乳歯が抜けて大人の歯が生えてくることは、ママにとっても子ども自身にとっても一大イベント!歯は自然に生えかわっていくものですが、ちょっとしたポイントを見逃すと、永久歯に影響が出てしまうことも。歯科医師の石川武先生にポイントをお聞きしました。

お話を聞いたのは

石川武先生

原宿石川歯科医院院長。「口腔内全体の健康維持」を治療のコンセプトに、歯医者に行くのが楽しみになる!そんな歯科医院を創りたいと1990年に開業。日本歯周病学会、日本口腔インプラント学会、日本顎咬合学会、北山臨床研究会、美容口腔外科研究会所属。2012年鶴見大学歯学部非常勤講師

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乳歯と永久歯の違いは?

乳歯は、永久歯に比べ全体的に小さく、表面のエナメル質や象牙質の厚さも永久歯の半分くらいしかありません。また、硬さも永久歯に比てやわらかく、特にエナメル質の下にある第2層の象牙質の部分が柔らかいのが特徴です。

乳歯と永久歯のちがい

  乳歯 永久歯
20本 28本(親知らずを除く)
エナメル質・象牙質 薄い 厚い
青白い 黄色味がかっている

「乳歯は、成長の過程で一定期間が過ぎると永久歯にバトンタッチしていく歯です。イメージが難しいかもしれませんが、歯には見えている部分の1.5倍以上の長さの根があります。

生えかわりの時期が近づくにつれ、その長い根の部分が溶けていきます。抜けた歯を見ても根がついていないのは、吸収されてなくなってしまっているから。そして支えを失った乳歯はその役割を終え永久歯へと生えかわります。」

永久歯は黄色味がかって見える

「生えかわったばかりの永久歯を見て、黄ばんでいると心配するママがいます。これは永久歯の象牙質は有機質が多いためで、乳歯に比べて黄色味がかって見えるのです。」

乳歯が抜けるのはいつ?永久歯が生えるのは?

生えかわりの始まりは、年長さんの頃が目安です。5歳を過ぎるとまず下の前歯がグラグラするようになり、やがて抜けると、下から永久歯が生えてきます。

そして最後の乳歯が抜けるのが小学6年生頃。つまり小学生時代の6年間ほどをかけて20本の乳歯はすべて抜け、永久歯に生えかわっていきます。

うちの子、抜けるの遅くない?

「体の成長と同様に、歯の生えかわりにも個人差があります。『何歳までに』ということは、神経質にならなくても大丈夫です。お友だちは、もう生えかわりが始まったのに、と心配になることもあるかもしれませんが、ゆっくりな子もいます。中学生でも生えかわりが終わっていないこともあります。

ただ、たとえば右の犬歯は生えかわったのに、左の犬歯はグラグラもしていない、あるいは抜けた後に永久歯がなかなか生えてこないなど、左右のバランスがあまりに違う場合には歯科医に相談してください。」

永久歯が生えてくる順番は?

通常、歯は抜けた順番に生えかわっていきます。5~6歳頃にまず下あごの前歯が生えかわり、ほぼ同時期に6歳臼歯(第一大臼歯)が、上下左右に顔を出します。

その後は次第に生えかわっていき、6歳臼歯の奥にある12歳臼歯(第二大臼歯)が生えると、28本がそろって永久歯列となります。

あごが小さいと矯正が必要になることも

「あごの発育が十分でなく、6歳臼歯や12歳臼歯の生えるスペースが足りないと、手前の歯に引っかかってしまうなど、生えにくくなってしまうことがあります。

この場合、早期に矯正力を加えて歯を動かし、引っかかりを取ってあげることが必要です。

下の右側だけ生えそろわないなどアンバランスになると、歯並びや噛み合わせに影響を与えることがあります。奥歯で見えにくい歯ですので、定期的に歯科を受診するようにしましょう。」

生えかわりの時期と順序の目安

気になる子どもの歯並びと噛み合わせ

できる限り、きれいな歯並びで永久歯をそろえてあげたいと願うのが親心です。

歯の生えかわりの時期は、歯科医院で定期的に診てもらい、うまく生えかわりを誘導してあげると軽度な歯のガタガタであれば、悪くなるのを防ぐことができるケースがあります。

もちろん、矯正をしないときれいに並ばない場合もありますので、判断を仰ぎましょう。

生えかわりの時期は、大きな永久歯に合わせてあごも成長していきます。上下左右の噛み合わせのズレも広がって、目立つようになることもあります。

受け口(反対咬合)、上の前歯が突き出た上顎前突、奥歯の噛み合わせが左右で異なる交叉咬合、前歯の間が大きく開いた開咬は、注意したい噛み合わせです。早めに専門医に相談しましょう。

歯が抜けるのがこわい!どう説明する?

子どもの歯から大人の歯に生えかわることは、ママにとっては子どもの成長が実感できるうれしいとき。でも、子どもにとっては自分の体の一部が取れて新しいものが生えてくる不思議な感覚を抱くときかもしれません。

歯が抜けるときにはグラグラして違和感を伴いますし、出血もします。子どもが不安にならないように、成長を一緒に祝う気持ちを大切にしたいものです。

「ママが無理矢理抜こうと力を込めてしまうと痛がって、歯を触るのも嫌になってしまうこともあります。患者さんのなかでも、ほとんど抜けかかっている場合でも抜きたくないと、かたくなになるお子さんもいらっしゃいます。

『歯が抜けるのは、お兄さん、お姉さんになることなんだよ。すごいね』と、子どもと共に成長を喜ぶ幸せなコミュニケーションの時間になってほしいと願っています。」

抜けた歯を入れる「乳歯ケース」

わが子の成長の証である乳歯を保管する乳歯ケース。歯医者で抜けるとこのようなケースに入れて渡してくれるところもあります。

グラグラする歯は抜けるまで放っておいて大丈夫?

