「危ないよ!」「ダメだよ!」毎日続く子どもとの攻防戦。ケガや事故から子どもを守りたい。とはいえ、もっと自由にやりたいことに挑戦させてあげたい。アンケートから見えてきたぎゅって読者の悩みに答え、親子の安全力と子どもの好奇心の育て方について、「日本こどもの安全教育総合研究所」代表の宮田美恵子さんに聞きました。

後半は、ぎゅって読者が見かけて驚いた、親子の危ない行動目撃談について検証します。

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教えてくれたのは

宮田美恵子さん

日本こどもの安全教育総合研究所理事長。博士(順天堂大学)。幼児・児童・生徒を対象とした安全教育、成人への市民安全活動支援に力を入れている。You Tube チャンネル「日本こどもの安全教育総合研究所」でも子どもの安全について発信。

※読者アンケートは2021年12月2日〜2022年1月10日実施。回答数:2619

自転車編

  • 自転車に子どもを乗せたまま外で待たせ、お母さんがスーパーで買い物。自転車が倒れたらと思うと、ヒヤヒヤでした。(4歳のママ)
  • 走行中の自転車の後部シートに、シートベルトもヘルメットもしていない子どもが立ってふざけていました。(2歳のママ)
  • 自転車の後部座席で眠ってしまった子どもの体が傾いて、頭がシートの外側にかなりはみ出していました。あの走行スピードで、どこかにぶつけたら危ないと思いました(2歳のママ)

<アドバイス>

自転車に子どもを乗せたまま、その場を離れるのはやめましょう。転倒だけでなく、連れ去りの危険もあります。ヘルメットも必須。子どもが嫌がるなら、気に入ったヘルメットを選ばせる、「家族全員がかぶる」をルールにするという手も。

放置編

  • 駐車場を走り回る子どもを放置。どの車がいつ動き出すか分からない状況で、とても怖いと感じました。(0歳・5歳・小学生のママ)
  • 公園で3歳くらいの男の子がキックバイクで転んでおでこから出血。パパは友達一家と虫取りに熱中していました。(1歳のママ)
  • 子どもが中にいるから、と車のエンジンをかけたまま大人だけで買い物に出かけ、その間に子どもが運転席に移動していました。(0歳・3歳・5歳のママ)

<アドバイス>

子どもを一人にしてはいけません。でも、置き去りにされている子どもを見かけた人も傍観者にならないこと。お店の駐車場なら、店員さんか警備員の人に対処を頼むなど、「子どもはみんなで育てる」という意識を社会に醸成していきたいですね。

ながらスマホ編

  • スマホを見ながらベビーカーを押していて、赤信号に気付かず車道に飛び出し。(5歳・小学生のパパ)
  • 飲食店で両親がスマホに夢中になっているうちに、2歳くらいの子どもが自動ドアから走り出て行きました。前の道は交通量も多くヒヤッとしました。(3歳・4歳・小学生のママ)

<アドバイス>

ベビーカーを押して交差点に入る時、先頭にいるのが子どもということを忘れないで。仕事がある平日、子どもと一緒の限られた時間を、スマホではなく子ども
とのコミュニケーションの時間にしてもらえたらなと思います。

ほかにも…

  • 信号が赤になる直前の横断歩道を「急げ〜」と渡る親子。子どもだけのときも同じことをしてしまうのでは?(3歳・6歳のママ)
  • 子どもはキックバイク、親は自転車で公道を並走。公道でのキックバイクは危険なので禁止のはずです。(0歳・3歳・5歳のママ)

登下校の安全力をUPする、新1年生の安全心得

4月から小学校に一人で通う新1年生。一番心配な登下校を安全にするためのアイデアを紹介します。

  1. 入学前に、通学路の確認と登下校の練習をしておこう
  2. 横断歩道の渡り方や信号の待ち方、道の歩き方など、実際の通学路での交通ルールをきっちり確認しておこう
  3. 下校時、友達と別れてから家までが要注意。知らない人に話しかけられたときやトラブルが起きたときはどうするか、“おうちルール”をあらかじめ決めておこう
  4. 通学路にある「子ども110番」のお店や家をチェックしよう
  5. 通学路沿いのお店に子どもと買い物に行き、顔見知りになっておこう

「命を守る心=安全力」親子の絆と信頼が子どもを守ります

子どもの安全を守るためには、いろいろな方法がありますね。物理的にケガをしないための、具体的なルールを決めるのはもちろん大前提です。ところが、実際のところルールを教えるだけではうまくいかないことが多いように思います。

なぜなら、教えられたルールは、“自分が一番”の子どもが持つ強い好奇心にはなかなか勝てません。そのルールを守るための子どものモチベーションを高めることが、“命を守る心=安全力”を育てることへとつながっていきます。

そのためにはまず、子ども自身が“ママやパパに大切にされている”と認識すること。「自分は大切なものなんだ」と体験的に知ることが、大事な自分の命を守るための行動へのモチベーションを高めてくれるのです。親子の絆と信頼が、子どもの安全力を育み、危険から身を守る力になってくれると思います。

イラスト/高村あゆみ

※この記事は、2022年3月発行の「ぎゅって4月号首都圏版」に掲載した記事を再編集したものです