元自衛隊のメンタル教官の下園壮太さんに、メンタル面を健やかに保つコツを聞くシリーズがスタートします。第1回目は「春の疲労対策」。特に職場復帰したてのママは、今が注意して過ごしたい時期です。

お話を聞いたのは

下園壮太さん(メンタル・レスキュー協会理事長)

1982年陸上自衛隊入隊。メンタルヘルス教官として、大事故や自殺問題、惨事対処など多くのカウンセリングを手がける。2015年定年退官し、現在はNPO法人メンタルレスキュー協会理事長。一般向け「感情ケアプログラム」の普及にも務めている。>公式ホームページ

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働くママこそ注意!うつの原因は◯◯

日々、仕事と子育てに忙しいママたち。特に4月は、職場復帰して“ワーママデビュー”の人も多い季節ですね。

「新年度のスタートダッシュをかけすぎると、数カ月後にガクッと心身の調子が下がってしまうことがあります。

ゴールデンウイーク明けに調子を崩すことを五月病ともいいますが、最近は脱しきれずに長引いて、結果的にうつ状態に陥ってしまう人も増えています。」と下園さん。

下園さんによると、

うつの原因は、ストレスではなくて、実は“疲労”。

うつとまではいかなくても、疲労がたまると、イライラしたり落ち込んだりする度合いも高くなっていきます。

「眠いときやお腹が空いたとき、子どもはぐずりがちですよね。それと同じように、疲労がたまっていてエネルギーが下がっていると、大人も感情が過剰に反応してしまうのです。」

たしかに、疲れているとうつっぽくなることは、多くの人がすでに体験していることですね。

疲労には“3段階”

「疲労」と「感情」の関係を見てみましょう。まず、疲労には大きく3段階あります。

ある出来事で、あなたがイライラを感じたとします。

疲労が「第1段階」にあるならば、イライラも1倍。ところが「第2段階」にあるときは、同じ出来事でもイライラは2倍。「第3段階」にいたっては3倍のイライラを感じてしまうのです。

さらに、イライラを感じること、それを我慢することは、それだけでエネルギーを消費します。

普通に我慢するだけで疲れるのに、2倍、3倍のイライラは、2倍、3倍に疲労を深めてしまう。すると、疲労→イライラ→さらに疲労→さらにイライラの、悪循環が始まってしまうわけです。

働くママは疲労をためやすい

また、小さな子どもがいて働くママの多くは、特に疲労をためやすい環境にあります。

「妊娠、出産という大きなライフイベントを経て職場復帰。保育園に預けるなどしても、家庭での作業量はそのまま残されているわけです。

そこに仕事がプラスされる。慢性的な睡眠不足もあって、本人が気づかない間に疲れをためている人がとても多いと感じます。」

五月病など、春の疲労はなぜ起こる?

さらにもう一つ、疲労のメカニズムを紹介します。それぞれの「ライフイベント」がどれくらい疲れるのか、心身に不調をきたすのかを調査したアメリカの研究があります。(下記の「ライフイベントのストレス」)

「ライフイベント」は、結婚、妊娠や出産といった大きな出来事ばかりではありません。年中行事、引っ越し、ご近所トラブル、PTAや地域の役員を引き受けた、という小さなことも当てはまるのだそう。

「疲労」とは“ポイント制”。大きな出来事がなくても、本人も気付かないうちにポイントが加算されて、いつのまにかビッグポイントになりがちなのです。

「ここ最近のクライアントを見ると、ひどい花粉症や天候不順、過剰なSNS、ネットサーフィンも、エネルギーダウンの要因になっています。」

慢性的な疲れに加えて、職場復帰、子どもの卒業入学、進学、職場環境の変化、また今年の寒暖差、花粉症なども疲労として加算されるとしたら…。

「私、かなりポイントを稼いじゃっているかも」と思い当たるママは多いかもしれません。詳しくは以下を参考にしてみてください。

「ライフイベントのストレス」はこちらから

メンタル疲労解消のポイント

とはいえ、子育ても仕事も“待った”はかけられません。上手に疲労を解消するコツも教えてもらいました。

「週末や休みの日の“休み方”にポイントがあります。平日忙しくしている人こそ、週末を有効利用したくなるもの。またストレスがたまっているので、スカッと気分転換したい、と考えてしまう人も多いでしょう。

でも、テーマパーク、旅行、飲み会など、いわゆるハシャギ系は、楽しくてもエネルギーを消耗します。」

できるだけリラックスできる、“静的な”過ごし方を考えて。

心身の疲労回復には「睡眠」が一番

なかでも、心身の疲労回復に一番効果があるのは「睡眠」です。

「夜泣きや授乳期が終わって“以前より寝られている”と話すお母さんでも、案外、睡眠不足になっているケースが見受けられます。

ご家族に育児を代わってもらうとかして、とにかく寝るようにしてください。ぐっすり寝て、エステでも美容院でも、自分の時間を持つ。女性の場合はそれでかなり回復します。」

休みを十分に取るのが難しい人は?

たまった家事や家族の予定もあり、休むことはなかなか難しいと感じるママも多いでしょう。

「いきなりは無理でも、ちょっとした散歩、いつもの公園で過ごす、コーヒーを味わうなど、休みの日の“静的な”過ごし方のレパートリーを、ちょっとずつ増やしておくといいですね。

それは長い目で見たら、ご自身のためであり、家族のためでもありますよ。」と下園さん。

さらに「特に35歳以上の方は要注意です。ヒトとして体力も落ちてくるので、若いときと同じようには考えないようにしましょう。」とも。

今年のゴールデンウイーク、もちろん思いっきり遊ぶもあり!

ただし、春の疲労に思い当たるママは、心身を休める時間を少しでもとれるように工夫して、メンタルのセルフケアも忘れずにしましょう。

この記事を書いたライター

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向山奈央子さん

フリーライター&エディター。仕事で走り回りすぎて、気付いたら一人娘は中学生に育っていた! ライフワークで「感情ケアプログラム」指導者コース修了。忙しいワーママを見ると、つい(聞かれてもいない)アドバイスをしてしまう。

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