/ 2017.07.07

「保育園ではひらがなを教えないので幼稚園児と入学後に差が付いてしまう?」「お友達はひらがなが書けるのに、うちの子はまだまだ…」など、保育園ママの焦る声がちらほら。そこで、今回はひらがなの習得ステップについて、大宮先生に聞きました。

お話を聞いたのは

大宮明子さん

十文字学園女子大学人間生活学部 幼児教育学科 教授。お茶の水女子大学人間発達教育研究センター特任講師等を経て現職。専門は発達心理学、認知心理学。主な著書に『幼児期からの論理的思考の発達過程に関する研究』(風間書房)。

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シリーズ記事

保育園ママが知っておきたい、ひらがなと数の習得に関する3つの事実
知っておけば不安にならない、“かず”が身に付くステップと時期の目安

しりとりができると読みの準備OK

ひらがなが読めるようになるには、その前段階として、言葉の意味だけでなく言葉を構成する音への興味(音韻意識)が芽生えることが必要です。

この音韻意識とは、音節分解と音韻抽出のことで、「あひる」を「あ/ひ/る」と一音ずつ区切って、それぞれの一文字を取り出すこと。簡単に言えば、「しりとり」ができるようになった状態です。

しりとりが上手になると、そのうち絵本や看板の文字を見て「これ何?」が始まります。この「読みたい気持ち」が高まったタイミングで読み方を教えてあげると、ぐんぐん吸収していきます。

伝えたい気持ちが書く意欲につながる

ひらがななどの文字は“伝達のツール”。「パパにお手紙を書きたい」など、「文字で伝えたい」という意欲が高まってくると、自然と文字を覚えるようになります。

子どもにとって、ひらがなのお手本を見ながら書くことは、ハートや星形をまねして書くのと同じような作業です。ですから最初は書き順もめちゃくちゃですし、「は」と「ほ」など似た形のものや、「な」などの難しい形は間違えやすいでしょう。

左右反転した鏡文字になったり、「ひと」を「しと」などと音と文字が一致しないことも多く見られます。ただし、こうした間違いも自然に直るので、逐一訂正する必要はありません。

多少間違っていてもさらっと読んであげれば、「伝わった」という喜びでさらに書きたい意欲が増していきます。 

ひらがなが身に付く成長ステップの目安

  • step 1
    2歳台

    絵本の文章部分に役割があり、「ママはここを読んでいるんだ」と気付く。自分では読めなくてもママの目線で文章の終わりを察する。

  • step 2
    3歳台

    音韻意識が高まり、早い子では音節分解が少しずつできるようになる。読みやすい文字だけを拾って読む子もいる。

  • step 3
    4歳台

    音節分解がかなりできるようになり、読める文字がぐっと増えてくる。ひらがなをまねて書きたがる子もいる。

  • step 4
    5歳台

    ほとんどの子がひらがな71文字を読めるようになる。書くことに興味が出てくると自分の名前やお手紙を書きたがるが、まだ鏡文字や誤字も多い。

  • step 5
    入学後

    国語の授業でひらがなの書き方を学ぶ。9月には正しい書き方が定着している。

ひらがなの練習におすすめの親子遊び

しりとり

しりとりは音韻意識を高めるゲームです。

「き/つ/ね」の末尾の「ね」を拾って、「ね/ず/み」とつなげられるのは、音節分解と音韻抽出ができるようになっている証。

子どもが楽しめるようになったら、保育園の送り迎えやお風呂の時間に取り入れてみましょう。語彙も増えていきます。

お手紙交換

家族やお友達とのお手紙交換は、伝える意欲を高めたり、ひらがなを書くきっかけになります。できればお返事も書いてもらいましょう。

習得の時期は気にせずおおらかに見守って

文字や数は、子ども自身に学ぶ意欲がないときに教え込もうとすると学習嫌いになってしまうこともあるので、無理強いは避けましょう。

習得時期の早い遅いは将来の学力には関係ありません。他の子と比べず、意欲が出るまでおおらかに見守ってくださいね。

また、「ちゃんと読めない・書けない時期」「ちゃんと数えられない時期」はとても短いもの。絵本を拾い読みする姿や、つたないながらも一生懸命書いた文字、数え間違いしている様子などを写真やビデオで記録しておくのもおすすめです。とてもかわいらしい成長の記念になりますよ。

※この記事は、あんふぁんぷらす2015年2月号に掲載した記事を再編集したものです