幼児期によくある悩みのひとつが「どうやって叱っていいのか分からない…」という問題。私も保護者からよく相談されるテーマです。今日はモンテッソーリの教師が現場でどんなふうに接しているか、「叱り方」をテーマにお伝えします。

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「叱る」とはどういうこと?

「子どもの気持ちに寄り添いたいとは思うのですが、叱らなければならないときはどう伝えたら良いのでしょうか?」。保護者からよく相談されることの中でもよくあるテーマのひとつが「叱り方」です。

「叱る」とは、単に「怒る」ことではありません。私が考える「叱る」とは、子どものやったことに対し、よくないことであると伝えてその後の行動変容へと導くことだと考えています。当然ですが、大人が怒りをぶつけるだけでは子どもの行動は変わりません。

私もなるべくなら子どもを叱りたくはないのですが、日常生活の中で伝えなければならないルールや子どもの安全を守るために必要なことはしっかり伝えます。

子どもが危険なことを行なっている場面では、まずその行動を制止してから落ち着いて話します。押さえておくべきポイントは次の3つです。

  1. 「行動」を叱る
  2. 子どもの言い分を聞く
  3. どうすべきなのか「具体的に」伝える

次にお伝えする内容を確認した後は、大人がまず叱り方の練習をしてみることをおすすめします。何か起きたとき、とっさにうまく叱るのは難しいものです。家庭でよくある子どもとのやりとりを想定して、ぜひ練習をしてみてください。

1.「行動」を叱る

第1段階では、子どもがやったこと・直してほしいと思う具体的な行動について子どもに話します。

例えば、お友達をたたいてしまった子どもには「たたくのはよくないよ」「お友達がけがをするよ、やめてね」「あなたもたたかれるのは嫌よね?」など何がいけなかったのか、わかりやすく、はっきりと伝えます。

このとき避けるべき叱り方があります。

  • 子どもの人格を否定する言い方
  • 「あなたは悪い子」などと子どもそのものを否定する言い方や「ほら、◯◯君があんなことをしているよ」などと周りの子どもを巻き込む言い方も避けます。

  • くどくどと長時間叱る、例え話をする
  • 長い時間叱っても、子どもには伝わりにくいだけです。手短にはっきり伝えてみましょう。例え話など周りくどい言い方も効果がありません。

  • 疑問形で叱る
  • 「この間も言ったよね?」「どうしてあなたは〜なの?」などはかえって混乱します。子どもは理由を聞かれていると思って一生懸命答えようとするかもしれませんが、大人が欲しいのは理由ではないはずです。よって、ほんとうに訳を知りたいとき以外はこの台詞は封印します。

  • 大声で叱る
  • 子どもが萎縮してしまい、話を聞くことができなくなります。普通の声でしっかりと伝えましょう。

2.子どもの言い分を聞く

子どもの行動の背景には何かしらの理由があるかもしれません。頭ごなしに叱るだけではなく、場合によっては子どもの言い分も聞きましょう。お友達をたたいた場合ならば「何かされたの?」「何かあったの?」と聞いてみます。子どもが話し始めたら、遮らずに耳を傾けます。

ただし、幼児期の子どもにとっては明確に理由がわからないこともあります。あまりしつこく聞くと、子どもが無理に理由をひねり出そうとすることもあります。そんなときには尋ねすぎず「そうだったのね、嫌な気持ちだったのね」と受け止める程度にしておきます。

3.どうすべきなのか「具体的に」伝える

何がいけなかったのか、どうするのがよかったのか子どもに伝えます。大人の気持ちに余裕がないとき、特に忙しいときにはつい、第1段階だけで終わってしまう場合があるかもしれませんが、今後の行動を直して欲しいと思うならば叱りっぱなしにせずに「わかった、こうすればよかったんだね」と子どもが納得して会話を終わらせる必要があります

たたいてしまった場合なら、「次はたたかないで、口で言おうね」「言ってもダメなときは先生を呼んでね」「ごめんねって言えるかな?」などと具体的な解決法を子どもに話します。

肯定的(ポジティブ)な言い換えも効果的です。「早く朝ごはんを食べないと、遊びに行けないよ」のように「〜しなくちゃダメ」「〜しないと、〜できないよ」などネガティブな言い方をポジティブな言い方に変えてみましょう。

同じことを伝えるにしても「朝ごはんを食べたら、遊びに出かけられるよ」「早く終わったら、たくさん遊べるよ」の方が前向きな気持ちになりますよね。ぜひポジティブな言い方で子どもの行動を促してみてください。

幼児期の子どもが行動を変えるには時間が必要です。一度言っても、また同じことを繰り返してしまうこともありえます。急な変化を期待せず、じっくり関わりましょう。叱ったポイントについて覚えておいて、うまく行った時に褒めると行動の強化につながります。子どもが行動を変えられたときには、ぜひしっかりほめてあげてください。

「たたかないでお口で言えたね!」「朝ごはんをいつもより早く食べられたね!」

子どもの頑張りを見ているとしっかり伝えられたら、さらに子どもとの距離が縮まりますよ。

この記事を書いたライター

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堀田はるなさん

モンテッソーリ原宿子供の家・モンテッソーリすみれが丘子供の家教員、保育士。アパレル業界、eコマース、金融など様々な業種でのマーケティング業務を経験後、教育の道へ転身。日本モンテッソーリ協会承認モンテッソーリ教員免許取得。著作「子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド」。

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