「感覚の敏感期」に差し掛かる2歳を過ぎた頃、子どもは身の回りのものに次々に触れて、手触りや匂い、色や形などを確かめたがります。実はそのときが言葉を覚える絶好のタイミング!3ステップで遊びながら語彙を増やしていきましょう。

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2~3歳向けの言葉遊び

以前、「言語の敏感期」の3歳~6歳児向けに「なぞなぞ3択問題」をご紹介しました。

今回はもう少し小さい2歳~3歳向けの言葉遊びについて取り上げたいと思います。物の名称を覚え始めるこの時期の子どもの好奇心に応え、楽しく語彙力を伸ばすための3ステップをご紹介します。

楽しく語彙を増やす3ステップ

ステップ0 五感を使って感じる

はじめに3ステップと言っておきながら、「ステップ0」があるのは反則のように思われるかもしれません。

言葉を覚える段階は1~3の3つのステップに分けて考えることができるのですが、実はその前の段階としてとても重要なことがあります。

言葉を覚えることと切っても切り離せない「ステップ0」とは、

子どもが自分の五感を使って「感じる」ことです。

2歳を過ぎた子どもは「感覚の敏感期」(感覚的な刺激への感受性が強くなる時期)にさしかかっており、身の回りのものに次々に触れて、手触りや匂い、色や形などを確かめようとします。

自分の感覚器官を通して、物事を理解しようとしているのです。五感をフルに使って感じとったあと、その物の名称を伝えると、子どもはいま経験したことと名称とを一致できます。

それを繰り返すことで、物の「概念」というものを身に付けていきます。

言葉より先に実物を

例えば、「りんご」という物を理解しようとするとき、絵や写真で見ても、話を聞いてもその実体を理解することはできません。

りんごを知るには、実物を見て、感触を確かめて、匂いを嗅いで、食べてみることで初めて本質をとらえることができます。

物にしっかり触れて体験することが重要なのです。

このあとは実際に言葉に親しみ、覚えるまでの3ステップをご紹介していきます。

このステップを抑えておけば、普段の生活の中で「子どもの興味」をうまくとらえて言葉を吸収するのを後押しすることができます。

決して子どもに「教え込もう」とするのではなく、機会をうまくとらえて「子どもと楽しんで」ください。

ステップ1 名前の紹介「これはりんごだよ」

「モンテッソーリ原宿子供の家」では、時々調理実習を行なっています。2歳児クラスでは、フルーツポンチを作りました。調理を始める前に材料の紹介をします。

どんな匂いがするのかな?
どんな触り心地かな?

りんご、バナナ、キウイフルーツなど実物を子ども達と触って、たくさん感じてみます。

どんな触り心地?どんな匂いがする?
どんな形?どんな色?

色や形については、「赤」や「丸」など具体的な言葉にすることは重視せずに「こんな形なんだね」「こんな色だね」と、子どもが感覚を使えるような言葉がけをしています。

それから、ナイフで切って見て中身を見てみます。切ってみると、先ほどとはまた違った色や形になります。そうして感じた後、

これはりんごだよ、みんなで言ってみようね

り・ん・ご!

という具合に紹介しています。家庭でも、買い物に出かけたり、料理のときなど、食材を紹介できるタイミングがあると思います。

一緒に手触りを確かめたり、匂いを嗅いだりしてみながら、何度も繰り返して名前を言ってみます。体験と言葉とが繋がるように、じっくりと感じてみましょう。

対象物が食べ物ではなく、何かの道具ならば「こんなふうに使うものだよ」と見せてあげるといいですね。

声掛けはそのものに触れているときに

言葉の紹介は、子どもが何か興味をもって触っているときに行うのが良いと思います。

いっぺんにたくさんの言葉を紹介するよりは、毎日の生活の中で折に触れて少しずつ行いましょう。やりすぎは禁物です。

子どもが楽しんでいるうちに「今日はおしまい」にしておきましょう。

ステップ2 「りんごはどれだ?」遊び

ステップ2では子どもが知っているものをいくつか用意して、「りんごはどれ?」とクイズ形式で質問して、子どもに答えてもらいます。

子どもが正解を言ったときには「あら、ほんと。りんごだね。よくわかったね」と一緒に喜び、曖昧なようなら機会を伺ってまたステップ1に戻ってやり直します。

ステップ2についても、生活の中の場面に取り入れることができます。

買い物から帰ってきたら、買ったものをテーブルに出して、子どもに「りんごを持ってきて」と声をかけて一緒に冷蔵庫にしまうのもいいです。

洗濯物を干すときには「洗濯バサミを取ってきて」とお手伝いをお願いすることもできます。色々と名称を言って、子どもに持ってきてもらいましょう。

ステップ3 「これは何でしょう?」遊び

ステップ2までできる子どもは、ステップ3で名前そのものを答えてもらう遊びができます。

実物を見せて、「これなあーんだ?」と子どもに質問してみます。単純な遊びですが、言葉の敏感期の子どもは「りんごー!!」と楽しく答えてくれます。

「今日のおやつ、これはなあーんだ?」と楽しくやってみましょう。

子どもの答えが曖昧であっても急ぐ必要はありません。次の機会がきたらステップ1か2からやり直してください。

「セガンの3段階法」

この遊びは障害者治療の研究者であったフランス人医師、エドワード・セガンによって考案された「セガンの3段階法」に基づいたものです。

言葉を習得する段階を3ステップに分けて提供するもので、モンテッソーリ・メソッドにも取り入れられています。

セガンの3段階法

  1. 名称を紹介する「これは〇〇です」
  2. 名称を言って選択させる「〇〇はどれですか」
  3. 名称を問う「これは何?」

子どもと行う場合は、1の名称の紹介に十分に時間をかけます。23を行う際には子どもが理解しているかどうかを確認し、答えが曖昧なようならば一つ手前のステップに戻ってやり直します。

3については子どもの負担が比較的重いので、経験が進んだ段階で取り入れるのが良く、一度にたくさんは行わないほうが良いとされています。

いずれの場合も、初めのうち子どもが正しく答えられなかったとしても問題ありません。正解だったかどうかということよりも、プロセスを楽しむことの方が重要だからです。

あまり構えずに少しずつ言葉を紹介して、親子で一緒に遊んでみてください。気がつけば、子どもはいつの間にかたくさんの言葉を覚えているはずですよ。

また子どもの敏感期については、拙著「子供の才能を伸ばす最高の方法モンテッソーリ・メソッド」でも詳しく紹介しています。

次回は、1歳ごろの小さな子ども向けに、家庭で簡単にできるおもちゃの第3弾をご紹介します。

この記事を書いたライター

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堀田はるなさん

モンテッソーリ原宿子供の家・モンテッソーリすみれが丘子供の家教員、保育士。アパレル業界、eコマース、金融など様々な業種でのマーケティング業務を経験後、教育の道へ転身。日本モンテッソーリ協会承認モンテッソーリ教員免許取得。著作「子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド」。

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