報をシェアしてくれ、夫とインストールしたのを覚えています。」

災害後は、手動発電が出来る携帯ライトを持ち歩くように

普段から子育てサークルや子育て支援のオープンスペースを利用し、近所にママ友がたくさんいた高木さん。

「山側に住むママ友には、“なにかあったら、うちにおいで!”と声をかけあいました。」

ママ友と周辺の状況や情報を共有できたのが心強かったそうです。災害時に一番役立つのは、日ごろからの“ご近所付き合い”と高木さんは言います。

夜が明け、明らかになる被害状況に愕然

未明にかけ土石流が発生し、根谷川が氾濫。夜が明け被害状況が明らかになります。

前夜から降り続く雨となりやまない雷に怯えながら眠りにつきました。早朝、ヘリコプターとサイレンの音で、ただならぬ予感がしました。TVをつけると、いつも見ている景色の悲惨な状況。どうでしょう?(中略)考えるだけで何もできずに1日が終わりました。

出典:子育て・サークル応援グループ MaMaぽっけ「私たちが体験した“広島8.20 豪雨被害”報告号」

窓から何度も川が氾濫しないか確認しながら夜中を過ごしました。(中略)川向こうの景色が土砂崩れで家が崩れて無くなっていたり…(中略)川の水がひいて来た頃には、砂一色に変わっていました。何かしたいけれどどうしたらいいのかもどかしい気持ちにかられました。

出典:子育て・サークル応援グループ MaMaぽっけ「私たちが体験した“広島8.20 豪雨被害”報告号」

高木さんもママとして大きな衝撃を受けます。

「大規模な土砂災害があった場所から我が家は離れているのですが、近所でもお子さんが2人亡くなりました。同じ母親として心情を察するに余りあるものがあります。」

被害地域に住む同じ母親の一人として「ほっておけない!」。そんな気持ちに突き動かされ、高木さんたちは活動をはじめます。

私に、できることは何か

「災害が発生して何より驚いたことは、広島が土砂災害危険箇所の数が全国トップクラスだったこと。生まれてずっと広島にいますが、そんなことは知りませんでした。」

まずは自宅周辺の災害リスクを知り、自分で判断できる材料を持っておくことが必要…。当時子育てサークルの代表をしていた高木さんは、メンバーが住む自宅周辺の土砂災害危険箇所のハザードマップを作成し、活動日にみんなで今回の災害について話をしました。

「専門知識なんて必要ないと思います。どんな自然災害でどんな被害があって、何人の小さな命が奪われたのだという過去の災害を知り、わが家にあてはめることで、少しずつ防災意識に変化があった気がします。」

活動の報告書

そのほか子育てサークル Mamaぽっけとして、避難所に子どもたちの遊びスペース作る活動、被害を受けた家の片付けを手伝うおそうじ隊への参加、被災した地域の中学校の制服集めに取り組み、活動は今も続きます。

わが子の命を守るために最低限必要な備えは

災害を経験した今、高木さんはどのような防災グッズを用意しているのでしょうか。教えてもらいました。

question常備している防災グッズは?

ホイッスルとライトは、マザーズバッグに携帯

ネットで非常用持ち出し袋の中身を調べるとそのかなりの量があり、「こんな大きな荷物を抱えて、子どもと避難なんてできない」と思いました。簡易トイレなどを自宅に準備はしていますが、第一に考えることは、大切なわが子の命を守ることです。

常に持ち歩けるもので挙げるとすれば、防災用ホイッスルとキーホルダーサイズのライトです。瓦礫の中から吹けば、きっと誰かが助けに来てくれる!防災意識が低かった私ですが、今は常に持ち歩いています。

おむつやおしりふきが入ったマザーズバッグ。ホイッスルと携帯ライトはここに携帯
ホイッスルの中にメモがあり名前や住所を書いています

腹帯だって立派な防災グッズ

「災害が起こった3年前は、当時2歳7カ月の息子1人でしたが、去年8月に2人目が生まれ、豪雨があるたびに乳児を連れて避難することへの不安を感じています。安産祈願のときに母からいただいた腹帯も、いまは防災グッズです。

ガーゼやタオル代わり、さらには包帯にもなりますし、抱っこやおんぶにも使えます。長い紐1本で抱っこやおんぶができます。腹帯1本持って避難出来たほうが身軽ですし、他の用途もあり、実用的だと思いました。

コツがいるので普段から使ってないとダメですが。まだまだ私も知ったばかりなので、浸透すればいいなと思います。」

question自宅に備蓄しているものは?

子育て用品は、ローリングストックで

「子育て中の家庭は日々がめまぐるしく、非常食の賞味期限をチェックする手間や大量の避難グッズを自宅に保管することは、現実的ではないと思います。

私は常に日用品のローリングストックを意識しています。長時間の停電でも食べられるレンジ不要のベビーフード、自然災害で外出不可になったときおむつが残り3枚!ということにならないように、おむつやおしりふきは普段から余裕をもってストックしています。

ドラッグストアのポイント2倍や4倍のときに、必ずお店にでむくようにすれば、自然とローリングストックができます。おむつは災害時トイレがないとき大人も使用できますし、おしりふきはお風呂に入れないとき便利だと聞いたことがあり、多めにストックしています。」

ママたちへのメッセージ

身近で災害が起き大切な守るべき小さな命がある今、完璧な防災ではなく自分にできることをひとつひとつ増やしていこうと思いました。安佐南区は転勤族が多く土砂災害の怖さ・危険を知らないお母さんたちがいるため、子育て世代向けの防災講座の企画など、地域の活動に参加するようになりました。

家族や友人、職場の人と自然災害についておしゃべりする機会を意識的に設け、もしものときのことを想像してみてほしいです。そうすると、今できることが見えるはず。完璧な防災より身近な防災を!

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