/ 2017.09.25

2児のパパ目線、そして新聞記者の目線で子育てや世の中の気になることを読み解く「新聞記者パパのニュースな子育て」。今回のテーマは2020年度から変わる英語教育について、3人の専門家に取材しました。初回は、幼児英語教室を経営する古富武鹿さん。

執筆

高橋天地さん

平成7年、慶應義塾大文学部独文学専攻を卒業後、産経新聞社へ入社。水戸支局、整理部、多摩支局、運動部などを経て、SANKEI EXPRESSで9年間映画取材に従事。現在は文化部で生活班を担当。育児、ファッション、介護、医療、食事、マネーの取材に精力を注ぐ。

長女(4)の初めての習い事は“英語”

「Rock, Scissors, Paper, 1, 2, 3!」。勝敗が決すると勝った子から好きなペンを選ぶ。「I like red!」「I like blue!」。次は、脚だけで背の高さほどもある大きなホワイトボードに、腕をめいっぱい伸ばし、好きなように線を描いていく。何を描いてもいいし、面白く描けてうれしくなったら広いホールをかけまわってもいい。参観している次女がハイハイで見にいくのも自由。みんな笑顔だ。

昨年末、乳児から幼児へと成長した長女(4)の初めての習い事をあれこれと検討し、2週間に1回実施されるこのクラスに参加することにした。プログラムの名前は「英語で遊ぼう!」だ。

うまくできそうだと確信するまで新しいことになかなか挑戦したがらない長女。このクラスへの参加を通して、長女が怖がらず面白がって進んでいけるメンタリティーになってほしかった。また、小さいうちから英語に親しみ、楽しみながら触れることで、将来、やりたいこと、なりたいものの選択肢が広く世界中に開かれているといいなとも思った。

小学校3年生からの「外国語活動」の授業スタート。早期の英語教育に必要なのは?

昨今報じられている通り、小中学校の学習内容や到達目標などを定める「学習指導要領」が10年ぶりに改訂され、2020年度から小学校で学ぶ英語の内容が様変わりすることになった。

目玉は小学校3年生からの「外国語活動」の授業スタートだ。「聞く」「話す」を中心に英語に親しみ、外国文化への理解を育むという。5年生からは英語の教科書を使って「読む」「書く」も身に付ける学習教科となり、教師は児童の成績を付けることになった。

小6の約3割が『英語嫌い』に?早期英語教育に必要な心構えは?

それを見込んでか、最近は、郵便ポストに投げ込まれる早期教育の案内や英語の教材、教室のチラシがますます多くなったように感じる。一方で、文科省の政策研究機関「国立教育政策研究所」(東京都千代田区)が発表した「小6の約3割が『英語嫌い』に」のようなニュースも自然と目にとまるようになった。

早期教育の功罪については諸説あり、ネットにも読みきれないほどの情報が溢れているが、実際のところ、指導者や保護者にはどんな心構えが必要なのだろう。

幼少期からの英語教育に試行錯誤を重ねてきた指導者、様々な取材で出会った英語の使い手として私淑する専門家など3人に取材したところ、3人が3人、異口同音に「最初が肝心。まず英語に親しみ、楽しんでもらうことが最優先だ」との考えを示し、英語嫌いを増やさないようにするためには、細心の配慮が求められると注意を促した。

英語に対して楽しいイメージを ~幼児英語教室の経営者 古富武鹿さんの見解

まずは長女のクラスを担当する古富武鹿(ことみ・むじか)さん(39)だ。

L.I.B(Life Is Beautiful)代表 古富武鹿さん

映画好きの父の影響を受け海外へ

ごく普通の日本の家庭で育ったが、物心ついた頃から映画好きの父親の隣で洋画を字幕版で繰り返し鑑賞、セリフを楽しげに真似てみせる父をみてまだ見ぬ海外へのあこがれを募らせていた。

中学2年生の時に参加した米ウィスコンシン州でのサマースクールをきっかけに、漠然とした憧れは自分の体験を通じた明確な志向へと変化した。一気に意識が海外に傾き、英語、さらには中国語にも興味を持ち、日本の大学卒業後、台湾へ留学、現地大学の卒業証書をもらえるまでにまでに究めた。

その後のキャリアも、中国のクライアントへの企画営業、子どもたちへの語学ボランティアから保育士へと、海外と幼児教育という軸からぶれることなく積み重ねてきた。現在は、英語とダンスを楽しむことを取り入れた幼児教育クラスの経営に力を注いでいる。

 小学校3年生での英語授業スタートについては、方向性としては賛成の立場だ。以下のように強調する。

〝脳の刈り込み〟に抗うように、小さいうちから目から耳から口からと、無理やり多言語を詰め込む必要はないと思う。

だが子どもが幼少のうちに多言語が頭に自然に入ってくる環境はよい。外国語に対する苦手意識が生まれる前、かつ、子どもが日本語と外国語の区別を始める前に、英語に対して楽しいイメージを膨らませてあげることができるのが最大のメリットだ

欲を言うなら、「(例えば家族の誰かがネイティヴスピーカーであるなど)英語が日常生活の中に自然に存在する、心地よい環境を作ることがベスト」とも指摘。

親自身が英語を楽しむ姿を子どもに見せる

そうは言っても、なかなか実現が難しいであろう多くの日本の家庭では、「成長に沿って、子ども自身が自発的に、好んで英語を吸収する環境作りが大事。親自身が英語を楽しむ姿を子どもに見せることも、英語に触れる入口としては有利に働くと思う」と言葉を継いだ。