/ 2017.09.25

2児のパパ目線、そして新聞記者の目線で子育てや世の中の気になることを読み解く「新聞記者パパのニュースな子育て」。今回のテーマは2020年度から変わる英語教育について。2日目は、英語通訳の第一人者の鈴木小百合さんにお話を聞きました。

執筆

高橋天地さん

平成7年、慶應義塾大文学部独文学専攻を卒業後、産経新聞社へ入社。水戸支局、整理部、多摩支局、運動部などを経て、SANKEI EXPRESSで9年間映画取材に従事。現在は文化部で生活班を担当。育児、ファッション、介護、医療、食事、マネーの取材に精力を注ぐ。

小学2年生で突然オーストラリアに~英語通訳の第一人者、鈴木小百合さんの体験

小学校低学年から英語に触れ、楽しく身に付けるのは正解だと思います。(次期学習指導要領のように)『小学校3年生から』とは言わず、本当は1年生から授業を始めてもいいのではないでしょうか。 この時期の子どもの言葉の吸収力はすごいですからね

こう語るのは、英語通訳の第一人者としてエンターテインメントの分野で活躍する鈴木小百合さんだ。

レオナルド・ディカプリオ、ジョニー・デップ、ジョージ・クルーニー・・・。主演映画のプロモーションで次々と来日するハリウッドスターの記者会見やインタビュー取材を円滑に進め、時に飛び出す突拍子もない発言やギャグを分かりやすい日本語へとクールにさばいていく姿は見事の一言。余人をもって代えがたいスター通訳の一人である。

通訳・翻訳家 鈴木小百合さん

父の仕事の都合で8歳から14歳までオーストラリアで過ごした。 両親はとりわけ準備もせず、英語を解さない鈴木さんを現地小学校の2年生のクラスに〝放り込んだ〟。

最初こそ鈴木さんは先生やクラスメートたちの話す内容を何も理解できなかったが、徐々に分かるようになり、1年後には、授業をはじめ、日常生活全般で支障なく意思疎通ができるようになった。

「最初は耳から英語を覚えました。音声をそのまま、あまり考えず、素直に真似して、状況から会話の内容を少しずつ理解していきました」。

「叶わん」が「Can I have one ?」に変わった!

例えば、2年生のクラスの「おやつの時間」での出来事。鈴木さんがポテトチップやクッキーを持参すると、クラスメートたちは「叶わん」「叶わん」「叶わん」と話しかけてくる。全く意味が分からない。「叶わんて何?」。

鈴木さんは 帰宅後、母親に尋ねると、「状況から察するに、『1つくれ』の意味ではないの?。つまり、『きゃん・あい・はぶ・わん(Can I have one ?)』と話かけてきたんだけれど、友達の話し方が速過ぎるから『叶わん』に聞こえるのよ」と教えてくれた。

後日、同様の場面で耳を澄まし「叶わん」の聞き取りに挑んだところ、「『 きゃないぶ(〝CanIve〟)』と、haveの発音が飲み込まれて入っているみたいにも思えたんですよね」と鈴木さん。リスニング力の上達を感じたそうだ。

早期英語教育に必要な3つの心構え

鈴木さんのような英語体験を日本の小学校3年生の授業で再現することは難しいだろう。ただ、地元小学校で土曜講師を務め、すでに低学年の児童に英語劇を体験させた鈴木さんは、指導者に必要だと感じた心構えを3つ挙げた。

  1. 児童に英語を勉強するという意識を持たせず、楽しく体験してもらう
  2. 児童の五感を刺激する
  3. 児童が自分から興味を持つように努め、気長に待つ

「児童たちが英語を嫌いになったら元も子もない。セリフの意味が分からなくても、覚えたセリフのやり取りを通じて、英語って面白そうだという気持ちを育んでもらえたらいい。土曜講師ではトルストイの『おおきなかぶ』を英語劇にしました。遊びの要素をいっぱい入れてお芝居を作りました」

親が家庭でできることは?

自宅でも何か英語に触れさせたいと考える親も多いだろう。鈴木さんは意外にも「自分の小学校時代と似た環境は作れる」といい、DVDでの映画鑑賞を薦めた。

「私の4歳の孫は、英語のセリフが分からなくても、『アナと雪の女王』のアニメ映画を何度も繰り返し鑑賞しました。すると、作中の歌で印象的なフレーズを少しずつ口にするようになりました。例えば 『レリゴー(Let it go)』などの類です。お母さんも一緒に遊び感覚で付き合い、歌ってあげてほしいですね」