働く環境の変化で残業や飲み会が減り、子どもと過ごす時間が増えたパパが多いようです。今号は、パパの子育てについてもっと知るために玉川大学の大豆生田啓友先生にお話を伺いました。

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お話を聞いたのは

大豆生田啓先生

玉川大学 教育学部 乳幼児発達学科教授。専門は幼児教育学、保育学、子育て支援。幼稚園教諭の経験を持つ。NHK「すくすく子育て」に出演中。役立つアドバイスにママたちの信頼が厚い。

▶パパの疑問「こんなときどうする?」Q&Aはコチラ

ぎゅってがパパを対象に行ったアンケートでは、「子どもの成長を毎日間近に感じられてうれしい」「妻の大変さが分かった」など、おうち時間を過ごす中でこれまでにない発見があったという声がたくさん届きました。

Q:あなた(パパ)は今、子育てが楽しいですか?

Q:子育ての悩みや疑問はありますか?

2020年9月4日~10月4日:ぎゅって・あんふぁん読者パパアンケートより。有効回答数 651人

価値観・個性が異なる二人が一緒になって育てることの良さ

パパの子育ての特長として、子どものことを持ち上げたり、ぐるぐる回したりといった体を使うことが得意な人が多いということが挙げられます。しかし、重要なのはママとは異なる個性を持ったパパが関わるという点にあります。これまでの研究でも、父親が子育てに積極的に関わっていた場合のほうが、子どもの社会性やコミュニケーション能力等にプラスの成果があるということが分かっています。

また、パパが子育てや家事に積極的に参加することは、ママの機嫌の良さ、心の健康にもつながるため、ママにもプラスに働き、結果的に子どもも良い影響を与えるのです。

さらに、子育て・家事をすることがパパ自身のライフスタイルや仕事の在り方にも広がりを見せるといったプラスの効果をもたらします。

仕事の時間や負担に差はあるのかもしれませんが、夫婦で共に働いているのなら、子育てや家事についてもそれ相応に担うという考え方にしないとうまくいかないこともあるでしょう。家庭を大事にすることで初めて、家族の中での存在感が生まれてくるのです。

「ママがいい」には関わる時間を増やすこと。ママのサポートも大切

「パパじゃなくてママがいい」は多くのパパが抱える悩みです。これは「ママだからうまくいく」のではなく、普段から子育てや家事をしていたとしても、関わっている分量がママのほうが多いのならば、仕方がない部分もあります。少しずつ得意なことからパパが関わる部分を増やし、子どもの信頼を獲得していくのが良いでしょう。家庭にいる限られた時間の中で参加しやすいこと、読み聞かせやボールなどパパ自身が好きな遊びなど、いろいろ試してみてください。

寝かし付けやお風呂などの場面において、泣かれて騒がれてもすぐに諦めないで。ママから「お風呂でこんなことするとうれしそうだよ」などアドバイスをもらうといいかもしれません。また、ママも「ママがいい」と言われてもすぐには助けず、「パパだとダメなんだよね」などとは言わずに一緒に解決策を見つけてみましょう。 

それでも難しい場合は家事をやるなど、ママのサポート役を頑張るのも良いでしょう。

パパもママと同じように子育てに悩んでいる!

  • しつけや怒り方がいまいち分からない。(5歳児パパ)
  • 子どもが言うことを聞かないときに、それほど大したことでなくても自分の機嫌で怒ってしまうことがある。(4歳児パパ)
  • 泣いたとき、どう対応したらいいか分からない。(5歳児パパ)
  • 共働きだから平日に子どもと遊ぶ時間がなく、夜はご飯→風呂→寝るまでゆっくりできる時間がありません。そのため、子どもにストレスが溜まってないか心配です。(1歳児パパ)
  • 娘の気持ちが分からない。(2歳児パパ)
  • トイトレがうまくいかない。(2歳児パパ)
  • 何度言っても同じことをしたり、すぐ泣いて癇癪(かんしゃく)を起こすので、自分もイライラしてしまう。ママが大好きでママじゃなきゃいけないことが多い。(4歳児パパ)
  • パパイヤ期なのか、抱っこしようとしたり寝かし付けしようとすると激しく泣く。(2歳児パパ)
  • 仕事が忙しく、平日はほとんど妻任せ。共働きのため、妻への負担が大きい。(3歳児パパ)

シングルで子育てをしているママ・パパへ

冒頭で「個性に違いのある夫婦が子育てに関わることが大事」とお伝えしました。するとシングルはダメなのではないか、と思ってしまうかもしれません。しかし、それは夫婦でなくてもいいんです。

今の家庭はママとパパ、あるいはママだけになってしまいがちですが、昔はおじいちゃんやおばあちゃん、近所の人などいろいろな人に子どもは育てられてきました。ですから祖父母・親戚や友人でもいいんです。大切なのはいろいろな大人、信頼できる大人が複数いるということ。そのことにママ・パパ自身も支えられるでしょう。一人で頑張らなくてもいいんです。

シングルだからといって子どもが良く育たないということは決してありません。子どもはママ・パパが一人で頑張っているということをよく分かっているからです。しかし、いろいろな人との関わりは大切です。もし可能であれば、協力してくれる人との関係も大事にすると良いでしょう。

※この記事は、2020年11月発行の「ぎゅって12月号首都圏版」に掲載した記事を再編集したものです

イラスト/米村知倫(Yone)