「生えかわりがうまくいかないと、あごの中で準備を整えている永久歯が乳歯の後ろから生えてきてしまうこともあります。この場合には、乳歯を抜いて、永久歯が正しい位置に動けるように誘導します。

また子どもがグラグラする歯を痛がるときには、固い食べ物は避け、反対側の歯で噛んでみようね、とすすめてあげてください。

あまりに痛がって生活に支障が出るような場合や歯茎が腫れたなど心配な場合は、受診してください。」

生えかわり時期の歯磨き

グラグラする歯は痛みを伴うこともあり、食事をとるのを嫌がったり、歯磨きをしようとすると逃げ回ったりして、ママを困らせてしまう子どもも多いかもしれません。

「仕上げ磨きのときに、ママが歯ブラシを持っていない方の指でグラグラしている歯を押さえて、歯が揺れないようにして磨くといいでしょう。

たとえば、前から押さえて裏を磨き、次に後ろから押さえて表を磨くなど、痛みを感じないで歯磨きができるように工夫してみてください。また、6才臼歯は生えかわるのではなく、乳歯の奥歯のさらに奥に生えてくる大人の歯です。

生えてきていることに気がつかなかいこともあるので、下の前歯が生えかわり時期を迎えたら、仕上げ磨きのときに必ず確認して、生えてきたら丁寧に歯みがきするようにしてください。」

生えたての永久歯は虫歯になりやすい

特に虫歯になりやすいのは6歳臼歯です。乳歯に比べ、永久歯は噛み合わせの面のくぼみがボコボコとしていて、複雑で深くなっています。そのため、このくぼみに歯垢がたまるなどして虫歯が進行してしまうのです。

特に生えたばかりの永久歯は、まだまだ未成熟。歯質が弱いという特徴があり、やわらかく、虫歯が進行しやすいので仕上げ磨きまで丁寧にしてあげることが大切です。

どうせ生えかわるから、で放置はNG

乳歯が生えかわりの時期を前に虫歯になった場合、どうせ抜けてしまうのだし…。と放っておくと永久歯にも影響を与えてしまうこともあるので、虫歯の治療はしっかりとしておきましょう。

「永久歯は乳歯の生えているかたわらで、出番を待っているのです。その待ち時間を過ごす周囲の環境が、虫歯などのために悪くなると、歯質が弱くなってしまったり、悪い環境から逃れようと正しい位置からずれてしまう可能性があります。また、生えかわりがうまくいかない原因にもなります。

口の中をよい環境に保つことが健全なよい歯を育てることにつながります。」

抜けない、生えてこない原因は

先天性欠如

6歳から12歳頃にかけて永久歯へと生え変わっていきますが、ときに乳歯がいつまでも抜けないことがあります。この場合、本来乳歯の後に準備されている永久歯がない「先天性欠如」の可能性があります。

「先天性欠如の場合、健全な状態が保たれている乳歯は大人になっても残っている場合が多くみられます。大人になっても残っていれば、その後に乳歯が抜けてしまってもブリッジ、インプラント、矯正などで対応することができます。

ですから虫歯などにはくれぐれも注意が必要です。先天性欠如が出やすい歯の部位もあり、生えかわりのときは定期的な検診が大切です。」

過剰歯(余分な歯)

正しい永久歯の本数よりも多く、余分な歯です。あごのなかに埋まり、出てこない歯もあります。上の前歯の部位にあることが多いので、前歯の生えかわりのときに気づくことが多いそうです。

「前歯が生えてきた位置や方向がおかしいなと思って、レントゲンを撮って初めてわかるというケースが多いです。

本来の永久歯が、生えてくるのを邪魔したり、歯並びに影響を与えている場合は過剰歯を摘出します。それでも正しい位置に永久歯が収まらない場合は、矯正などのお手伝いが必要になることがあります。」

歯をぶつけてしまったとき

乳歯をぶつけると、あとで生えてくる永久歯に影響を与えることがあります。永久歯が生えてこない、あるいはずれて生えてくるなどの危険があります。

ぶつけた歯は、多かれ少なかれダメージを受け、神経が死んでしまうことがあります。神経の生死は、ぶつけた直後にはわからず、1カ月、3カ月、半年と月日をかけて診断するので、放置せず経過を見ていくことが重要です。

歯茎から出血していたら、痛がっていなくても、一度は歯科を受診してください。

歯は一生もの!

生えかわりの時期は、これまで以上に口内環境を整えておくことが大切です。生えかわりがはじまる年長さんから1年生になる頃は、3~4カ月に1度は歯科健診にいくといいでしょう。

「生えかわりに合わせて、永久歯が正しい位置に生えてくるためのお手伝いができます。この歯の生えかわりは気をつけた方がいいから、早めに乳歯を抜いておいた方がいいなどの診断ができます。

そのためにも、乳歯が生えたらかかりつけの歯科医をみつけておいてください。虫歯になりやすさや遺伝的に持っている歯並びの素因など、定期的に診てもらっているかかりつけの歯科医なら、その子の口のなかの状態を長期に観察しているので、適切なアドバイスができます。」

子どもが歯磨きを嫌がって、ママもストレスになるときもあるかもしれませんが、歯は一生もの。口の中の状態をこまめにチェックしてあげられると良いですね。

この記事を書いたライター

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毛利マスミさん

フリーライター&エディター。娘が幼児の頃「勉強するなら今しかない」と思い立ち、社会人学生となって臨床心理学を修める。さらに赤ちゃん好きが高じて、保育士免許も取得。中学生となった娘に「孫育てが楽しみ」と言っては、煙たがられています。

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